コーポレートガバナンスと企業・産業の持続的成長

コーポレートガバナンスと企業・産業の持続的成長

著者 神作 裕之 (編集)、小野 傑 (編集)、今泉 宣親 (編集)
出版社 商事法務
発行日 2018/3/1
 日本の成長戦略としてコーポレートガバナンス改革が掲げられている中、「日本の成長とコーポレートガバナンスはどのように関連するの?」「コーポレートガバナンスがうまくいっている状態とは?」と様々な疑問を持っている方もいらっしゃると思います。そのような方にぜひご一読していただきたいのが本書です。
 
 本書は、東京大学の大学院生を対象として行われた講義をまとめたものです。コーポレートガバナンスに関する学術的背景を踏まえ、経営側の視点からコーポレートガバナンスが企業の成長・価値向上へどのように関係するのか、また、コーポレートガバナンスが投資家の判断にどのように影響を与えているのか等、コーポレートガバナンスを軸として様々な観点から講義は展開されています。
 学術的背景を踏まえて講義が進んでいることで、点として存在していたコーポレートガバナンスに関する知識が1本の線に繋がっていきます。

 「コーポレートガバナンス」という単語の響きから一般的にイメージされるのは、企業の経営者に対して監視を行い、企業としてあるべき姿を強制していく様子だと思います。
 しかし、企業としてあるべき姿は、全国一律的な姿を強制できるものではありません。なぜなら、個々の企業の事業内容や財務状況は様々であり、その状況に基づいてあるべき姿を設定する必要があるからです。
 また、企業としてあるべき姿を目指していく主体は経営者のみに留まってよいのでしょうか。
 企業の所有者としての株主も、企業としてのあるべき姿について主体的に考えていかなければなりません。また、従業員や企業の製品を購入している人等、企業を取り巻く人も利害関係者として企業のあるべき姿を判断できるようになる必要があります。
 さらに言えば、企業にとっての目指す方向を日本人全員が考えることによって、企業価値の向上が進むのではないでしょうか。
 形だけのコーポレートガバナンスではなく、実質を備えた「良いコーポレートガバナンス」がどのような状態なのか‥本書の読後には、読者それぞれの回答を披露し合うのも面白いかもしれません。

この本を紹介した人

宮里 都

HCアセットマネジメント株式会社

2017年にHCアセットマネジメント株式会社に新卒で入社。現在は主に顧客の資産管理業務に従事している。