芸術起業論

芸術起業論

著者 村上隆
出版社 幻冬舎
発行日 2006/06
 これは、アーティストの自己そのものをぶつけた長編散文詩であり、創造活動の社会的関連性を歴史的文脈で深く鋭く考え抜いた成果として、ほとんど哲学書であり、徹底したマーケット分析に基づく起業理論として、優れたビジネス書です。
 村上隆氏が、自己のアートを語るに、『芸術起業論』というタイトルをつけたのには、深い意味があるはずです。アートでお金を儲ける、というような浅薄な意味で捉える向きもあるようですが、とんでもない誤解です。アートの存在形式そのものが、ビジネスの世界の起業の本質なのです。起業がアートなのです。
既存のマーケットに認められる新しさ、村上隆氏の表現を借りれば、「新しいゲームの提案」、「歴史の新解釈」、「確信犯的ルール破り」の要素がなければ、起業は成功しません。起業の成功にとって、「社会の構造変化を巧みに捉えた確かな事業構想」が必要なのは当然ですが、その具体的内容について、村上隆氏の提起する三要素を明らかにしていくことは、非常に有益であろうかと思います。

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この本を紹介した人

森本 紀行

HCアセットマネジメント株式会社代表取締役社長

東京大学文学部哲学科卒業。ファンドマネジャーとして三井生命(現大樹生命)の年金資産運用業務を経験したのち、1990年1月ワイアット(現ウィリス・タワーズワトソン)に入社。日本初の事業として、企業年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。年金資産運用の自由化の中で、新しい投資のアイディアを次々に導入して、業容を拡大する。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資のタレントを発掘して運用委託するという、全く新しいタイプの資産運用事業を始める。