入門 信託と信託法 第2版

入門 信託と信託法 第2版

著者 樋口 範雄
出版社 弘文堂
発行日 2014/4/21
 本書は2007年に信託法改正を契機に書かれた10章からなる初版(信託とは何か、人はなぜ信託をするのか、民事信託・商事信託とは何か、信託の変更・終了と受託者、受託者の忠実義務・注意義務・その他の義務、その他の重要な論点、信託の将来)から8年経過後に、信託の本質と日本法の現実との乖離や関係を11章にその後の信託と信託法として追加されたものです。

 余談ですが本書を読みながら私が以前、信託銀行に勤めているときによく受ける質問を思い出しました。「信託銀行名を四季報でよく見かけるのだけど、どうして?」という質問です。

 これは四季報に大株主として信託銀行の名前が多く記載されているからなのですが、信託スキームをご存知ない方は不思議に思うかもしれません。

 2000年に資産管理型信託のうち資産管理業務を信託銀行から特定の資産管理専門信託銀行へ再信託することで、一元的な資産管理が可能となりました。信託銀行が受託した資産を資産管理業務のみを資産管理専門銀行へ委託しているのです。つまり、お客様の信託資産を資産管理専門信託銀行の名義でお預かりしているため、大株主になることがよくあります(もちろん議決権は資産管理専門信託銀行にはありません)。

 本書では、信託の基本的なあり方や歴史とともに様々なケース、過去の実際の裁判内容や条文をつかって解説されているためアメリカと日本の違いや問題点などの理解が深まると思います。

 日本では大部分が商事信託であり、私が本書を読んで思うことや思い出すこともやはり商事信託に関することばかりですが、本書では日本でなぜ民事信託が発展しないのか、今後の信託の発展の在り方などについても触れており「信託」はまだ発展途上であることが伺えます。

 信託のしくみや様々な「なぜ」やあるべき姿をより深く理解するのに役立つ1冊です。

この本を紹介した人

大藪 栄子

HCアセットマネジメント株式会社

2020年3月HCアセットマネジメント株式会社入社、バックオフィス部門にて計上や発注、NAV管理等について信託銀行とのやり取りをメインに従事。 前職では約12年、資産管理を専門とする信託銀行にてバックオフィス部門を経験。