Income Research & Management 米国短期債券戦略公開ミーティング要旨

日時: 10月5日(月) 14時-16時
場所: HC 5階会議室
マネジャ: Stephan H. Weiss氏(Senior Vice President)
HC: 橋本、横山、吉澤

[会社情報]
・ 1987年設立の米ドル建投資適格債券運用に特化した独立系投資顧問。
・ 米国のボストンを拠点とする。
・ 2009年8月現在、AUMは約188億ドル。債券マネジャとしては、小ぶりだが、大きくなりすぎると市場規模の小さいセクタに投資できなくなることを懸念。敢えて資産規模の拡大は追求しない。現状は居心地の良い水準だが、現在の2-3倍のキャパシティはある。
・ 創設者のJohn Sommers氏と息子のJack Sommers氏を中心とするSommers家が65%の株式を保有。35%は14名の役職員が保有。今後、5年、10年かけて創業家の持分を51%まで引き下げ、役職員に幅広く株式を保有させる予定。
・ 役職員は約90名。投資プロフェッショナルは28名。設立以来、シニアメンバーの退職はない。役職員は同じフロアで業務をしており、常に情報を共有できる環境を整えている。
・ 顧客はほぼ米国の投資家で、企業年金、宗教団体、政府系機関、財団、大学など安定した投資家に幅広く分散されている。最も著名な投資家はBill & Melinda Gates財団(マイクロソフトのビル・ゲイツ氏の財団)。

[米国短期債券戦略情報]
・ 利息収入によるリターンの獲得と資産保全を目指す。
・ 金利やイールドカーブの形状変化など予測に基づく運用はしない。デュレーションは常にベンチマーク並みに保ち、イールドカーブやデュレーションのリスクは取らない。徹底したボトムアップによるポートフォリオ構築。
・ 主として社債や証券化商品に投資。リスク量は各セクタの配分比率を変更することで管理する。配分は相対価値に基づいて決定。週1回のシニアPMの会議で相対価値について議論する。
・ 割安に放置されがちなサブセクタに好んで投資する。
・ 社債の場合、バークレイズキャピタルクレジット指数のユニバースに含まれる640銘柄から政治リスク、格付リスク、流動性リスクの観点で半数まで絞り込む。絞り込まれた銘柄から好ましいストラクチャの銘柄を抽出して投資する。建設業、化学、自動車部品などの景気循環に極度に敏感な業種の社債には投資しない。大手の債券運用会社が投資できないような小さなサブセクタ(プッタブル債やステップアップ型変動金利債など)に好んで投資する。
・ 格付機関の格付は必ずしも正確というわけではないと考えており、あまり重視していない。例えば、ケーブルテレビ会社や鉄道会社は、しっかりとしたキャッシュフローを得られる業種でありながら借入比率が高い業種なのでBBB格が付与されることが多いが、昨今、健全性が不透明な銀行はA格が付与されている。格付が信用力を表しているのではなく、スプレッドが信用力を表しているのだと考えている。債務の返済余力の分析と見極めを重視する。
・ RMBSの場合、政府機関の保証付証券のみ保有する。この場合、裏付けのローンに政府保証が付いているのでローンがデフォルトしても元本は償還される。CMBSは劣後部分が30%以上ある銘柄に投資する。また、組成時期が2005年以前もしくは2006年前半である銘柄に投資する。2007年以降に発行されたものは裏付けのローンに劣悪なローンが含まれていることがあるので、投資はしない。キャッシュフローを分析し優先的にキャッシュフローが戻ってくる銘柄に投資する。ABSはクレジットカード債権もしくは自動車ローンが担保になっている証券に投資する。クレジットカード債権担保付証券であれば、Bank of AmericaやChase Bankのような大手銀行が発行したクレジットカードの債権、自動車ローン担保付証券であればトヨタやフォルクスワーゲンのような一流の会社の自動車購入向けローンが裏づけになっている証券に投資する。証券化商品に投資する場合には、トップトランチ部分にしか投資しない。
・ リスク管理はシニアPMの定めた配分比率、リスク量に適合しているかをチェックしている。またコンプライアンス部門と協働し、ガイドラインに適合しているかのチェックを行う。ポジションを変更する場合には、取引前後に2回ガイドラインのチェックを行う。
・ 9月末現在のポートフォリオは、平均利回り2.80%(OASは92bp)。BBB格の銘柄を8%程度保有しているが、平均格付はAA+。社債の保有のうち半分が銀行銘柄だが、イベントが起きても米国政府が救済に入らざるを得ないような巨大な銀行のみである。

[Q&A]
Q1: 組織のブレークダウンを教えてほしい。
A1: 役職員の合計は92名。投資プロフェッショナルは28名でうち3名がシニアPM。オペレーションが14名、コンプライアンス8名、ITが7名、顧客サービス(営業含む)が12名、顧客サービスと営業促進が15名、人事、財務、総務が8名。

Q2: 米国の失業率は上昇傾向にあるが、今後の社債市場についてどのように考えているか。
A2: 失業率はマクロの指標であり、社債市場に与えることはできないと考えている。但し、失業率が極端な投資行動を引き起こす場合はあり、社債が売られすぎたり買われすぎたりするときには、相対価値判断材料として活用する。社債市場は流動性プレミアムが剥げてきて、緩やかにスプレッドは縮小していくと考えている。

Q3: リスク管理項目のひとつにキーレートデュレーションとあるが、一般的なデュレーションとは違うのか。
A3: デュレーションには種類がある。一般的なデュレーションはマコーレーデュレーションもしくは修正デュレーションだろう。前者は単純に金利感応度もしくは投資金額の回収期間を表している。後者はそれに金利水準を加味したもの。アクティブなデュレーション戦略を取る場合にはこれらの管理は必要。例えば10年債に投資したとする。10年債の金利は5年金利や20年金利の水準に影響を少なからず受けた金利である。この他年限からの影響を加味したデュレーションの考え方がキーレートデュレーションである。年限が長くなればなるほど重要な意味をもつが、短期債戦略ではあまり意味はない。

Q4: 現在の低金利下において、一定の利回りの獲得が求められる場合、債券代替としてのファンドオブファンズ、長期債への投資、このような短期債券戦略はどれが優れていると考えるか。
A4: ファンドオブファンズはさまざまなリスクを組み合わせ、分散効果を享受しつつも、債券と同等のリターンを創出してきたが、問題は流動性にある。昨年、流動性が枯渇した中で複雑な運用戦略を組入れていたことが表面化してしまった。長期債は流動性があるが金利動向の影響を直接受けるため金利動向がパフォーマンスを決める。政府が大量の国債を発行しているため、今後金利は上昇すると考えている。それぞれに一長一短あり、一概には言いにくい。

以上


留意事項
弊社の投資先、もしくは投資候補として注目度の高いマネジャに関する公開ミーティングを通じたご理解を今後の資産運用にお役立ていただくこと、および弊社へのご理解を深めていただくことによる投資一任契約の締結の勧誘を目的としており、特定の金融商品の募集・勧誘を行うものではありません。