2016年8月23日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.104『株式投資の哲学と戦略』セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト



株式投資のリスク
リスクアペタイトフレームワークの考え方に沿って言えば、株式投資における本源的リスクは投資先企業の事業価値の変動であり、株価の変動は付随的リスクに過ぎない。管理すべきはこの付随リスクである。

株式の価値
株式の価値は「議決権」「配当の受取権」「精算時の残余財産分配の受取権」という極めて弱い権利によって構成されている。同じ調達資金でも、返済順位の上位にあり権利が守られているローンや社債等と、最下位である株式では安全性が異なる。そのため、株式投資をする際は「最下位であっても魅力的」と思えるほどの要素がなければならない。

投資と資本構成
資本構成比率が変わらないとき、株式価値が上がるためには、事業価値が上がらなければならない。そのため株式投資では、事業価値の算定が重要になってくる。
事業価値とは、事業によって生まれるネットキャッシュフローの量のことであり、債権者や株主への分配はこの事業キャッシュフローから分配の地位に従って行われる。よって投資の際は、キャッシュフロー源泉を厳選(A社かB社か)した上で、分配の地位を選択する(A社株かA社債か)という観点から投資対象を決定すべきである。

株価と事業価値
株価とは結果論の集積であり、議論の対象として意味を持たない。事業価値=事業キャッシュフローこそが投資対象としての株式の本源的価値であるから、事業性の評価により適正価格の算定をすることが重要であり、市場価格と照らし合わせて価値を検証するために必要である。
割安(バリュー)だと思った銘柄に対して、なぜ安いのか(悪いから安い訳でないことの判断)、本当の価値はいくら(本源的価値の測定)なのか、どういう条件で価格が戻るのか(カタリストの想定)という点が実際の投資運用で判断すべき事項である。

規律ある運用判断
市場において売買が成立するのは買い手と売り手が存在するためであるから、買うときは売り手の視点、売るときは買い手の視点を持つべきである。
売買規律が重要。規律を重視すると、必ず半分が割安などということはなく、買いの対象が無くなることも起こりうる。
運用のノウハウとは、銘柄選択の幅を絞ることと、価格変化に惑わされず売買規律に基づく運用をすることの2つである。そういった能力は個人に宿るものであり、合議体での意思決定や価値判断の無い売買をしていてはプロフェッショナルの能力が育たない。

株式投資の責任
運用業者として株式投資をする際は、株式という権利の小さいものに投資することの社会的責務を自覚するべきである。投資先企業の経営が悪い等の批判を一方的にするのではなく、自分で投資をしたことに対して責任を持ち、会社に対するエンゲージメントの良い在り方を、経営者との対話の上で作っていくことが求められる。
勿論、資金を預けてくださる最終投資家とのエンゲージメントが重要であることは言うまでもないことである。



以上

(文責:山田、多田)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。






■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 投資家の視点に立ち、また株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、内外株式の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

<クリックで拡大>
1.日本株式を減らして外国株式を増やす方向で、調整を行う。
2.日本と外国という区分を廃止して、グローバル株式へ一本化する。結果として、日本株式の実質的組み入れが変動するのは当然。
3.相対的に割安な日本株式を増やし、外国株式を減らす方向で、調整を行う。
4.エマージング市場の株式を増やし、他を減らす方向で、調整を行う。
5.その他

Q2 投資家の視点に立ち、また日本と外国の株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、アクティブ運用とインデクス運用の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1.全てインデクス運用。
2.インデクス運用を増やし、アクティブ運用を減らす。
3.アクティブ運用を増やし、インデクス運用を減らす。
4.全てアクティブ運用。

Q3 株式運用において、「バリュー」と「グロース」というような伝統的なスタイルの区分をすることについて、どのように、お考えになりますか。仮に、運用会社を選ぶ立場(投資家やコンサルタント)に立ったとして、一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1.そもそも、一定の既成概念で運用の手法を分類することは、不可能。
2.一定の運用手法の分類は、技術的にあり得ても、適当でない。運用会社に形式的なスタイルの枠に拘泥した運用を強制させる弊害があるのみで、有害。
3.全く自由な運用というのも、問題がある。合理的な分類方法に基づいて運用会社を選択する必要がある以上、不可欠。ただし、本当にリスク分散等の視点で有益かどうかは、わからない。
4.運用会社の選択にとっても不可欠だし、リスク分散等の視点でも有益。
5.その他

Q4 全く同じ質問ですが、仮に、選ばれる運用会社の立場に立ったとして、一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1.そもそも、一定の既成概念で運用の手法を分類することは、不可能。
2.一定の運用手法の分類は、技術的にあり得ても、適当でない。運用会社に形式的なスタイルの枠に拘泥した運用を強制させる弊害があるのみで、有害。
3.全く自由な運用というのも、問題がある。合理的な分類方法に基づいて運用会社を選択する必要がある以上、不可欠。ただし、本当にリスク分散等の視点で有益かどうかは、わからない。
4.運用会社の選択にとっても不可欠だし、リスク分散等の視点でも有益。
5.その他