2011/1/12開催 HC資産運用セミナーvol.037 セミナーレポート

HCセミナー
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

今回のセミナーには、総勢65名の方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。

《 セミナーのまとめ 》

平均的には収益を生んでいないという事実
過去25年間、配当を考慮したとしても、日本株式市場の平均的収益率は、ほぼゼロです。しかも、年毎の収益の振幅は、かなり大きなものがあります。振れ幅(リスク)ばかりが大きくて、収益がない。投資対象としての適格性すら、問題になりかねない状況です。

投資家の主体的関与があって始めて市場の効率性が保証される
良いものを買い、悪いものを売る、という投資家の積極的関与(真のアクティブ運用です)があってこそ、市場の効率性が保証されます。その限りでのみ、労せずして効率的に分散された投資を実現するというインデクス運用が意味をもつのです。まともなアクティブ運用が機能しないとき、インデクス運用は意味をもちません。

本来の事業投資としての株式投資
株式という「紙」を買っているのではありません。株式を発行している企業の事業に投資しているのです。事業の「平均」に投資するという発想よりも、良い事業を選んで投資するという発想のほうが、より常識的で、自然ではないでしょうか。

銘柄を厳選するほど、市場連動性は低下
銘柄を厳選すれば、市場連動性は低下します。逆にいって、銘柄を厳選しない限り、平均的に収益を生んでいないという状況からは、脱却できません。事業投資という深みでのアクティブ運用では、つまり徹底した事業分析を行うという前提のもとでは、そもそも、多数の銘柄を投資対象にできるはずもありません。

振幅が作り出す投資機会
振幅の下域では、そこら中に安くて良い企業が放置されるという、宝の山になりがちです。また、理屈上は、振幅そのものが投資機会になります。いわゆるヘッジファンド的な戦略の有効性、現金保有を認める運用など、自由な投資手法も検討しなくてはなりません。

高度に発達した市場
日本の株式市場は、流通市場としてみる限り、高度に発達した基盤に支えられた、多様な投資主体(持合の解消、海外投資家の大きな地位)の参加する市場です。多様な戦略の実現に関し、取引技術や取引費用の面での大きな制約はありません。

日本株という概念自体が意味を失っている
日本企業ではなくて、日本に上場しているグローバルに通用する企業が投資対象です。世界の中の日本、日本の中の世界が問題です。アジア(距離の優位からいって、特に中国でしょうね)の成長から大きな恩恵を受ける日本企業、海外から高く評価されている企業は、いくらもあります。

日本という概念自体にも見直す余地がある
人口減少は、ほぼ確定したことであり、不可避です。しかし、そのことが、直ちに日本経済の衰退を招くわけではありませんし、ましてや、日本企業の地位の低下を招くわけでもありません。日本には、規模ではなくて、質的な面での成長余力は十分にあると思われます。

時価総額が小さすぎる日本企業
大雑把にいうと、日本の場合、世界の基準を使うと、100社が大型株、200社が中型株、残りの全部が小型株です。グローバル株式の運用会社はたくさんあります。中小型株に投資する会社もありますが、主力は大型株です。グローバル株式運用の対象からは、ほとんどの日本企業が洩れてしまうのです。

カタリストの不在とバリューの罠
日本の株式市場の中に、どこかに価値が眠っているとしても、その眠った価値を起こすとしたら、何らかのきっかけが必要なのです。このきっかけのことを、英語では触媒(catalyst カタリスト)といいますが、日本には、このカタリト(経営革新や被買収など)がないとされてきました。結果として割安が割安のまま放置される、いわゆるバリューの罠(バリュートラップ value trap)が問題だとされてきたのです。

配当重視の投資戦略
割安のままでは、何がいけないのか。割安なものは配当利回りが高い場合が多いでしょう。高利回りを安定的に享受できるなら、それで十分なのではないか。割安の解消、即ち価格の上昇は、あくまでも結果的に発生することが期待されるものであって、そのことが目的ではないはずです。

いくらなんでも、確実に変革は進行する
カタリストを待ち望まない戦略は、結果として、カタリストを呼び込むのではないのか。そもそも、安定配当を継続できる会社は、良い会社です。良い会社は、適切な時期に適切な経営革新を行うはずなのではないか。企業の変革を促すような強い主張をもった投資、社会変革の視点に立脚した投資は、そのような自己変革に対して、建設的な助言として機能する、まさに変革の触媒(カタリスト)として機能するのではないか。

企業金融の高度化は不可避
株式と融資(プライベートな与信市場)に大きく依存する日本の資本市場構造が、株式市場の重石になっている可能性は否定できません。実物資産やプライベートエクイティを使った資金調達や、伝統融資に替わる(あるいは融資の多様化による)資金調達の方法が工夫されることで、株式市場の役割が変化する可能性は大きいと思われます。

買えないものに値段はない
「被買収」の意味を徹底的に考え直さなければなりません。価値があるから手に入れたいのです。価値がないものは、いかに割安でも買収されない(そもそも、悪かろう、安かろうで、割安とはいわない)。割高でも買収されるような状況こそが、真の買収です。しかし、買収できない企業の株価には、値は付かないかもしれません。買えるものだけが投資対象です。


次回、2011年 第2回HC資産運用セミナーは『「バリュー(割安)」運用の真の意味』です。

なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。