Colchis Capital Management, L.P.
Robert Conrads氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱
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Q1.Colchis Capitalはどのような投資哲学のもとで、どのように投資を行ってきたのでしょうか?

 Colchisは2006年の創業来15年間、経済構造の変化に先んじて様々な投資戦略を展開することで、先行き不透明な経済環境に対応してきました。2006年12月に運用を開始して以来今日まで、すべての戦略において投資家の皆様にリターンをお返ししてきました。
 Colchisの強みは、最新技術への速やかな適応、ビッグデータの解析力、独自のクレジットファンダメンタル分析モデル、そして、2006年以来培ってきた不動産の管理と投資の経験にあるものと信じています。我々が最も重視しているのはダウンサイドの抑制と元本の保全、そして、投資家の皆様と同じ目線で投資を行うことであり、投資家にとって何がベストな投資かを常に追求してきました。

Q2.投資のアイデアは、どのようにして見つけ、投資対象は環境に応じてどのように変遷してきたのでしょうか?

Q2.投資のアイデアは、どのようにして見つけ、投資対象は環境に応じてどのように変遷してきたのでしょうか?
 経済に歪みが生じる際には、その歪みがもたらす投資機会を「テーマ」と捉え、Colchisの強みを生かせる投資機会を探します。環境に応じて様々なテーマを設定してきました。
 現在は、米国の住宅取得に伴うブリッジローンに注目しています。一戸建て住宅の市場は2025年までに30%拡大すると言われていますが、住宅供給は、最大規模の人口層を誇るミレニアル世代の需要の増加予想に全く追いついていません。コロナウイルスの感染拡大により、都心部から離れた住居の需要はさらに拡大するものと思われます。

Q3.足元の投資機会についてご教示ください。コロナウイルス感染拡大の影響が広がる中で、どのようにして持続可能な投資を実現するのでしょうか。最も避けるべきリスクは何でしょうか。

 投資アイデアを生み出すため普段から様々な情報に触れていますが、その多くは無償の公開情報です。例えば、ニュースやリサーチレポートについては、John Burns Consulting、Attom Data、ClearCapital、Morgan Stanley、Deutsche Bank、Goldman Sachsなどを参照するほか、Federal Reserve、FEMAのような政府機関や、各地域の不動産エージェントのレポートなども参照します。色々な企業や業界関係者、投資家との会話からヒントを得ることも多いです。定性と定量の双方向から分析することで、産業構造やトレンドの変化を複合的に捉え、正しいアプローチで投資する努力をしています。
 どのカウンターパーティを通じて、どの産業・ローンに投資するのがベストであるかについては、投資チームが分析のうえ投資政策会議に付議します。承認後は、日次ベースでクレジット分析が行われ、想定していた「テーマ」が綻んでいないかを確認しながら、ポートフォリオへの組み入れを行っていきます。
 テレワークが進むに連れて、人々の関心は都心部のアパートから郊外の庭付き一軒家へとシフトしており、一戸建て住宅の市場の見通しは以前よりもさらに明るいものとなっています。私どもは、古くなった一軒家の修繕、電気・ガス・水道周りの改修に注目しており、どのような造りにするのが最も環境に優しいかについても色々と検討しています。住宅投資といっても、価値や賃料の上昇を狙うような投機色の強い投資は避け、長期にわたって安定的な賃料収入を得られるような住宅に絞って投資を行うことで、ボラティリティの抑制を図っています。

Q4.投資最高責任者(CIO)に就任しようと思ったのはなぜですか?

Q4.投資最高責任者(CIO)に就任しようと思ったのはなぜですか?
 まだヘッジファンド投資の経験が浅かった頃、いろいろなウェルスマネージャーと取引しましたが、投資家の利益よりも事業利益を優先し、投資領域を拡大して資金を集めることに執心している人が多いことに気づきました。Colchisを創業したのは、投資家利益を第一におきたかったからです。常に、自分の資産の過半を投資家のご資産とともに運用することにしています。この姿勢こそが、投資家と自身の資産の保全と成長を追求していく上でベストなアプローチであると信じています。

Q5.CIOとして、最も重視していることは何でしょうか?また、これから実現したいこと、これからもやらないと決めていることをご教示ください。

 顧客の資産運用を預かるフィデューシャリーであるということを、何よりも第一に位置付けており、Colchisにはこのカルチャーが浸透しています。Colchisの投資目的は、元本保全を第一に、ボラティリティを最小限に抑制しつつリターンを獲得していくことです。ダウンサイド抑制の手段があるニッチなクレジット戦略や不動産戦略は魅力が高く、競争優位を維持し続けるために、常に最新の技術を活用しています。ここ10年間は、消費者の利便性を増す環境に優しい戦略に注目し、クレジットインカム戦略として運用してきました。個人消費者の借入費用を削減するお手伝いをしつつ、投資家に安定的なリターンをお返ししてきました。現在注目している住宅取得用ブリッジローン戦略は、今後5-10年間不足すると見込まれている住宅供給を補うものです。
 現在設定準備中の戦略を2つ紹介致します:
- 住宅ブリッジローン戦略。中小不動産業者向けのローンで、中古住宅を購入・修繕する際の頭金として融資を実行するものです。Colchisは、これまでに7億ドル以上の投資を行い、累積デフォルト率は0.04%にとどまっています。
- 不動産インカム戦略。米国中西部を中心に、治安の良い地域の住宅を購入後、修繕や改修を行ったあとで賃貸し、安定的な賃料収入と長期的なキャピタルゲインを追求するものです。
 どちらの戦略も、Colchis独自開発のテクノロジーを駆使するもので、大規模データ、機械学習、AIに基づいて分析しますが、他にも既存のソフトやシステムを活用し、投資に最適な地域、物件、ローンの諸条件を決定します。
 質を犠牲にしたり、不必要なレバレッジ活用でリターンを追求することは決して行いません。

Q6.どのように資産保全を図りますか?

 Colchisは、経済環境に変化があれば、その都度、投資機会を見定め、リスク要因とリターンの源泉を明確にした上で投資アプローチを決定します。投資家の皆様と定期的に対話の機会を設け、開示可能な情報はすべて開示し、考えや運用状況を共有します。投資機会が変化し、リスクとリターンのバランスが釣り合わないと判断した際には、投資家の皆様に資金を一旦返還ののち、Colchisの強みを生かせる新たな投資戦略と適切な投資ストラクチャーを特定します。これまでの15年の間に、何度かこのようなことを行ってきました。
- 最初の転換期は2006年。サブプライムローンの過熱に気付き、残存年数の長いサブプライムローンの劣後部分をショートする戦略を設定。2009年に投資倍率5.7倍で償還しました。
- 2008-2009年には、満期の短い証券化商品のシニア債を割安に購入するファンドを設定。2011年に投資倍率1.7倍で償還しました。
- 2011年には、銀行規制強化で、銀行の個人向け融資が縮小されるなかでは、優良個人に対してローンを供与するオンライン業者からローンを取得するファンドを設定。金利が低下してきたことや、COVID-19の影響で消費者の弁済余力に強い負荷がかかることを鑑み、2020年3月に新規投資を停止し、現在投資家の皆様に資金をお返ししている最中です。

Q7.投資に関しておすすめの本があれば教えてください。

Q7.投資に関しておすすめの本があれば教えてください。
・「The Intelligent Investor(和名:賢明なる投資家)」を初めとする、ベンジャミン・グレアム氏による一連の作品はバリュー投資とリスクの抑制について示唆を与えてくれます。
・ナシーム・タレブ氏の「The Black Swan(和名:ブラック・スワン)」は、予測不可能な事象のリスクと分散の重要性について書かれています。
・ロン・ポール氏の「End the Fed(和名:ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ)」は、連邦準備銀行や中央銀行制度の有効性についての洞察を与えてくれます。
・マイケル・ルイス氏の「The Big Short(和名:世紀の空売り)」は、たったひとつの金融システムの綻びが、どれだけ深刻な影響を及ぼすのかを描いています。
・エリック・トポル氏による「Deep Medicine(和名:ディープメディスン)」では、機械学習やAIの利用についての影響と限界が記述されています。
・ロナルド・コーエン卿の「On Impact – Guide to the Impact Revolution」は、世界の潮流の変貌を捉えるために何が必要なのかを示しています。考え方や意思決定において、社会や環境へのインパクトがいかに重要か示唆があります。





インタビューは以上になります。

企業プロフィール

 Colchis Capitalは、米国カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするオルタナティブ運用会社で、最新のテクノロジーやビッグデータ解析、自社開発クレジット分析モデルなどフィンテックを駆使し、プライベートクレジット、不動産、ベンチャー投資を行っています。
 Colchisは創業来15年間、経済構造の変化に先んじて先行き不透明な経済環境に対応してきました。2006年12月に運用を開始して以来今日まで、すべての戦略において投資家の皆様にリターンをお返ししてきました。
 不動産については、2006年から投資実績があります。フィンテックを駆使した不動産のブリッジローン投資の先駆者として、今日までに7億ドル以上を投じ、損失率は0.04%に留まっています。Colchisでは、物件レベルのデータを収集後、機械学習によって決定木を構築し、高品質な投資対象を選択しています。

戦略

 現在は、満期が短く、定期的な元利弁済が見込まれる住宅ローンに注目しています。投資に適すると判断された複数のカウンターパーティを通じて、独自の資産選択モデルによって適格と判断された投資対象へ幅広くローンを供与し、ボラティリティを抑制しつつリターンの獲得を追求します。
 投資運用チームは、戸建て住宅の管理経験や地域の特性に関する情報をもとに、米国中のローンの組成や弁済状況に関するデータを独自の技術で分析し、ポートフォリオの最適化を行います。



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