2012/12/12開催 HC資産運用セミナーvol.060「『いい運用会社』とは 」セミナーレポート

HCセミナー
「良い運用会社」。そんな運用会社ってないのでは?とおっしゃる向きもありますが、そうは言っても運用会社の選択は不可欠です。

 そもそも投資運用業とは、法令上の定義では、『金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(「金融商品取引法」)』となっています。これは価値の判断であり、価格の判断ではありません。つまり投資対象は価値。価格は受け入れるしかない条件にすぎません。リーマン危機の2008年末から2009年初めにかけて証券価格が急落し、直後のオバマ大統領の政策で急上昇しました。これは価値の急変(毀損と回復)だったのでしょうか、それとも価格のブレに過ぎなかったのでしょうか。いかに信用リスク増大の連想からくる影響はあったとはいえ20%もの価値下落は歴史的にも蓋然性はありません。今となれば明らかですが価値と価格が最大に乖離したためでした。業界内で原理原則のとおりに価値の説明をした運用会社は少数だったでしょうが、良い運用会社だと思います。また調査した事実に基づいた確信度がなければ説明もできないため、その意味でも良い運用会社の条件の一つを満たしていると思います。

 では良い運用会社の条件とは何でしょうか。まずは「理念的条件」です。見方の問題であり、投資機会の発掘です。船舶の救済ファンドのニュースを見たときに、面白そうなどと考えるだけではダメで、どのような仕組の中で、どのような投資機会が得られるかを判断するための高度な専門知識が必要となります。

 次に「倫理的条件・論理的条件」です。考え方の問題であり、論理的で公正な手法に基づく投資戦略であるかです。誰のためのファンドか、ということです。ディストレストファンドであれば回収自体は必要ですが、単に強引な回収は意味をなしません。結果として1回だけの投資機会となる可能性が高いからです。望ましいのは追加融資やバリューアップを図りキャッシュフローを生み出し、銀行が融資可能なレベルまで再生した上で回収するようなファンドです。このようなファンドであれば、追加的な投資機会が増える可能性が高まり、結果として反復継続的な投資・リターン獲得が可能となります。これこそが社会的ニーズに沿った正しい取り組みといえます。

 3つ目は「技術的条件」です。やり方の問題であり、事実分析と経験に裏打ちされた投資戦術です。例えば今後増えてくるであろう船舶に関連するファンドは素人が簡単に手を出せる分野ではありません。海運企業に融資している銀行ですら融資ノウハウはあるにせよ、船舶売買の専門家ではありません。ここでは知識自体よりも業界ルールを熟知し業界内でのサイクルを経た長い経験がより重要となります(購入した船舶の買い手は誰がなり得るのか、どのように買い手にアクセスするのか、購入した船舶は傭船にまわせるのか、それとも鉄屑でしか売却できないのか等々)。ただし、自己の価値判断=好き=確信度と同時に、他人の基準のわかる冷静さのバランスが必要です。

 最後に、これらの基盤となる4つ目の条件があります。「経済的条件」です。生き方または経営の問題とも言えますが、安定的なサービス提供のためには必要な人的構成要件の維持が必要であり、業として継続するためには安定的な経営基盤、例えば年金基金のような良質で長期安定した顧客基盤が必要です。


 つまり、いい運用会とは、投資機会を見つけることができ、社会的ニーズに沿って正しく取組んでおり、基礎的な知識と経験があることが重要で、さらに長期間従事している現存の、安定的な経営の運用会社となりますが、とても少数と思われます。更には成功し大規模化することで条件が変化することなどもあり、継続的なモニターが必要です。そしてこれら諸条件の確認は、まさにいい運用会社を探すプロセスです。


 今年も最後となりました。1年間セミナーにご参加頂き感謝申し上げます。資産運用に対するより本質的な視点に触れて頂けたのではないかと思います。来年1月からまたセミナーが始まりますので、是非ご参加ください。
  
(文責:峯岸奈央、白木智雄)

  当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

  詳細レポートをご希望の方は、下記アドレスまでお気軽にお申し付けください。
  HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 運用会社を選定するための決め手とすべきなのは、どの要素でしょうか。決定的要素とお考えのものを一つだけお選びください。

<クリックして拡大>
1.過去の運用実績
2.運用戦略の合理性や、それを支える組織人材の質
3.窓口となる担当者
4.運用会社の知名度(規模、歴史等)
5.コンサルタント等の推薦
6.口コミ等の評判
7.その他

Q2 現実に、運用会社を選定するための決め手となっているのは、どの要素だとお感じでしょうか。決定的要素と見られるものを一つだけお選びください。


<クリックして拡大>
1.過去の運用実績
2.運用戦略の合理性や、それを支える組織人材の質
3.窓口となる担当者
4.運用会社の知名度(規模、歴史等)
5.コンサルタント等の推薦
6.口コミ等の評判
7.その他

Q3  一定の評価期間を経過した後で運用成績が悪いときに、以下のそれぞれの場合ごとに、どのような対応をとるべきだとお考えですか。決定的要素とお考えのものを一つだけお選びください。<br><b>A 運用方法・組織・人材に基本的変化が見られないとき。</b>


<クリックして拡大>
1.実績は実績なので、解約もしくは減額をする。
2.何もせずに様子をみる。
3.市場環境に照らした運用戦略の妥当性を再検証する。
4.運用が一貫している以上、将来への回復が見込めるので、むしろ積極的に増額する。
5.その他

<b>B 運運用方法・組織・人材などについて、積極的な改善の努力を しているとみられるとき。</b>


<クリックして拡大>
1.実績は実績なので、解約もしくは減額をする。
2.何もせずに様子をみる。
3.市場環境に照らした運用戦略の妥当性を再検証する。
4.運用が一貫している以上、将来への回復が見込めるので、むしろ積極的に増額する。
5.その他





セミナーレポートは以上になります。