地域経済の新生とリレーションシップバンキング<br />-荘内銀行による山形県での実践-

地域経済の新生とリレーションシップバンキング
-荘内銀行による山形県での実践-

著者 荘銀総合研究所編
出版社 金融財政事情研究会
発行日 2004/01/15
 農業低迷、製造業空洞化、建設業衰退、という地域基幹産業の後退による地域経済の不振は、全国的問題であり、山形県も例外ではありません。その中で、地域内における経済主体間の関係性(リレーションシップ)や、地域と地域外との関係性を変えることで、新たな成長の機会を模索する試みが、各地でなされています。本書には、山形県という狭い範囲(あるいは、狭いからこそ)ではありますが、具体的事例が紹介されていて面白いです。
 しかし、これは、バンキングの本ではありません。荘内銀行が、域内の企業・産業・コミュニティとの関係性を見直し、新たな関係性を構築していく取り組みの本です。リレーションシップの本です。おそらくは、リレーションシップバンキングとは、銀行を主役にした、バンキングの構造改革の問題ではないのでしょう。そうではなくて、地域を主役にした、銀行のリレーションシップの構造改革の問題なのでしょう。結果的に経済が伸びれば、バンキングも伸びる。そう考えれば、本書のような建付けが、正しいのです。
 そうはいっても、改めて、銀行というのは、規制上、狭い範囲の銀行業しかできないのだなあ、とは思います。リレーションシップ構築自体は「業」ではなくて、バンキングだけが「業」なんです。リレーションシップに踏込むには、制限がある。踏込み切れないところにも、地域金融機関の悩みがあるのかもしれません。一方、農協は、経済事業と信用事業の両方ができる。なぜなのでしょう。原点に返って、制度論を抜本的に検討し直してもいいのではないでしょうか。

この本を紹介した人

森本 紀行

HCアセットマネジメント株式会社代表取締役社長

東京大学文学部哲学科卒業。ファンドマネジャーとして三井生命(現大樹生命)の年金資産運用業務を経験したのち、1990年1月ワイアット(現ウィリス・タワーズワトソン)に入社。日本初の事業として、企業年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。年金資産運用の自由化の中で、新しい投資のアイディアを次々に導入して、業容を拡大する。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資のタレントを発掘して運用委託するという、全く新しいタイプの資産運用事業を始める。