2016年12月20日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.108『新しい資産選択と配分の理論』セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト



 資産配分は投資の基本とされているが、これが有効であるためには、まず分類がきちんと為されていなければならない。分類の基準を決めて分類したうえで選択し、配分する。分類の基準は、投資対象の選択の都合に応じて決めれば良い。分類とその適切な見直しは、運用を本職にする者にとって重要なノウハウである。
 
 四資産分類は、株式と債券という軸、国内と国外という軸を適用してできた分類だが、グローバル化の時代においては国籍という軸自体がすでに無意味になっている。四資産分類は四資産の全てに投資することを前提としており、投資対象の選択を念頭においた分類にはなっていない。また、この分類に属しないものをオルタナティブとして便宜的に一纏めにする、合理的根拠を欠いた分類が現実に行われている。
 
 いま、シンプルな資本構成の外側のストラクチャによる資金調達が、かなり増えている。例えば航空会社のB/Sは限りなくゼロに向かって縮んでいくはずだが、その外側で航空機という独立したアセットがある。これによって企業の負債やエクイティとは独立に、実物資産をまとめたファンドの負債やエクイティといった区分ができる。必需性を軸にキャッシュフローの源泉を厳選すると、国籍分類よりも産業分類のほうが遥かに意味を持つ。高度な運用に必要なことは、この資産分類を定期的に、徹底的に、見直し続けていくことである。
 
 インカムを生まない資産を、資産とは呼べない。例えば土地は、それ自体ではインカムを生まない。土地はインカムを生む上物を取得すると付いてくるものだ。上物のビルは、そのテナントが埋まってさえいれば良く、特定の業種がテナントに入らないとダメとか、特定企業が退去したら困るということはない。ビルのインカムの源泉は、特定のキャッシュフローに結び付いた不安定なものではない。つまり我々は土地そのものよりも、インカムを生むように工夫されたものを買わなければいけない。
 
 予想や予測に依存して運用するのは博打であり、フィデューシャリー違反である。普通はリスクを避けたいと思えば、キャッシュフローが途切れない資産を買いたくなるものだ。そう考えると、投資すべきは、不動産が生む安定的なキャッシュフローであって、不動産そのものではない。船を例にとれば、買うべきは用船契約の付いた船であって、短期チャーターではない。用船に回らない船はただのスクラップであり、投資する意味はない。
 エネルギーを例に挙げれば、キャッシュを生むのは電気の発電ではなく、配電したとき。もし発電事業に投資すると、初期費用がとてつもなく巨額になり、送電事業は公共性が高すぎる。投資すべきは配電事業である。こうした産業連関を見て投資することこそ、本当の意味でのリスク管理といえる。投資するときは、まずは事業性に注目すべきで、株とか債券といった資本構成から先に考えるのはおかしいのではないか。
 
 グローバルREITへの投資は間違った選択である。なぜなら世界各国の不動産サイクルは同時には動かず、其々に異なっているはずだからだ。あるサイクルでは株は買えないからデッドにしようという状況があるはずで、本来は、そうしたサイクルのズレが投資機会を生む。ところがグローバルREITは、どの状況にあっても株を買うので、良いものと悪いものを抱き合わせで買っているのと同じだ。
 
 運用の現場では、運用と言うよりも単なる数字合わせになっている例が幾つもある。こうした方向に流れないようにルールを作ってもダメで、プリンシプルの醸成こそが重要なのである。同時に、金融庁の森長官主導のもとで高度に変化する金融を担う人材を、短い期間で育てることも急務とされる。



以上

(文責:石田)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。






■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. 「国内債券・外国債券・国内株式・外国株式」という四資産分類は、次のどちらの歴史的経緯から生まれたとお考えでしょうか。どちらか近いほうをお選びください。

<クリックで拡大>
1.まず、債券と株式に二分割し、次いで、それぞれを国内と外国に分けた。
2.まず、国内と外国に二分割し、次いで、それぞれを債券と株式に分けた。

Q2. 「国内債券・外国債券・国内株式・外国株式」という四資産分類は、次のどちらの理論的順序で行われるべきお考えでしょうか。どちらか近いほうをお選びください。


<クリックで拡大>
1.まず、債券と株式に二分割し、次いで、それぞれを国内と外国に分ける。
2.まず、国内と外国に二分割し、次いで、それぞれを債券と株式に分ける。

Q3. 仮にオルタナティブというような自由な枠を設けずに、全ての資産を「債券・外国債券・株式・外国株式」という四資産分類に振り分けるとしたら、例えば、国内株式のロングショート戦略は、どう分類されるでしょうか。どちらか近いほうをお選びください。


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1.債券代替として、国内債券。
2.株式には違いないので、国内株式。

Q4. 同様に、為替をヘッジした外国債券は、どう分類されるでしょうか。どちらか近いほうをお選びください。


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1.債券代替として、国内債券。
2.外国債券には違いないので、外国債券。

Q5. 長期的資産配分の長期とは、どういう意味でしょうか。どちらか近いほうをお選びください。


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1.一度決めた資産配分は長期間変えない(短期的には変えないので、結果的に不変)。
2.長期の視点で変えるべきときは変える(短期的に変える意図はなくとも、結果的に変動)。