2020/3/17(火)開催 HC資産運用セミナーvol.147『資産運用の歴史と実践』セミナーレポート

HCセミナー
■動画ダイジェスト




 本セミナーは2007年1月にスタートした。2007年サブプライムに端を発した金融危機に対しては金融政策という特効薬があり、規制当局も経験を積んできた。一方コロナ問題には特効薬がなく、通常の景気循環を前提とした回復が期待できない可能性がある。つまりエクイティによる損失吸収・事業継続は限界に達し、産業再編が求められるだろう。通常の産業再編とは異なり、今回の場合突発的かつ一気に起きている。

 戦後始まった預金から産業部門への資金循環は、長期の設備投資需要に応えるための長短分離を経て、長信銀・生保・信託と並び企業年金が長期調達を担うこととなった。企業年金の資産運用は、法令上「年金制度」の受託が求められたことから、事務能力や保険数理を解する生保・信託が独占。当時シェアといえば給付のシェアであったのも制度受託の現れ。国民の利益を守るため厳格な規制下に置かれ、資産配分規制や委託先変更の制限があった。1990年4月、給付の委託ではなく給付費用の委託へと改正され、投資顧問会社への「運用」委託が解禁。当初、委託額は新規掛け金に限定され、上限も課されていたが、1994年に既存掛け金も委託可能になり、1996年に資産配分規制も段階的に緩和され適用除外が許可制に。しかし1997年の金融危機に際し、国は急速な規制撤廃を図り、運用結果を委託者の自己責任に帰してしまった。

 株式市場が大幅下落する中、時価評価の導入や系列取引の後退、コンサルタントの役割定着、インデックスをコアとする資産配分の導入が進み企業年金が本格的に変化。しかし、資本市場の育成よりもバンキングの復興が優先され、2000年代はゼロ金利政策や退職給付会計の導入など厳しい外部環境もあり、メガバンク制・系統取引の復活や、コスト削減のための安易な制度変更による年金制度に対する社会的信頼性の低下が起きた。企業は企業年金の戦略的な重要性を認識すべき時に来ているのではないか。今こそコーポレートガバナンスコードに企業の責任・コミットメントの明文化を求めたい。日本は厚生年金の給付水準が高すぎ、これ以上企業の責任を求められないという面もあるが、一方で政府がミニマムの給付水準を引き下げる方向にあるとき、支給開始年齢の繰り延べなどの対応を取ることにより、企業は安定雇用を下支えする企業年金の戦略的意義を再考できると考える。



以上

(文責:東海、大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. 日本の産業の明るい未来にとって、確定給付企業年金は、どのような位置づけにすべきとお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

1. 日本産業の国際競争は、製品・サービスの質の高さに依存する。その質を維持するためには、雇用の質が重要となることから、安定雇用の柱として、改めて、確定給付企業年金は戦略的に重要なものとして再認知されるべき。
2. 確かに、安定雇用は重要だが、確定給付企業年金は、企業の財務的不確実性を大きくしてしまうので、確定拠出等への移行を通じた相対的縮小は、不可避。
3. グローバル競争に勝ち抜くためには、確定給付企業年金は、日本企業の人事制度として、不要である。
4. その他

Q2. 金融庁は、資本市場の機能強化を目的として、コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、フィデューシャリー・デューティーの施策を用いて改革を推進してきました。資本市場への参加者として、現時点での達成度はどの程度であると思われますか。


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1. すでに達成された
2. 7割程度達成している
3. 5割以下の達成度
4. まったく進んでいない


アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。