日本の先進技術と地域の未来

日本の先進技術と地域の未来

著者 松原 宏・地下 誠二
出版社 東京大学出版会
発行日 2022/02/25
 本書は、日本の地域社会が抱える少子高齢化・産業構造の変化・インフラ老朽化・新型コロナによる社会変容といった複合的課題を提示したうえで、カーボンリサイクルや再生可能エネルギーを活かした地域エネルギー戦略、ICT/IoT/AI を用いたスマート化、データ管理による行政効率化、ドローンや空飛ぶクルマといった新モビリティによる交通・物流再構築など、先進技術が地方創生にどう貢献しうるかを、多様なデータ分析や国内外の事例を交えて示しています。
 こうした取り組みによって、地域は「過去の延長」から脱却し、人口減少や産業衰退下でも持続可能な新たな地域モデルを構築できる可能性が開かれることを論じています。

 DXとGXという二重のパラダイムシフトは、地域モデルにゲームチェンジをもたらし、地域が抱える物理的な条件不利性を緩和するとともに、その固有の価値創出力を高める大きな契機となり得ます。
 実際の活用例を用いた、スマートICTによる行政/医療/福祉サービスの効率化、ドローンによる交通・物流の再構築、再生可能エネルギーによるエネルギー自立等は、限界集落や過疎地、人口減少自治体が抱える構造的課題に対するリアルな解決策になり得ると感じました。
 特に最近注目されている「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」の地域インフラを広域的・横断的に再編する政策議論に対して、本書の示す先進技術例は 強くリンクしてくるように思います。

 コロナ禍を機会に働き方改革や企業経営が大きく変革したように、現代日本の様々な課題と可視化されつつある地域の衰退を前にして、先進技術を活用して地域の新時代を切り開く動きの一助になる一冊です。

この本を紹介した人

翁 将也

HCアセットマネジメント株式会社投資運用機能所属

2021年にHCアセットマネジメント株式会社に新卒で入社。現在はポートフォリオマネージャーのサポートに従事。趣味は旅行。