2013/4/10開催 HC資産運用セミナーvol.064「金融の社会的機能と資産運用」セミナーレポート

HCセミナー


  宝くじや馬券、あるいは書画骨董の様に、法律上投資対象とならないものは定まって来ますが、法律で投資対象となっていても、そのすべてに投資する訳ではありません。金融機関等は狭く投資対象を定めていますが、この投資の外縁を定めるものが「投資哲学」となります。わからないからやらないとか、やったことがないからやらないと言うのも投資哲学とは言えません。米国の自動車労組も有力な機関投資家ですが、彼らの日本株に投資しないという判断は哲学なのでしょうか、好き嫌いなのでしょうか?

 「不良債権」について考えてみますと、その処理方法として、債権放棄・金利減免・担保資産売却が考えられますが、事業用資産を売却してしまっては事業が立ち行かなくなります。債権は債権のままで回収することが前提であり、金融としての機能が失われてしまったら、投資ではなくなってしまいます。  開発目的で土地を所有したら、これは投資と呼べるのでしょうか?土地や不動産が投資対象となるためにはキャッシュ・フローが必要となります。実物資産への投資は、きわめて高度で哲学的な議論を伴います。

 一方、産業が成立する上で、「投機」は不可欠であると考えられます。投機資金が入ってくることで、穀物やエネルギーや卑金属等の先物市場や、為替市場が安定することが期待されます。金について考えてみますと、インドや中国が大量に金を保有することになる以前は、産金コストが極めて高いため、産金業者は先物市場でヘッジを行っていましたが、現在は産金コストと実勢金価格の乖離が大きくなり過ぎて、金は単なる投機のぶつかり合いとなってしまっています。

 故サッチャー政権の時代には、資本市場改革を学ぶべく、日本の金融機関から何千人もがロンドンに駐在していましたが、その後のバブルならびにその破たん処理で、未だに資本市場改革は実現されていません。本来であれば、年金や運用会社が成長分野となる筈でした。日本の資本市場が曲りなりにも大きく見えるのは国債残高のおかげで、社債市場の多くを電力債が占め、株式市場の規模は、メガ3行の資産規模合計と大差がありません。

 資本市場の規模や伸び以前に、資金の循環が滞っていることが最大の問題です。昔は、有価証券に投資し、その金が産業界に回り、利益を上げ、利息・配当と共に戻ってくる絵が描けましたが、いまはお金が流れていません。『四月の悪事』と言うジョン・マクドナルドの小説では、資産を現金化し自宅の金庫に入れて、お金を罰する(働かせない)人物が描かれていますが、お金は社会、金融界で働いてこそ投資と呼べるのではないでしょうか?

 東京電力の株式には魅力がないとしても、「電力」には必需性があり電力事業には投資価値があると考えられますので、工夫をすれば投資対象足りうるのではないでしょうか?日本の株式市場は、過去20年間惨めな状態でしたが、日本企業は収益を上げて来ています。言い換えると、資本コストを払った上で、日本企業は利益を上げていることになります。電力料金に織り込まれている資本コストは3%ですが、なぜこの3%が投資家に還元されないのか、そこには技法や仕組み上の問題があると考えられます。フォーラムでのパネリストのご発言の通り、運用会社の企画力は弱く、投資がうまく行かないのは運用会社の怠慢で、銀行借入と株式に止まっていてはだめです。

 産業の発展を金融で支援するためには、成長資本の「導入→回収→導入」という循環的な流れをビジネスとして構造化できるかどうかにかかっています。事業者のノウハウを活用し、安定したキャッシュ・フローを確保し、阻害要因を取り除くことで投資成果を上げて行かなければなりません。圧倒的な影響力を持つ本邦銀行による投融資は、自らの経験や知見の及ぶところに留まり、そこに日本の金融機能の構造的な欠陥があります。確信度の高い投資機会に対して、科学的な工夫を凝らして投資対象として行くことで金融の社会的機能を高め、「金融の王道」としての本来の資産運用ビジネスを取り戻すべきなのではないでしょうか。

 以上
  
 (文責:西山・佐藤)

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  HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 資産担保証券(例えば、サブプライム関連の証券)について、原資産(例えば、サブプライム・ローンそのもの)に投資価値がないときでも、証券の構造を工夫することで、投資価値を作ることはできるでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

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1.原理的に、あり得ない。
2.格付機関が評価しているのだから、問題ない。
3.投資価値のある部分とない部分に分かれるのだから、価値のある部分だけに投資すればよい。
4.その他
5.無回答

Q2 「宝くじ」の発行は、実は、地方自治体の資金調達です。しかし、「宝くじ」は、購買者全体についての期待収益率が大幅マイナス(約-50%!)で確定するので、購入する経済合理性はありません。そのような「宝くじ」の発行で、宣伝広告までして、資金調達を行う自治体の行為は、なぜ正当化されるのでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1. 「庶民の夢として愛され、親しまれ、定着したファンをもつ」から(日本宝くじ協会ウェブサイトより)。
2.法律(当せん金付証票法)で定められているから。
3.金融商品取引法の適用がないから。
4.資金使途が、公共のものだから。
5.本来は、正当化され得ない。
6.その他
                                                                                                                    

Q3 ベンチャーキャピタルが全く新しいスタートアップの企業や創業間もない企業に投資することは、究極の成長支援という意味で、ベンチャーキャピタルにしかできない金融の社会的役割です。しかし、一方で、合理的な事業キャッシュフローの推計に、限界のあるのは事実です。創業支援は、適格な投資であり得るのでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1.事業キャッシュフローの推計は難しくても、事業モデルの妥当性や合理性は   評価し得るのだから、適格な投資である。
2.ひとつひとつの案件ごとに、投資の適格性を議論することはできない。複数投資することで、統計的な制御がなり立つ限りでのみ、適格な投資である。
3.投資後の様々な経営支援活動(いわゆるハンズオン)によって、積極的にリスク管理できるという条件の下でのみ、適格な投資である。
4.創業直後の投資は、適格性を欠く。ある程度、事業キャッシュフローが読める段階に達した企業に、投資は限定すべきである。
5.その他







セミナーレポートは以上になります。