PFI法には複数の目的がありますが、どの目的も現在の社会経済環境下では、非常に重要な意味をもちます。とりわけ、無駄な公共施設を作らせないことが決定的に重要です。
PFI法は、その正式名称を「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」というのですが、その名の通り、公共施設等の整備のための資金調達について、民間部門が参画できるようにする仕組みを定めたものです。
PFIは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(Private Finance Initiative)の略で、プライベート・ファイナンスは民間部門による資金調達、イニシアティブは事業遂行全体における民間事業者の主導的役割を意味しています。そして、PFIの本質は、民間事業者の主導的役割にあって、民間部門による資金調達は、その役割の一つの要素になっているのです。
民間の創意工夫によって、公共施設等の整備を効率化するわけですか。
PFI法の第一の目的は、必要な公共施設等を安く作ることであって、このことは、PFI事業、即ち、PFI法に基づく公共施設等の整備事業においては、必ずVFM(Value for Money)があると表現されます。VFMとは、同一のサービスを創造する事業について、事業期間全体における公的財政負担の現在価値を比較したとき、PSC(Public Sector Comparator)、即ち、公共部門で行うときの見込額から、LCC(Life Cycle Cost)、即ち、PFI事業にしたときの見込額を控除した差分であって、通常は、VFMをPSCで除した比率が指標として使われています。
それにしても、VFMが発生する根拠として、公共部門においては、民間部門に比較して、仕事の仕方が非効率だというのであれば、より本質的な問題として、公共施設等の整備事業に限らず、公共部門の全ての事業について、抜本的に改革されるべきことになりますが、はたして、そうなのか。いずれにしても、少なくとも、公共施設等の整備事業においては、PFI法が制定されているのですから、公共部門の非効率は否定し得ない事実なのです。
効率性というとき、費用だけではなく、提供されるサービスの質も問題ではありませんか。
公共施設等の整備の目的は、利用者が真に必要とするサービスを提供することですが、公共部門の主導のもとでは、設計や運営において、利用者の視点が欠落しやすいのは避け難いことだと思われます。そこで、PFI法の第二の目的は、民間事業者の主導に任せて、利用者の視点で、公共施設等の利便性と有用性の向上を図ることになるのです。つまり、PFI法の目的は、より安く、より良い公共施設等を整備することなのです。
しかし、絶対的な必要性の乏しい公共施設等について、相対的に、より安く、より良く作っても、本質的に無駄であることに変わりないのではありませんか。
PFI法は、政府に対して、PFI事業の推進に関する基本方針の策定を求めていますが、この6月16日に改定された基本方針の前文では、国と地方の財政の困難な現状、および人口減少という現実を前提にして、公共施設等の整備等について、「経済成長に結びつく投資効果の高い公共施設等や、国民の生活や都市や地域の活力を維持し、環境や防災等の課題に的確に対応した公共施設等など、その必要性を厳しく精査した上で進める必要がある」とされています。
ここには、非常に明瞭に、PFI法の第三の目的が示されています。それは、即ち、必要性の精査によって、整備されるべき公共施設等を厳選することであり、より簡単にいえば、不要な公共施設等を作らないことです。公共部門においては、一定の政治的配慮の働くことは避け得ずに、公共施設等の整備は、それ自体が自己目的化して、不要なものが作られる結果になりやすいと考えられますから、PFI法の機能によって、それを防止することは極めて重要なのです。
実は、PFI法は意外に古くて、1999年7月に成立し、同年9月に施行されていますが、制定当初は、この不要な公共施設等を作らないという目的は、必ずしも強く意識されていなかったと思われます。しかし、社会環境が大きく変化した現在、これはPFI法の最も重要な目的になったのです。
公共部門から計画が公表され、それに民間部門が応じることで、PFI事業がなされても、不要な公共施設等の整備は阻止できないのではありませんか。
PFI法の根底にあるのは、公共施設等の整備において、民間事業者の創意工夫を最大限に活かすことですから、民間事業者の創意工夫は、公共部門による企画が先にあって、その実現だけに使われるのでは全く不十分であって、企画自体の創出にこそ、活かされるべきです。この点に関して、現在のPFI事業のあり方には、多くの改善点が残されているのだと思われます。
PFI法の第四の目的は、公共部門の資金調達でしょうか。
PFI事業の基本構造では、民間事業者は、自分で資金調達をして、公共施設等の建設を行い、事業期間中は、完成後も維持管理業務を行います。所有権は、事業期間中に公共部門に移転しますが、多くの場合は、完成直後に移転し、事業期間が終了すれば、維持管理業務も、公共部門に移転します。そして、事業期間中、公共部門が民間事業者にサービス対価を支払うことで、民間事業者は資金回収を行うわけです。
つまり、経済的な効果としては、公共部門は、民間事業者から資金を調達して、公共施設等を建設し、事業期間中に、分割して資金を弁済するのと同じになるのであって、PFI法の第四の目的は、公共部門の資金調達と財政支出の平準化になるわけです。さて、ここで問題となるのは、維持管理業務の期間を長くして、事業期間を長くすればするほど、毎年の財政支出が小さくなることです。これは決してPFI法の目的とはいえませんが、その事実上の効果としては、財政負担の繰り延べが可能になるということです。
実際、かつて、ハコモノお掃除PFIという悪口がいわれたのは、清掃業務のような簡単な維持管理業務を付加することで、財政負担を繰り延べるために、PFI事業が利用されたからです。なお、ハコモノという表現には、明らかに、必ずしも必要ではない公共施設という皮肉が込められています。
財政負担の平準化とはいっても、要は、財政支出の先送りはではないでしょうか。
確かに、平準化を悪くいえば、財政支出の先送りですが、PFI事業であるからには、必ず支出削減効果があるのですから、節度と規律をもって運営されるのであれば、また、事業の必要性に全く疑義がないのならば、その意義を正面から認めてもいいでしょう。
今年の事例として、沼津市は、77ヵ所の公共施設の照明を LED化する事業について、PFI事業を採用していて、契約金額は44億7500万円で、契約期間は13年となっていますが、その目的は、明らかに、財政支出の平準化だと思われます。しかし、13年という期間で、VFMが11.7%あるのですから、特に、問題があるとも思えませんし、資産価値があれば、LEDのような動産でも、PFI事業の対象にし得るというのは優れた着眼点です。
なお、施設の照明のLED化は、どの地方自治体にとっても、喫緊の課題であるはずですが、興味深いことに、本件のようにPFI事業として行うのは、静岡県内初なのです。日本初は不明ですが、2年ほど前から、事例があって、特に石川県では、県自身を始め、金沢市、白山市、中能登町などで行われています。もしかすると、石川県内のものが日本初なのかもしれません。
PFI法の第五の目的は、地域経済振興ですか。
政府は、2023年に、「PFI事業実施プロセスに関するガイドライン」を改正して、地域経済振興を目的としたローカルPFIを導入しています。沼津市と石川県内の事例は、いずれもローカルPFIであって、事業者を地元の企業グループで構成し、資金調達先を地元の金融機関にすることで、地域経済のなかで資金循環するようになっているのです。
更には、政府の新しい基本方針には、行政の効率化という視点が入っています。ここにPFI法の第六の目的ができて、沼津市の事例では、多数の異なる組織に分属する施設について、一斉にLED化を実施することは、組織横断的な施策の展開として、行政の効率化になっているわけです。
・沼津市が公共施設の照明のLED化を敢えてPFI事業で行うわけ(2026.8.20掲載)
ローカルPFI事業の取り組み事例として沼津市における公共施設の照明のLED化について、解説しています。
・財政逼迫と人口減少のなかで優良な公共施設だけを残すために(2026.8.6掲載)
公共施設等の整備を効率的になすためには、PFI事業が重要になることを解説しています。
・公共施設の維持運営に民間の創意工夫が不可欠なわけ(2026.7.30掲載)
PFIがそもそも何か、基礎的な部分について解説しています。
(文責:加藤)
次回更新は、10月8日(木)になります。
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森本紀行(もりもとのりゆき)
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
東京大学文学部哲学科卒業。ファンドマネジャーとして三井生命(現大樹生命)の年金資産運用業務を経験したのち、1990年1月ワイアット(現ウィリス・タワーズワトソン)に入社。日本初の事業として、企業年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。年金資産運用の自由化の中で、新しい投資のアイディアを次々に導入して、業容を拡大する。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資のタレントを発掘して運用委託するという、全く新しいタイプの資産運用事業を始める。
