Orbis Investment Management Limited
Brett Moshal氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱ /写真提供:Orbis Investment Management
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Q1.御社の投資哲学と、どのように運用を行っているか教えてください。

Q1.御社の投資哲学と、どのように運用を行っているか教えてください。
 弊社の投資哲学は、我々が価値があると考える株式を大きなディスカウントにて割安に取得する、ということです。私が特に好むのは、ダウンサイドがアップサイドよりはるかに少ない-典型的には大きな安全余裕率がある場合ですが-非対称な投資機会です。もちろん、他の全ての人も株価が倍になると思っていたら、株価が割安になるはずはありません。そのため私は、低く評価されている企業を見つけやすい、不振の分野や株式を好みます。我々が通常探すのは、市場の理解では永続的な問題を抱えていると思われているのに対し、我々がその問題が一時的な事象であると考えることができる、経営状況の良い企業です。ほとんどの場合、市場での一般的な見方は正しいのですが、それでも十分な数の石をひっくり返していけば、いつかは隠れている宝石を見つけることができると我々は信じています。非常に魅力的な投資アイディアを見つけた時、その企業のファンダメンタルズについて徹底的な調査を行い、我々の投資テーマに確信を得るべく努めます。その株式が弊社が運用するお客様のポートフォリオに組み込むだけの十分な魅力がある場合、我々は我慢強く、長期的な投資を行う覚悟があります。我々の分析が正しかったとしても、投資テーマが実現し、株価が我々が評価するところまで到達するには数年かかることもあります。

Q2.御社のチーム構成について教えてください。

Q2.御社のチーム構成について教えてください。
 私は6人の株式アナリストを擁する日本株の調査チームを率いています。我々はロンドンに拠点を置いておりますが、それは日本株の調査には当然の選択であるとは見えないかもしれません。しかし、過去にも弊社は東京に株式調査拠点を置いたことはなく、またそれが我々がお客様に大きなアウトパフォーマンスを提供することの妨げとなったことはありません。どちらかといえば、我々はロンドンに拠点を置くことが強みであると考えています。市場のノイズから遮断されますし、またロンドンは日本企業の経営陣へのアクセスが非常に良い場所なのです。日本国内では、企業の社長には他にやらなくてはならない仕事が多く、投資家と一対一で時間を過ごすことをあまり喜ばないと思います。しかし彼らがロンドンに訪問される時は、投資家に会うことこそがまさにその訪問の主目的であり、ヨーロッパにおける最大の日本株のアクティブ・マネージャーのひとつである我々と喜んで時間を過ごしてくれます。ただ、それでも我々はロンドンに経営陣が訪問することのない日本企業とのミーティングのため、日本を訪問することに多くの時間を割いています。我々が保有しているポートフォリオの組入銘柄は約30と、非常に少数であるため、株主名簿の上位になりやすい傾向にあり、それが企業経営陣への門戸を開く助けとなっています。
 オービスでは、株式アナリストは各地域あるいはグローバルセクターに特化する小規模の調査チームの「マトリックス」の中で業務を行っています。多くの株式に対して、我々は日本株調査チームのローカル・ゼネラリストと、グローバルセクター調査チームからのセクター・スペシャリストの両方の視点を活用することが可能となっています。このマトリックス構造は、一例として、日本における唯一の大きな石油および天然ガス関連企業である国際石油開発帝石のような企業に特に有効です。我々の調査プロセスにおいて重要なステップは、博識なアナリスト達が株式の投資テーマを精査するミーティングです。国際石油開発帝石のような銘柄では、弊社のエネルギー・セクタースペシャリストがミーティングに出席し、投資テーマの検証を行うのに役立つ豊富な業界知識を提供します。これにより、我々はより大きな確信を持って投資を行うことができるのです。

Q3.今はどこに投資機会を見出だしていらっしゃいますか?

Q3.今はどこに投資機会を見出だしていらっしゃいますか?
 弊社では、本源的価値に対するディスカウントは様々な形で起こりうる、と考えています。そのため、伝統的な投資スタイルのカテゴリーである「グロース」や「バリュー」では我々の投資アプローチをうまく捉えられない傾向があります。我々は、「グロース」と「バリュー」どちらにも投資を行い、その割合は市場が提供する投資機会によって決まります。現状では、我々のポートフォリオにはバリュー銘柄の方が多く組み入れられています。グロース銘柄は過去に取引されていたよりも相対的に高くなっているため、この分野における新しい投資アイディアは少なくなっています。過去数年間における弊社の最大の勝ち銘柄はオービック、パーク24、およびエイチ・アイ・エスなどのグロース銘柄であり、我々は、弊社の評価する本源的価値に対して十分なディスカウントがなくなったと考え、これら銘柄を売却しました。
 現在我々が選好しているバリュー銘柄の良い例としては、総合商社の三菱商事や住友商事でしょう。住友商事は市場において非常に低く評価されていると考えています。住友商事は昨年、多数の投資案件で巨額の減損処理を行い、市場を驚かせました。三菱商事は住友商事に比べ少し高いですが、まだ割安だと我々は見ています。総合商社への投資にあたっては複雑な会計が問題になり得ますが、何に対してお金を支払うのかということと、それにより何を得ることができるのかを比較する必要があります。お客様とのミーティングの中で、我々は日本の食品および製薬会社が株価収益率(PER)40~100倍で取引され、株主資本収益率(ROE)が5~10%であるチャートを見せ、その後住友商事と三菱商事がPER約10倍で簿価よりも低く取引されている一方、ROEが約10%であるという事実をお見せします。彼らの会計は必ずしも分かりやすいものではありませんが、それを理由にそれよりも10倍も高価な薬品会社を購入しようと考えるでしょうか?我々はそうは考えません。我々は、お客様の資金を本源的価値に比べ割安に取引されている株式に投資します。

Q4.お客様の資産を保全する最善策とは何でしょうか?

Q4.お客様の資産を保全する最善策とは何でしょうか?
 我々は、「リスク」を、短期的な株価の変動あるいはベンチマークに対するアンダーパフォーマンスではなく、「投資資金の恒久的な喪失」と定義しています。多くの場合、投資資金の恒久的喪失は株式を割高に取得したことによって起こり、それは当然に長期的なリターンに影響を及ぼします。先程申し上げたように、我々は過小評価されている企業に投資するよう努めており、それが損失リスクに対する第一線の防御ラインとなっていると考えています。
 しかし、このバリュー重視の手法においては、「バリューの罠」すなわち割安に見えても株主に良いリターンを生み出すだけのファンダメンタルズの強さがない企業に用心しなければなりません。このような場合、個々の案件ごとに個別に対応します。その企業は投下資本に対して十分な利益を生み出しているか?企業のバランスシートは適切か?増資を行うことで株式価値を希薄化しようとしているか?「バリューの罠」の誤謬を回避するため、我々は企業の長期の業績を綿密に精査し、経営陣を評価しています。

Q5.投資家としての信念をお聞かせください。しないと決めていらっしゃることはありますか?また、どのような目標を達成されようとしているのでしょうか?

Q5.投資家としての信念をお聞かせください。しないと決めていらっしゃることはありますか?また、どのような目標を達成されようとしているのでしょうか?
 何よりもまず重要なことは、株式は本源的価値に比べて大きく割安でないと取引しないということです。例を挙げますと、ファーストリテイリング(ユニクロ)は素晴らしい会社ですが、投資するにはPER40倍という大きな金額を支払わなければなりません。全ての投資はリスクを伴いますが、我々が絶対にしたくないのは、割高で投資を行うことです。
 私はアナリスト達に、その銘柄を好む理由を書いた長いリストはいらない、2つか3つの理由で十分だと話しています。理想の銘柄に対しては、全てのチェック項目をクリアしようと思うかもしれませんが、実際にはそんな銘柄は存在しません。その代わり、全ての要因について熟考し、確信を得られた銘柄だけに投資しなければなりません。
 確信は重要です。市場を打ち負かそうとするのなら、市場と違うことをしなければならず、それは時には非常に愚かに見えることもあるからです。確信や正しいインセンティブがなければ、短期的なアンダーパフォーマンスの期間を経て、有望な長期投資を堅持し続けることは困難です。弊社の調査プロセスは、アナリスト達が確信を持つことを支援できるようデザインされています。また、弊社の組織構成は、お客様に対してベストな行動をとることで我々にインセンティブを与えるよう作られています。弊社のアナリスト達は主として彼らが推奨する株式のパフォーマンスに基づいて報酬が決定されますし、会社レベルでは、弊社の全ての運用報酬体系は運用パフォーマンスに基づいています。
 究極的な目標として、我々はお客様に対して長期での優れた超過収益を提供するよう努めています。お客様に満足頂くことができれば、我々も満足のいく成果を挙げることができ、弊社はお客様を犠牲にして我々が利益を得ることを許さないことを確保する組織構造を有しています。そして我々は、まさにそれがあるべき姿であると信じています。






インタビューは以上になります。



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