2015/3/23開催 年金資産運用実践講座第3回・セミナーレポート

HCセミナー



第1部:「伝統的四資産に替わる資産定義の再構築」

資産配分の問題は非常に悩ましく、本質的な問題です。重要性の原則を適用して区分を決める。現在では、パブリックかプライベートか。株か債券か。国内か海外か。の3つの軸により8つに区分するのが主流でしょう。

資金調達と資金運用を別のものと考えている方が非常に多いですが、両者は同じもので1つです。コインの裏表であって1つです。誰かの資産は同時に誰かの負債です。投資対象の事業資産から生まれるキャッシュフロー、その源泉の軸を考える上で、産業別を先に考えるか、国・地域別を先に考えるかという問題があります。例えば製薬業。ある薬が日本人に効いてスペイン人には効かないなどということはあり得ません。ここでは国・地域別の軸はそんなに関係ないでしょう。例えばスーパーマーケット。米国でやるか、アフリカでやるか。国・地域別の軸は凄く大事でしょう。一方、資金調達の仕組みである、資本構成上の軸を考える上で、パブリックかプライベートかの軸は極めて重要でしょう。本質的に差は非常に大きいです。次に考える資本構成上の軸は、優先部分にある債権、社債か。または劣後部分にある株式か。

最劣後の株式の地位を何故得るかということを考える必要があります。何故東京電力の株主になるのでしょうか。TOPIXのインデックス運用はそうなると、すべてに東京電力株が入っています。非常にマズイ状態でしょう。もはや株式ではないと言えるものに投資をしていることは異常な事でしょう。

100%資本構成の上位で運用するのが王道です。銀行の運用は基本すべて融資で、資本構成の中では最上位です。年金基金の株式投資は本当はよくないでしょう。ただ、足が長いから株式投資の許容が出てくる。キャッシュフローが成長することを見込んで始めて株式投資があるのではないでしょうか。例えば九州電力の株式。同じ株式でも5年前、現在、5年後では全然違うものとなります。
5年前。原発は稼働しており、赤字にはなり得ない状態でした。
現在。債務超過に近く、優先株を発行。すべて日本政策投資銀行が買いました。
5年後。川内原発が再稼働するとしたら、劇的にキャッシュフローが改善するでしょう。
資産を稼働させてキャッシュを創出させる。それ以上でもそれ以下でもないでしょう。どの場所から生まれるキャッシュかが非常に重要でしょう。


第2部:「伝統的資産配分に替わる資産選択の再構築」

例えば5%の永久債の価格は凄いボラティリティをもって動くでしょう。ただし、1億円分保有で毎年必ず500万円入ります。価値の増殖は招かないのでつまらないという意見もあるでしょう。別の例で、ある債券でインカムリターンを3%想定していました。価格がたまたまマイナス3%で、トータルリターンはゼロでした。潜在収益率は3%なので全く問題ないです。以上。とできるが、価格下落の原因判断は必要でしょう。価値を毀損している可能性もあります。

株式は価値も価格も変わる、一番「ロマンチック」な投資対象ではないでしょうか。本来、価格の変動は無視しなくてはいけないものです。日経平均株価約2万円は「稼ぐ力」を反映したものなのか。経産省は至って冷静です。2003年当時の日経平均株価は約7,000円でした。対中輸出絶好調で日本株の価値は凄く高かった、バリューであったと思います。資産運用者に価格変動の管理はできません。また、株式の場合、キャッシュフローが切れてしまう可能性があります。営業利益=金利支払だと株式はLiving deadです。金利支払がされている限り銀行は困りませんが、株式投資家は困ります。キャッシュフローが成長していれば、銀行には固定で金利分入るだけですが、株式の価値はキャッシュフローの成長とともに増えます。

100円の価値のものが80円の価格で売られていました。3年で解消するものと見越して80円で買いました。翌日100円になりました。投資規律の問題ですが、売りましょう。ただし、売った後にその代わり金の運用先を見つけるのが億劫でしょう。大半のリサーチは出番が何年もありません。リサーチはほとんど空箱です。こういった時に運用先を用意しておけるか。いいものを見つけることができても、その時にいいものを買えるとは限りません。いい投資家にはいいものがいきます。

投資収益は資金調達者の平均資本コストです。平均資本コストは大体3~4%ぐらいではないでしょうか。電気事業者は3%弱となっております。全国銀行協会加盟の銀行の平均負債コストは約1.7%。日本企業の平均ROEを6%、自己資本比率50%としましょう。GPIFの目標リターンは4.2%ですが、以上のことを考えますと、決して楽観的な数字ではないでしょう。

以上

(文責:広川)

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