私が斎藤さんとお会いしたのは、2014年の後半、私がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で政策ポートフォリオの見直しに携わっていた頃で、彼が所属するオブザバトリーグループとのミーティングの場でした。
もちろん、GPIFの検討状況についてはコンフィデンシャルなので、公開情報以外には私から話せることは一切ないわけですので、どちらかというと私が斎藤さんの話をお聞きするだけだったのですが、その情報収集能力と全体感の分析能力についてとても驚いたのを鮮明に覚えています。世の中にはこんな凄い人がいるのか、と。その当時ですから、話題はアベノミクスの方向性で、日本銀行による金融政策の動向とGPIFをめぐる政府関係者の議論が中心でした。
オブザバトリーグループはヘッジファンド等を中心とする金融機関に各国政府の動向を含めたディープな情報を提供する情報サービス機関であり、古くはメドレーグローバルアドバイザー、コーポレート寄りではHAKLUYTなどがあります。これらは、民間ベースではあるものの、いずれもベールに包まれており、諜報機関さながらのインテリジェンスファームと言っても過言でないかも知れません。
ご紹介する本は、そんなインテリジェンス活動に30年近く携わってきた著者が、グローバルな政治経済構造の転換と今後の日本の役割と可能性について確信を持って伝える貴重な提言書であると思います。
筆者は、東西連戦の終結後、グローバル経済を支えていた新自由主義が近年信任を失い、人々は、世界がそれまで目指していた「市場原理に基づき民間企業や各個人の意思・判断をより重視し、性別や人種、国籍にかかわらず、市場に自由に参加するシステム」から、「大きな政府」への転換を求めていると言います。これは、小さな政府を志向していた新市場主義の結果として不平等や分断が進み、市民の信頼が大きく離れたからということです。ポイントは世界各国で生じている既存システムからのそうした離反が、いわばカジノのオーナー(胴元)であるところの米国においても起こったことが決定的であり、これによって、米国と新たな覇権を取ろうとする中国とのデカップリングは不可避となり、そのために米国は「強い日本」を求め、それは日本復活の最大のチャンスの到来を意味するということです。
私自身振り返りますと、トランプ氏が第一期目の大統領選で勝利した2016年11月8日の当日、私は前職の仕事でニューヨークへ渡航中であり、トランプ勝利に伴って生じた1ドル101円という急激な円高を知ったのも機上でした。
ニューヨークに到着した翌日、滞在先近くで遭遇したトランプタワーでの大規模なデモにその背景や状況を理解するのはなかなか難しかったです。しかしながら、同じ会議の出席者の一人が、「民主党の基盤であるニューヨークでは、アジアを始めとする様々な人種が立派なスーツを着て金融街を闊歩しているが、それを横目にビルの修理などをしているブルーワーカーには白人も多く、彼らがどんな思いなのかは分かるような気がする」と言っていたのが印象深かったのを覚えています。このようなことからも推し量れる「グローバリズムと光と影」が時代として今顕在化しているということなのかも知れません。
そして、この日本におけるこの度の参議院選での参政党の躍進。こうした動きを一人ひとりがどう捉えるべきであるか、そのフレームワークに関する一つの見方を本書は示してくれていると思います。
もちろん、GPIFの検討状況についてはコンフィデンシャルなので、公開情報以外には私から話せることは一切ないわけですので、どちらかというと私が斎藤さんの話をお聞きするだけだったのですが、その情報収集能力と全体感の分析能力についてとても驚いたのを鮮明に覚えています。世の中にはこんな凄い人がいるのか、と。その当時ですから、話題はアベノミクスの方向性で、日本銀行による金融政策の動向とGPIFをめぐる政府関係者の議論が中心でした。
オブザバトリーグループはヘッジファンド等を中心とする金融機関に各国政府の動向を含めたディープな情報を提供する情報サービス機関であり、古くはメドレーグローバルアドバイザー、コーポレート寄りではHAKLUYTなどがあります。これらは、民間ベースではあるものの、いずれもベールに包まれており、諜報機関さながらのインテリジェンスファームと言っても過言でないかも知れません。
ご紹介する本は、そんなインテリジェンス活動に30年近く携わってきた著者が、グローバルな政治経済構造の転換と今後の日本の役割と可能性について確信を持って伝える貴重な提言書であると思います。
筆者は、東西連戦の終結後、グローバル経済を支えていた新自由主義が近年信任を失い、人々は、世界がそれまで目指していた「市場原理に基づき民間企業や各個人の意思・判断をより重視し、性別や人種、国籍にかかわらず、市場に自由に参加するシステム」から、「大きな政府」への転換を求めていると言います。これは、小さな政府を志向していた新市場主義の結果として不平等や分断が進み、市民の信頼が大きく離れたからということです。ポイントは世界各国で生じている既存システムからのそうした離反が、いわばカジノのオーナー(胴元)であるところの米国においても起こったことが決定的であり、これによって、米国と新たな覇権を取ろうとする中国とのデカップリングは不可避となり、そのために米国は「強い日本」を求め、それは日本復活の最大のチャンスの到来を意味するということです。
私自身振り返りますと、トランプ氏が第一期目の大統領選で勝利した2016年11月8日の当日、私は前職の仕事でニューヨークへ渡航中であり、トランプ勝利に伴って生じた1ドル101円という急激な円高を知ったのも機上でした。
ニューヨークに到着した翌日、滞在先近くで遭遇したトランプタワーでの大規模なデモにその背景や状況を理解するのはなかなか難しかったです。しかしながら、同じ会議の出席者の一人が、「民主党の基盤であるニューヨークでは、アジアを始めとする様々な人種が立派なスーツを着て金融街を闊歩しているが、それを横目にビルの修理などをしているブルーワーカーには白人も多く、彼らがどんな思いなのかは分かるような気がする」と言っていたのが印象深かったのを覚えています。このようなことからも推し量れる「グローバリズムと光と影」が時代として今顕在化しているということなのかも知れません。
そして、この日本におけるこの度の参議院選での参政党の躍進。こうした動きを一人ひとりがどう捉えるべきであるか、そのフレームワークに関する一つの見方を本書は示してくれていると思います。
この本を紹介した人

清水 時彦
Fiducia株式会社代表取締役
PE投資からVC投資、特にグロース投資PE/VCファンド組成の実績等の経験豊富。GPIF投資戦略部長、ゆうちょ銀行常務執行役員、JPインベストメント社長などを歴任。