Oaktree Capital Management
Nael Khatoun氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱
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Q1.貴社の投資哲学、会社の歴史および投資プロセスを教えてください。

 オークツリー・キャピタル・マネジメント(以下「オークツリー」)は、クレジット戦略に特化したグローバルオルタナティブ投資運用会社です。当社は1995年に設立され、現在は全世界の18都市に950人以上の従業員を抱えています。オークツリーは1998年にアジア市場に参入し、現在は東京、北京、香港、ソウル、シンガポール、上海、シドニーにオフィスを構え、60名以上の従業員がこの地域で成長する顧客基盤にサービスを提供しています。
 当社の強みは、経験豊富な投資の専門チーム、グローバルなプラットフォーム、一貫した投資哲学にあると考えております。当社の投資哲学は、リスクコントロールの重要性、一貫性、市場の非効率性に着目すること、得意分野に特化すること、そして、個別事象の分析を重視し、マーケットタイミングを計らないという6つの基本的な部分から成り立っています。当社は、様々な資本構造と地域を跨いで投資することによって培った専門性により、グローバルに分散された多様な戦略を運用することが可能です。
 私たちのチームであるEuropean Principal group(以下「EPG」)は、欧州における中堅企業への投資機会に注目し、ヨーロッパ・プライベート・デットとヨーロッパ・プリンシパルといった2つの戦略を通じて債権と株式への投資を行っています。両戦略とも、魅力的な事業ながらも資金調達手段が一時的に限定されており、“歪みが発生している”案件を独自に発掘して投資することにフォーカスしています。いずれの戦略でも、投資を行う際は常にリスク管理とダウンサイドリスクの最小化に重点を置いています。

Q2.今どこに投資機会を見出していますか。なぜ貴社の戦略に魅力があるのかを教えてください。

 私たちは、リスクに見合う以上の魅力的なリターンが期待できる、流動性が低く、競合の少ない相対取引案件へと投資することに注力しています。現在、ドイツのような国々では、大手銀行はバランスシートに残る不良債権やバーゼルⅢを始めとする資本規制といった制約から、融資が困難な状況が続いているため、多くの投資機会が存在します。さらには、EU離脱後の英国において政治的な不確実性が高まれば、こちらにも投資機会が出てくるかもしれません。
 私たちはEPG全体のリソースを活用することで、投資銀行による仲介やオークションに頼ることなく、独自で案件を発掘することができます。私たちの知る限りでは、私たちは、欧州のミドルマーケット市場において全ての投資対象地域に現地拠点を持ち、独自で案件を実行することのできる唯一のチームです。投資チームでは法務や実務においてチーム専任の経験豊富なプロフェッショナルを有しています。今日のように資金調達が歪んでいる欧州クレジット市場においては、私たちと同水準の専門性や案件発掘手段を持つ会社は限られているのではないかと考えています。私たちは、コーポレート・ファイナンスとプライベート・エクイティにおける能力を、不良債権、破産処理/リストラクチャリング、ターンアラウンド実務における専門性と融合させることで、歪みが生じている魅力的な投資案件の発掘、評価、実行を行っています。
 ダウンサイドリスクの軽減は、オークツリーの投資哲学とビジネスモデルの鍵です。ポートフォリオを守るための重要な要素は、強力なガバナンス条項とネガティブ・コントロール(否決権の行使)を明確に規定した手段で資本提供を行うことです。更に、チームが複数の市場サイクルを通じた投資の経験を持っていることも強みです。私たちはファンドを通じて、欧州の各主要地域すべてにおいて地域特有の資金ニーズに応じてきましたし、ほぼ全ての市場においてリストラクチャリングを経験しています。したがって、投資先が不振に陥った場合でも、不良債権の処理や債務整理、必要があれば会社運営の改善までも実行することが可能です。

Q3.なぜポートフォリオマネージャーになろうと思われたのでしょうか。

 ポートフォリオマネージャーという仕事は業種、地域、法制度、投資の手法など、様々な視点からものを考えるきっかけを与えてくれます。私たちが多くの時間を費やすのは、私たちが解決策を提供できなければ、プロジェクトの完成、借り換えや他の株主からの株式の買取りなどが出来ないような案件です。数多くの興味深い事業に出会い、人々のために問題を解決することは、大きなやりがいを感じます。

Q4.ポートフォリオマネージャーとしての信念は何ですか。どのような目標に向かって努力していますか。そして、絶対にしない事は何ですか。

 基本的に私の仕事は、予測されるリスクを上回る潜在的なリターンが得られる魅力的な投資先を見つけることです。そのためには、経済動向や規制変更により、放置されたり、ゆがみが生じている市場へとアクセスする能力と知識を持った人材でチームを組成することが重要です。さらに、そういった借り手の中から、最も優れた借り手を探し出さなければなりません。そのような関係と経験を築くには長い時間がかかりますが、だからこそ私たちのチームが15年間このマーケットで投資をしてきた経験が非常に重要であると考えています。
 ポートフォリオマネージャーとして絶対にやらないことがあります。それは、ダウンサイドへの耐性を犠牲にして高い利回りを狙うことです。例えば、私たちは質の高い担保を有した投資しか行いません。また、金融工学だけでリターンを生み出すような投資も行いません。当社の投資はすべて、基本的にボトムアップ型であり、借り手と資産の特徴と特性に基づいています。

Q5.顧客の資産を守るために最も大切なことはなんでしょうか。

 投資家の資産を守るためには以下の4つのことが重要だと考えていますが、すべてが重要なため、どれが最重要かといった優先順位はつけられません。
・資本構造の適切な位置で投資を行うこと。担保となっている資産が魅力的で価格の下落リスクが限定的であると思われる場合、第一抵当権を有する貸し手に劣後する負債に投資するのが最適なこともあります。例えば、都市中心部でのオフィス開発で物件価格がしばらく上昇していない場合は、底値圏で投資することとなるので、資産の価値は下落するより、上昇する可能性が高いということになります。
・すべての投資でプライベート・エクイティ投資と同等のデュー・デリジェンスを行うこと。これは、貸し付け対象の全ての資産や企業を視察すること、事業及び地域を理解すること、債務者のビジネスプランを熟知すること、投資の成功および失敗を引き起こすトリガーを十分に理解し、万が一失敗した場合も、投資元本をどのように回収するかを計画すること、を意味します。このように私たちが行うデュー・デリジェンスは極めて徹底的かつ包括的です。
・案件のストラクチャリング、ドキュメンテーション、執行までのすべてを、リストラクチャリングを専門とするチーム専任の弁護士と共に、すべて社内で管理すること。その結果、投資したローンに不測の事態が起こった場合でも、追加的なリスク緩和措置を導入する術を理解しています。
・融資先状況を自分自身でモニタリングすること。定期報告によって借り手との密接な関係を維持します。案件によっては借り手の取締役会にも出席します。事業の計画対比の進捗における変化に早めに察知できるため、何かがうまくいかなくなった時に驚くという事態を最小限に抑えられます。

Q6.投資に関するお薦めの本を紹介してください。それを紹介した理由をも述べてください。

Q6.投資に関するお薦めの本を紹介してください。それを紹介した理由をも述べてください。
 オークツリーの共同会長であり共同創業者であるハワード・マークスは、金融に関する優れた著書を複数執筆しております。私が最も気に入っているのは、「The Most Important Thing Illuminated: Uncommon Sense for the Thoughtful Investor(邦題:投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識)」です。非常に大切な教訓と、オークツリーの投資哲学を含んでいるように思います。
 Niall Fergusonが書いた「The Ascent of Money(邦題:マネーの進化史)」もお勧めで、ちょっと斬新な金融史です。よく書けていて、面白いと思います。
 2008-2009に発生した世界的金融危機の直後、Roger Bootleが書いた「The Trouble with Markets: Saving Capitalism from Itself」は歴史的な観点から金融危機を巧みに説明しており、とても面白いと思います。

Q7.主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

 当然の事ですが、「Financial Times」は毎日読んでいます。Financial News (fnlondon.com)は金融業界で働く人々にフォーカスした良好な情報源です。毎四半期、Deloitteが出版するAlternative Lender Deal Trackerはチームで共有していまして、ディレクトレンディング市場の動向を包括的に理解するには便利です。





インタビューは以上になります。

企業プロフィール

 Oaktree Capital Managementはクレジット戦略に強みを持つ世界有数のオルタナティブ運用会社です。会社は1980年代半ばからハイイールド債券、転換社債、不良債権、不動産、コントロール投資、上場株式へと投資を共に行ってきたチームメンバーにより、1995年に設立されました。当社の強みは運用チームの専門性、グローバルな運用基盤および、一貫した運用哲学です。リスクコントロールの重要性、一貫性、市場の非効率性に着目すること、得意分野に特化すること、個別事象の分析を重視し、マーケットタイミングを計らないこと、という6つの投資哲学は、顧客公平性、協調的文化、規律性のある事業規模の拡大という私たちの経営理念達成の礎となっています。

戦略

 当戦略は銀行からの資金調達が困難な欧州の中堅企業に資金調達のソリューションを提供することにフォーカスしています。投資は主にシニア・デットまたはユニトランシェの形で行われますが、第二抵当権の形で融資を行う場合もあります。投資のほぼすべては実物資産で担保されており、PEスポンサーが所有する企業への融資は行わず、独自で案件の発掘を行います。



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