2014年5月14日(水)開催 HC資産運用セミナーvol.077「キャッシュフロー創出力を高める努力としての資産運用」セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト



 理屈上、本源的価値が動かなければ価格は動きません。生み出すキャッシュフローが増えれば価格が増えるように、価格変動自体はキャッシュフロー変動の結果といえます。また、そもそもキャッシュフローを生むものが資産です。たとえば、土地や金はキャッシュフローを生まないとして弊社の投資対象からは除外されています。常に“より良いもの”=ネットキャッシュが増えるものに投資していかなければなりません。企業であれば経営者がマネジメントという形で努力しますが、短期的なコスト削減ではなく、長期的に売上増加につながるような工夫やコスト削減等により、事業のネットキャッシュフローを増やす努力ができる企業が投資対象となります。投資要件を絞り込んで探さないといけないのです。

 今、運用の原点が見えづらくなっているのは、意思決定が二階層構造になっているからです。投資家(たとえば年金基金)が運用業者を選定し、さらにその運用業者が事業会社を選定する。しかしながら、米国のプライベートエイクイティなどでは投資家と運用業者が一体となってキャッシュフローの増加を図り、経営努力を行うという点で一階層化となっています。インフレ時代は何もしなくてもキャッシュは増えていきましたが、今、日本はデフレ時代で、キャッシュは簡単には増えていきません。だからこそ、投資の能力、原点として、キャッシュフロー創出力を高める努力をしているかどうかの確認を行わなければならないのです。

 また、契約によりキャッシュを生み出すことも可能です。キャッシュフローが生み出されることが前提条件として、事業ポートフォリオから有期のプロジェクト単位で切り出します。管理する対象が一つのプロジェクトなので、ガバナンスも効きやすく経営者を必要としません。よって、投資家が直接資産を入れて投資する形態となっています。現在は企業全体に対するコーポレートファイナンスから複数のプロジェクトファイナンス投資への移行が世界的な潮流になりつつあります。

 キャッシュフローの量と質を高める方法としては3つあります。第一に資本構成の選択、第二に源泉選択。第三にキャッシュフロー源泉と配分への関与として、事業改善、資本構成改善に関与するということです。プロジェクトファイナンスにおいては、投資プロジェクトが決定されたら、次に投資するキャピタルストラクチャを選定します。パブリックな領域では株式と債権は区分けされていますが、プライベートにおける株式と債権は一体化して考える傾向が強まっています。キャッシュフローが確実に生まれるのであれば、劣後部分への投資が望ましいと思われます。源泉選択においては、源泉がムダに重複していないかのチェックが必要となります。関与としてはプライベートで行われているエンゲージメント型がパブリック領域でも増加しています。

 株式投資ですが、キャッシュフローが増加しない限り投資対象にはなり得ません。株式は資本構成で最下位に位置し、事業からのキャッシュフローのうち優先部分を除いた残余のみが分配されます。キャッシュフローの分配を考えると、キャッシュフロー成長が望めるインフレ期には株式の投資割合を増やし、デフレ期にはその割合を引き下げることが望ましいと考えられます。また、高い自己資本比率などの投資条件を徹底的に保守的に検討することが必要です。債券(債権)投資では、特定の社債(電気やガス)は融資より優先されるため、優先劣後関係の正確な把握と適切な地位の選択が重要です。更に債権者保護のコベナンツ設計への留意が必要です。融資は条件変更が可能であるため、より望ましい投資対象と考えられます。実物資産への投資に関しては、特定目的の資産が良いのか、一般目的の資産が良いのかよく考えなければいけません。石油は売ってから掘ります。電機は売ってから発電所を作ります。このようにキャッシュフローが生まれることが前提にプロジェクトを稼働させないといけないのです。それは難易度が高く、またビジネスパートナーとの交渉力が必要です。おのずと運用会社が持つべきスキルセットが見えてきます。

 投資対する考え方として、どのようにキャッシュフローの量と質を高めていくか、みなさまも一緒に考えてみてください。

以上
 


  
(文責:大橋理瑛、白木智雄)

  当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。


詳細レポートをご希望の方は、下記アドレスまでお気軽にお申し付けください。
HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 個人的な好みの問題として、以上の5つのうちで、好きな投資方法は、どれでしょうか。一番趣味に合うものを、一つだけお選びください。

<クリックで拡大>
不動産という一つの投資の機会をとらえたとき、その機会への参画の方法には、色々と多様な形態を考えることができます。例えば、思いつくままに挙げても、少なくとも、以下の5つがあります。

1. 不動産事業を営む企業の株式への投資 
2. 個別の不動産そのものの所有
3. 不動産ファンドのエクイティへの投資
4. 不動産ファンド向け融資(不動産担保融資)
5. 不動産担保融資を証券化した債券(CMBS)への投資

Q2 年金基金の資産運用方法の問題として、以上の5つのうちで、資金特性に最も適しているとお考えになるのは、どれでしょうか。一番近いものを、一つだけお選びください。


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不動産という一つの投資の機会をとらえたとき、その機会への参画の方法には、色々と多様な形態を考えることができます。例えば、思いつくままに挙げても、少なくとも、以下の5つがあります。

1. 不動産事業を営む企業の株式への投資 
2. 個別の不動産そのものの所有
3. 不動産ファンドのエクイティへの投資
4. 不動産ファンド向け融資(不動産担保融資)
5. 不動産担保融資を証券化した債券(CMBS)への投資

Q3 現在の日本の不動産市場の状況に照らして、以上の5つのうちで、最も魅力的な方法とお考えになるのは、どれでしょうか。一番近いものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
不動産という一つの投資の機会をとらえたとき、その機会への参画の方法には、色々と多様な形態を考えることができます。例えば、思いつくままに挙げても、少なくとも、以下の5つがあります。

1. 不動産事業を営む企業の株式への投資 
2. 個別の不動産そのものの所有
3. 不動産ファンドのエクイティへの投資
4. 不動産ファンド向け融資(不動産担保融資)
5. 不動産担保融資を証券化した債券(CMBS)への投資