ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番 世界トップ1%の資産防衛

ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番 世界トップ1%の資産防衛

著者 ブルック・ハリントン
出版社 みすず書房
発行日 2018/2/16
原題:Capital without borders : wealth managers and the one percent
 ウェルス・マネジャーとは、法律や金融の専門知識を駆使して顧客の資産を守る専門職です。原点は中世の封建制度にあり、彼らの行動を律するのはフィデューシャリー・デューティーです。
 本書では、秘匿性が高く金融業としては特異な立場にあるウェルス・マネジャーの仕事、経済的不平等に対して彼らが与える影響について、当事者達への取材をもとに考察されています。

 印象的なのは、彼らと顧客との関係性です。完全なサービスを享受するためには、顧客はウェルス・マネジャーにすべての情報を曝け出す必要があります。関係初期の段階では、その人物が信頼に足る人物であるかのテストとして、意図的にとんでもない要求(どこにあるかわからないブレスレットを探すよう命じられるなど)をされることもあるそうです。ただし、その無理難題を乗り越えたとき、顧客と彼らは長期の堅い信頼関係で結ばれます。
 この個人的な関係性という点に、秘密は限られた人の間で共有されるから秘密で、ウェルス・マネジメントに限らず信頼関係の構築においては、組織の担当者としてでは及ばず、さらに踏み込んだ一個人として対峙して初めて成立するものだと感じました。

 顧客の資産を「守る」という特異な金融の視点から、改めて基本に立ち返った気づきが得られるのではないかと思います。金融に携わるすべての人におすすめです。

この本を紹介した人

杉本 理華

HCアセットマネジメント株式会社

2015年にHCアセットマネジメント株式会社に新卒で入社。主として個人金融に関わる業務に従事。中央大学商学部卒業。