株式会社アドバンテッジ パートナーズ
笹沼 泰助氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱ photographs:佐藤亘
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • mixiチェック

Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。

Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。
 アドバンテッジパートナーズは以下の投資理念を掲げています。
 「我々アドバンテッジパートナーズは、投資を実行した企業を当ファンドから離れた後も、競争力ある企業として発展し得る企業へと育成させていただきます。我々は単にファンドの出資者に経済的な価値を提供するにとどまらず、当該企業の他の株主、従業員、家族、取引先、金融機関とすべての関係者がファンドの投資を通して、あまねく経済的な価値を享受できるよう、投資実行のプロセス、あるいは投資後の経営プロセスをサポートします」
 この理念は、従業員と共有することはもちろん、投資先企業の経営者とも共有しています。我々が、どういう想いで投資に臨むかを宣言することは非常に重要だと考えており、投資の候補となる企業を初めて訪ねた時、私は必ずその経営者の前で、この理念を朗読することにしております。
 投資を実行する時には、原則的に株式の過半数の取得を目的とし、その企業の中に入って深く経営にかかわり、企業価値の向上を図ります。そして、次なる成長のためにその企業を上場したり、別の株主に保有株式を売却したりすることにより、経済的価値創造を実現することが基本的な投資スタイルです。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社プライベート・エクイティ戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社プライベート・エクイティ戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。
 我々の投資先企業と上場企業全体の利益の変化を見ると、我々が投資した企業の利益の伸び方が上場企業全体の利益の伸びを上回っています。上場企業とプライベート・エクイティ・ファンドが投資した企業は何が違うのか。私は「コーポレートガバナンスの徹底度合いが違う」と結論づけています。アドバンテッジパートナーズは、投資先企業に対して、従来の株主が果たしていたガバナンス機能に加えて、内部領域では理念・目標の再構築、戦略立案支援、財務政策支援、組織・オペレ―ションの改善支援といったことに対応しますし、社会的領域では、メディアコミュニケーション支援、SNS対応助言、法律・行政支援などにも踏み込みます。
 私自身もコンサルティング会社出身ですが、アドバンテッジパートナーズのコアメンバーは、コンサルティング会社の出身が多く、その他、金融機関の出身者、弁護士、会計士など企業経営に強いメンバーで構成しており、その豊富な経験を活かして、投資先企業のコーポレートガバナンスを徹底することで、それが業績に表れ、ひいては企業価値の向上につながると考えています。
 アドバンテッジパートナーズが、投資対象とするのは、主に企業価値30億円から300憶円ほどの中堅中小企業で、これまでに投資を行った業種は、食品、消費財、小売、製造、卸売、IT、メディア・エンターテインメント、ヘルスケア、通信、金融など多岐に渡ります。すでに一定規模の売上高やキャッシュフローを得ている企業に対して、さらなる成長を遂げるために投資を行うケースや、経営不振の企業の再建を担う「再生投資」を担うこともあります。近年では、大企業の子会社や事業部を別組織として独立させるための投資や、後継者がいないオーナー企業などに投資するケースが増えています。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。
 アドバンテッジパートナーズは、私と米国人のリチャード・フォルソム(共同代表パートナー)の2人で1992年に創業しました。創業後、いくつかのビジネスを手掛けた後の1997年に最初のファンドを30億円で立ち上げましたが、このファンドは日本で第一号のプライベート・エクイティ・ファンドと言われています。当時、プライベートエクイティ、MBO、LBO、その他の関連する概念や用語自体が、まったく知られておらず、ファンドレイズ自体から案件発掘に至るまで、大変苦労した記憶があります。しかし、日本の従来型のメインバンク制度がそのあり様を変化させていく中で、日本においてもプライベートエクイティのようなリスクキャピタルの必要性が必ず高まってくるはず、と信じておりました。それを具現化し、高付加価値型の新しい金融市場を構築して行きたい、という思いでこの事業を立ち上げました。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
 アドバンテッジパートナーズには「アドバンテッジウェイ(The Advantage Way)」という基本理念があります。
 「アドバンテッジウェイ」のコアステートメントは「アドバンテッジパートナーズグループは、常に新しい市場を創造するか、既存市場を革新的に再定義する。我々は各市場において必ずリーダーシップを獲得し、それにより最大化される経済的付加価値を、社会、協力者、従業員と分かち合う」というものです。さらにこれをサポートするサブの理念として、「顧客への献身」、「主体性やスピードをもって取り組むこと」、「最高品質の仕事をすること」、「公平な組織であることや協力者への敬意と感謝を持つこと」の4つを語ったステートメントが定められています。
 この理念は、会社設立から数年後のある日、ひとりの社員による協力会社の方への振る舞いを見て、私やリチャードの価値観が共有されていないことに危機感を覚えたことが切っ掛けで作成したもので、今にいたるまで一言一句変更していません。この理念を社員の皆さんに発表した直後から、お互いに対する敬意のようなものが芽生え、組織の一体感が高まったことを鮮明に覚えています。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。
 アドバンテッジパートナーズがこれまでに投資した60件のうち40件は既に株式を売却済みです。残念ながら、損失を出した案件もありますが、それを含めても全体として投資倍率は2倍を超えています。リターンの源泉の多くを占めるのは収益の成長で、我々が責任株主として、経営陣、従業員といっしょに様々な施策に取り組んだ結果、利益を伸ばすことができ、それまで停滞していた企業を成長局面に転じさせることができたと考えられます。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。
 既に古典の領域に入っていますが、マイケルポーターの「競争の戦略」と「競争優位の戦略」の二冊をお奨めします。これはいわゆる金融投資に関する書籍ではありませんが、企業を取りまく環境と業界構造を理解し、どのように企業の運営形態を設計しその運営を管理していくのかを、産業経済学の観点から説いた名著と思います。私は、常に投資意思決定上の、あるいは投資先を変革する際の諸問題に直面した時、この2冊を紐解くようにしています。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。
 毎日の情報収集では、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞の国内全国紙、外字メディアは、the Financial Times、the Wall Street Journalをチェックしています。
 雑誌では、日経ビジネス、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンド、日経ヴェリタスを基本に、金融関連に留まらず、幅広い経済ニュースの情報収集に努めています。オンラインでは、マージャ―マーケットやAVCJニュースを見ながら、M&A関連の情報に触れるようにしています。





インタビューは以上になります。

企業プロフィール

 アドバンテッジパートナーズは1992年に創業し、1997年に日本初となるバイアウトファンド設立に携わって以来、一貫してプライベートエクイティ投資事業に従事し、事業の発展に努めております。2000年に2号ファンド、2003年に3号ファンド、2007年に4号ファンド、2013年に4号-Sファンド、2017年に5号ファンドを設立しました。全ファンドを通じ投資された案件数は60件以上に上り、様々な業種に跨り、総額約3,500億円の投資を実行して参りました。

リスク・手数料などの重要事項に関するご説明