2019年8月20日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.140『事業価値と資本構成』セミナーレポート

HCセミナー
■動画ダイジェスト


 事業性を評価し、その評価を根拠として事業主体に資金供給を行うのが王道の投資方法である。しかし、資産運用業界は、個々の事業ではなく、事業の集合体である企業の社債・株式の価値を根拠に資金供給を行うか否かを判断している。社債・株式に価値があるのではない。これらの裏付けとなる事業がキャッシュフローを生み出しているのだから、当該事業に価値がある。付言すると、事業に価値があれば、すなわち、事業がキャッシュフローを創出しているのならば、その事業を営んでいる企業の社債・株式は投資対象に当然なりうる。

 もっとも、価値のある事業を複数抱えている企業だとしても、企業の価値は各事業の価値の合計値より下回ってしまう(コングロマリットディスカウント)。なんらかの経営行動をしないと、この状態は解消しない。経営行動の例としては、不採算事業の売却がある。しかし、このような経営行動は、日本の経営者には期待できない。日本の経営者は出身事業母体を尊重してしまうからである。企業経営者は、各事業から中立であるべきである。日本の経営者は、企業経営の在り方と事業経営の在り方を峻別し、企業経営に努める必要がある。

 また、最適資本比率についても、事業性を軸に考えることが重要である。事業価値は金融と無関係に規定される。換言すれば、事業価値は金融と無関係に動態的に変動する。そうだとすれば、事業価値が変動することを前提に、自己資本比率を考えることになる。

 例えば、ある事業の事業価値の変動が高度に大きければ、自己資本は厚く積まないと事業自体の持続可能性がなくなってしまうので、株式の比率を高める方針を採る。一方、事業価値の極端な上昇も下落もない場合、負債比率を大きくする必要がある。そうしないと、事業の成長率が低いままであるので、株式の価値が上がらなくなってしまう。また、相対成長率が低くても、安定性が高ければ、株式への投入額を小さくすることによって、株式の価値を維持できる。

 つまり、事業特性に応じて最適な資本比率を決定すれば、どのような事業にも応分の投資価値が生じ、成長率の高低は株式価値を左右しない。適切な資本構成をとれば、一定の株式価値を維持できる。

 事業構造ごとに最適資本比率が決まるとすれば、企業レベルで最適資本比率決定するのは不可能といえる。子会社が資金調達をする際に親会社の金融機能に依存するのは、ナンセンスである。このようなやり方だと、ガバナンスの問題が生じる。子会社に、不要な資産を見直す等の資本政策を図る機会がなくなってしまうことがその理由である。また、資金供給側には、量的な業績評価指標を採用しているから、融資総額のみを気にしているばかりで、資金調達側の資本政策の問題を指摘しないというガバナンス上の問題もある。質的な業績評価指標を取り入れる等を進め、ガバナンス改革を図るべきだ。

 さらに、一歩進んで考えてみると、資金供給の必要性そのものを縮小する方向を模索していくべきである(非金融)。この必要性を減少させていくことで、金融業界を刺激し、効率化を図ることができる。コーポレートガバナンス論では資金調達側・資金供給側双方の構造を変えるのは不可能であり、双方が非金融を含めた効率的な資金運営の方策を講じることが肝要である。 



以上

(文責:宮里、大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. さて、日本企業の経営の一般的傾向として、三要素の均衡を考えたとき、敢えて改善点があるとしたら、どこでしょうか。 以下のなかから、一番近いとお考えになるものを、一つだけお選びください。

1. 日本経済が低成長に転じた後も、売上至上主義的経営方式から脱却できず、コスト管理面、財務管理面の経営技術に、弱点がある。
2. 低成長を前提にしたコスト管理的側面が強くなりすぎて、肝心の成長志向が弱くなってしまった。
3. 財務管理において、株式価値重視の視点が弱すぎる。
4. 特に大きな問題はなく、三要素は、日本的に、それなりに均衡している。

Q2. 過去の経緯によるバランスシート上の損失を償却する場合においても、事業価値を高めるための未来へ向けた戦略的な長期投資のためにも、自己資本の調達が必要になりますが、どのような対応が望ましいとお考えでしょうか。一番近いとお考えになるもの一つだけお選びください。


1. 原則として普通株式の発行による。
2. 希薄化を避けるために普通株式の発行を最小化し、できるだけメザニン等を活用する。
3. 希薄化を避けるために普通株式の発行を最小化し、できるだけ資産売却益の計上等を行う。


アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。

過去のセミナーレポート

過去に開催した弊社主催セミナーのダイジェスト・配布資料・セミナー内で行ったアンケートの集計結果についてご覧いただけます。