PFI事業とは、「公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるもの」のことです。
政府や地方公共団体は、様々な公共の施設を設置して所有していますが、その目的が施設の運営を通じた公共サービスの提供ならば、公共部門が施設を所有している必要はなく、民間部門の所有する施設を公共部門が賃借して、運営してもいいはずです。しかし、実際には、そうした例がないのは、民間部門の所有する施設は、民間の事業として、民間部門によって運営されるべきもので、それを公共部門の事業運営に供すれば、おそらくは、民間部門への過剰な、もしくは不必要な介入になるからでしょう。
逆に、公共部門が設置し、所有管理している施設について、運営等を民間部門に委ねることは、運営等の効率性を高める場合に限るとの条件のもとで、実際に行われています。ただし、民間の事業として行い得るためには、公共サービスの提供の対価として、利用者から利用料金を徴収できなくてはならないので、対象事業は利用料金を発生させ得るものに限られています。
PFIですか。
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」は、その第十六条において、「公共施設等の管理者等は、選定事業者に公共施設等運営権を設定することができる」と定めています。用語の定義を列挙している第二条のなかで、その第七項は、「「公共施設等運営権」とは、公共施設等運営事業を実施する権利をいう」とし、更に、第六項は、公共施設等運営事業を定義して、「特定事業であって、第十六条の規定による設定を受けて、公共施設等の管理者等が所有権を有する公共施設等について、運営等を行い、利用料金を自らの収入として収受するものをいう」としています。
そして、特定事業については、第二条第二項において、「「特定事業」とは、公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいう」とされているわけです。
さて、この法律ですが、名称が長いので、普通は、PFI法と略称されています。PFIとは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(Private Finance Initiative)の略であって、その要諦は、プライベート・ファイナンス、即ち、民間部門での資金調達にあるのですが、敢えて、イニシアティブ、即ち、事業構想と構想推進における主導権という言葉が付されているのは、事業主体は公共部門であっても、民間事業者に対して、「資金、経営能力及び技術的能力」を用いた主導性、あるいは創意工夫のある独創性を認める主旨だと考えられます。
既に、民間事業者による公共施設等運営権の取得は普及しているのでしょうか。
公共施設等運営権という用語は長いので、通常は、元の英語名であるコンセッション(concession)が使われています。そして、コンセッションによる公共施設の民間事業者による運営管理は、もはや全く普通のことで、既に、様々な領域において、非常に幅広く実施されています。例えば、北海道にある主要な7つの空港の全ての運営等は、北海道エアポート株式会社という民間事業者が行っているわけです。
なお、PFI法の第二十四条は、コンセッションの法的な性質を定めていて、「公共施設等運営権は、物権とみなし、この法律に別段の定めがある場合を除き、不動産に関する規定を準用する」としています。
また、「投資信託及び投資法人に関する法律」の第二条第一項は、投資対象について、「主として有価証券、不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの」としていますが、その政令の第三条に列挙されている投資対象には、コンセッションも含まれています。もっとも、多くの技術的障害があって、投資法人によるコンセッションの取得は少しも進展してはいないのですが。
それにしても、コンセッションを使うと、運営等が「効率的かつ効果的に実施」されるという根拠は何でしょうか。
PFI法では、コンセッションの対象に限らず、全ての特定事業について、「民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるもの」という定義が適用されるので、実際に特定事業として選定されるためには、この定義にいう「効率的かつ効果的」という要件の充足が問題となります。そして、ここで極めて重要な役割を演じるのがVFM(Value for Money)という概念であって、その意味については、政府の策定した「VFM(Value for Money)に関するガイドライン」に詳細に記述されています。
なお、PFI法の第四条では、内閣総理大臣は基本方針を定めたうえで、閣議決定を経ることになっていて、地方公共団体は、政府の基本方針を勘案しつつ、特定事業の実施を行うとされています。そして、政府は、この6月16日に、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針」の変更を閣議決定し、それに合わせて、「VFM(Value for Money)に関するガイドライン」などの諸ガイドラインを改正して、公表したのです。
政府のガイドラインによれば、VFMとは、「一般に、「支払に対して最も価値の高いサービスを供給する」という考え方である。同一の目的を有する2つの事業を比較する場合、支払に対して価値の高いサービスを供給する方を他に対し「VFMがある」といい、残りの一方を他に対し「VFMがない」という」とのことです。故に、PFI法上の特定事業は、公共部門が直接に実施する事業に比較して、「VFMがある」ときにのみ、選定されるわけです。
VFMは、数値として、算出されるのでしょうか。
政府のガイドラインでは、「公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値を「PSC」(Public Sector Comparator)といい、PFI事業として実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値を「PFI事業のLCC」(LCC:Life Cycle Cost)ということとする」と定義されています。そして、LCCがPSCよりも小さいとき、その差分としてのVFMがあるといわれるわけです。
ただし、この比較は、同一の公共サービス水準を前提にしているので、仮に、LCCがPSCと同じでも、公共サービス水準の向上があれば、PFI事業にVFMがあることになります。こうして、実際のVFMの算定は、様々な条件を考慮しながら、慎重になされるわけです。なお、一般に、VFMは、VFMの実数値ではなく、VFMをPSCで除した比率として、表現されています。
公共施設の建設においては、PFI事業には、VFMに加えて、財政負担の平準化という利点もあるわけですね。
PFI法の正式名称に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等」とあるように、PFI事業によって公共施設の建設等を行うことは、コンセッションの設定と並んで、PFI法の基本目的になっています。これには多種多様な形態があり得るわけですが、基本形では、民間事業者は、資金を調達して施設を建設し、施設の完成後に、その運営、および維持管理を行い、公共部門は、こうして提供される一連のサービスに対価を支払うわけです。
ここで重要なことは、第一に、施設の設計段階において、民間事業者の創意工夫がなされていること、第二に、建設から、運営および維持管理まで、全ての段階において、民間事業者ならではの効率性が働いていること、そして、第三に、公共部門は、初期投資を行うことなく、サービス対価を支払うことで、財政負担を平準化していることです。
施設は民間事業者が所有するのでしょうか。
ここで、冒頭の論点に戻るわけです。公共施設は公共部門によって所有されなくてはならないので、PFI事業によって建設された施設の所有権は、どこかの時点で、民間事業者から公共部門に移転されます。移転時期については、主流のBTO(Build、Transfer、Operate)方式では、建設・移転・運営の順になるので、施設完成直後に所有権が移転され、BOT(Build、Operate、Transfer)方式では、運営契約の終了後に、所有権が移転されるわけです。
・公共ファイナンスの視座(2014.6.26掲載)
公共施設運営の効率性に着目し、民営化の課題とPFIの違いについて解説しています。
・なぜ日本には真のインフラストラクチャー投資がないのか(2025.9.4掲載)
制度と実態の乖離から、真のインフラ投資の本質と限界をについて解説しています。
・アセットライトの徹底で経済が成長しインフラ投資が面白くなる(2025.10.9掲載)
アセットライトによる経営資源の集中の重要性とインフラファンドの課題について解説しています。
(文責:翁)
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森本紀行(もりもとのりゆき)
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
東京大学文学部哲学科卒業。ファンドマネジャーとして三井生命(現大樹生命)の年金資産運用業務を経験したのち、1990年1月ワイアット(現ウィリス・タワーズワトソン)に入社。日本初の事業として、企業年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。年金資産運用の自由化の中で、新しい投資のアイディアを次々に導入して、業容を拡大する。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資のタレントを発掘して運用委託するという、全く新しいタイプの資産運用事業を始める。
