2020/2/18(火)開催 HC資産運用セミナーvol.146『ポートフォリオ管理の理論』セミナーレポート

HCセミナー
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 投資は、お金を投じること、という意味ではない。お金を投じた対象が、やがてお金を産むというのが投資の本質であり、お金を産まないものは投資対象ではありえない。逆を言えば、インカムを産みさえすれば投資対象足りえるし、インカムを産まないものも投資対象になるよう工夫してきたのが金融の歴史である。

 投資対象の基本的な例としては、昔から乳牛(牛乳ではない)が使われている。乳牛は一度買えば数年にわたって牛乳を産み、牛乳の売上からコストを差し引いた分が利益(インカム)となる。牛乳を産める量は遺伝的にある程度決まると考えられており、また、牛乳の価格もある程度統制されているため、飼育にかかるコストはやや読みづらいものの、売上の部分については読みやすいような構造ができあがっている。

 では、乳牛に投資し、安定した利益を得ようとしたときに、「リスク」は何か。牛乳の需要がリスクの中核であることは間違いがない。もし世界中の人が牛乳を消費しないようになれば、牛乳で利益を上げることはできない。牛乳の需要の管理などは不可能であり、管理不可能であるが、牛乳が飲まれ続けるという信念の下で、意識的に取られるこのような究極のリスクを、リスクアペタイトフレームワークでは「意図的にとるリスク」という。金融庁の用語的にいえば、この種のリスクを意図的に取ることを「リスクテイク」という。牛乳の需要に密接不可分で1段格下のリスクとして、牛乳の値段がある。これは「付随リスク」といい、管理対象となるリスクである。価格の管理方法としてパッと思い付くのは、価格競争にさらされないような高級牛乳を作り、高級ホテルなどに供給することである。次に思いつくのは、加工用に牛乳を生産し、加工業者と長期供給契約を締結して売上を安定化することである。この下に、牛が病気になるリスク、貯蔵用の設備が壊れて出荷できなくなる、などのリスクがある。これらのリスクは、それなりの費用をかけて、最小化しなければならない。

 意図的に取るリスク、付随するリスクを管理する技術、コストを掛けてその他の下位のリスクを最小化する努力、の3つから資産運用は成り立っている。これらは当たり前のことのように思われるが、自覚的に理解されているだろうか。ある企業への株式投資に置き換えると、その企業のある商品の需要のリスクを、株式を通じてテイクしていいものかどうかという本質的な問いが重要であって、価格変動にさらされる株式での投資を選んだ以上、株価の変動は意図的に取られたリスクであるはずで、価格変動それ自体を論じることは極めて無意味である。理論的には、価格が下落するということは、一時的な現象でなければ、価格が付されているそのもののインカムを稼得する力が落ちているということを意味する。すなわち、価格が落ちた場合には、インカムを稼ぐ力の確からしさを確認しなければならない。インカムを稼ぐ力に問題がなければ価格は戻る。そうしてインカムの創出力を確認することがモニタリングと呼ばれる行為なのである。価格変動はモニタリングするための動機付けであって、それ自体は論じる対象ではない。



以上

(文責:和田、大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。



■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. 現時点で、世界の全ての投資対象を踏まえて、諸客観条件のもとで、最高度の創意工夫をしたとして、円ベース(為替全てヘッジ)のインカム戦略として合理的に期待できるリターン水準(主観的な、また希望的な期待ではなく)は、どの程度でしょうか。ただし、全て流動的な資産だけで、構成するとします。

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Q2. 上と全く同じ質問ですが、上とは全く逆に、全て非流動的な資産だけで、構成するとします。

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Q3. 資産全体をインカム戦略で固めるとして、非流動的な資産の組み入れは、全体のなかで、どの程度の比率とすべきでしょうか。


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