2014年2月12日(水)開催  HC資産運用セミナーvol.074「クレジット投資の魅力」セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト



 「クレジット投資」は日本語訳しづらい。そもそも、社債とか貸付金とか、信用供与全般を総括する日本語の投資用語が普及していない。米国では、唯一成長しているのは貸付金関係の運用。日本は貯蓄が多く、それによって銀行貸付が多い。社債市場は米国に対し、圧倒的に少なく、それに対する実務経験も乏しく、極端に見劣りした現状である。日本は投資能力が浅く、投資に回す資金と投資機会のバランスが悪く、よって資金が海外に流出している。それでもなお、投資機会の判断をするのは日本の投資家という皮肉的な時代である。

 クレジット投資は投資の基本であり、年々進化している。また、金融は創造的な社会となり「自由化」によって大きく変化した。例えば、エネルギー業界:エネルギー源と金融の問題があるが、「自由化」が起きるには金融の問題は不可避である。米国では、オリジネーションとクレジットの保有を分離することで、資産担保証券市場が発達、企業の低金利調達が可能となり、「自由化」を支えてきた。資本市場を支えることで、結果、消費市場も支えられてきた。

 日本のエネルギー産業は、銀行から独立をしなければならない。つまり、銀行に依存しない、資金調達の必要性がある。で、あればハイイールド債の発行、メザニンの発行、優先株の上場を行うべきである。

 クレジット投資には魅力があると考えている。しかし、工夫をしないと日本は凌いでいけない。米国はクレジット投資を数十年やってきた経験がある。すでに、多種多様で深みのある投資対象となっている。一方、日本は知識も経験もまだ足りないが、やれないことはない。ただし、銀行にそれだけの気合いが見受けられないのは、まだ残念なことであるが、マーケットがないから人間が育たない。今後はクレジット分析ができる人材を育てていく必要がある。
 
 クレジット投資はそれでも難しい。お金を貸したあとどうするか、が問題である。よく考えてもらいたい。ワーストケースの想定など様々な調査やプロテクションの設定などできるだろう。一方、社債投資をする際はそこまで手間をかけない一般的に思う。本来は、融資の厳しさと証券運用の厳格さをもって、銘柄選択をしなければならない。つまり、クレジット投資は出口がないものと考え、何かリスクがあれば積極介入して、回収を行う。事実、アメリカでプライベートデットが伸びているわけは、融資のほうが手法的に優れているからだ。出口を自分で作ることができ、つまり、融資初期段階で経営介入が可能で、コベナンツの設定や、条件を劣後に落とすこと、エクイティをスワップすることなどが事後段階で可能である。このようにリスク管理手法が多いほうが優れていると言える。しかしながら、日本では資産運用業界にそれができる人がいない現状。日本の現状はとても危険である。

 
 そもそもお金を貸すという行為は、貸せる人に貸してしまうと金利は取れない。貸せない人に貸すから金利がとれる。米国の銀行はコストカットによって、優秀な人が流出し、運用業界へ流れて来た。しかし、日本は銀行からの人材の流出だけ起こらず、業界にも資金がない状態である。本来、これらは循環しなければいけない。けれども、運用業界の信頼もない。米国では、シェールはじめ、膨大な信用がお金を生んでいる。日本では金融的に信用が生まれない。つまり、お金が集まらない。

 今後、プライベートな与信が主流になると思う。個別のコベナンツを反映させて、プライベートのものにして投資をする流れになる。社債は標準化すぎる。標準化を適用するには高度な金融手法が必要だが、その知識は日本にはないのである。ならば、個別のプライベートな投資機会しか残らない。

 ただし、現債権がリファイナンス・スキームに対して真正売却されていることなどが、信用創出事業者の破たんからの隔離が前提となっているが、そこにはモラル・ハザード(情報の非対称性)の源になっている。情報の非対称性は努力によって生まれるというのが資本主義である。そして、これを努力によって解消するのがプロであり、それでこそ、地位が確立される。だから、運用会社を選択することはまだ機能する事象でもある。

 
 クレジットマーケットとは株以外のものすべてを指す。資産の裏付けがない株に比べれば、クレジットは非常に安全である。また、真正売却によって、倒産隔離が可能になったが、一方で、当該企業の管理下から外れてしまう事態が起きる。どちらを優先するのかは、投資家の好みである。金融ではいいとこ取りはできないが、投資家に決定権があり、ゴールはキャピタルストラクチャーの多様化が起きることである。あとは発行体と投資家の合意があり、透明性がある投資対象であれば、可だと思う。案件が異なればファイナンス方法も異なっているはずであるが、現状は銀行が標準化した融資方法を適用させているだけのように思える。それではいけないはずだ。

 クレジット投資は、信用が膨張しているところで盛んになっている。今日では、イオンリートに代表されるように不要な資産は売却する企業が増えている。日本郵船や商船三井でも保有している船を手放す動きである。今まではフィナンスリースだったから、金融債権の買い取りができたが、これからはオペレーティングリースとなり、資産の買い取りが主流になる。世の中はこのように進んできている。

以上

  
(文責:大橋)

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  HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 日本の国債の「信用リスク」について、どのように、お考えでしょうか。一番近いものを、ひとつだけ、お選びください。

<クリックで拡大>
1.そもそも、国債について信用リスクを論じることに、実益はない。
2.理論的には、一定の信用リスクはあるが、実務上は、ないものと看做さざるを得ない。
3.信用リスクがあるにしても、それは、利回りに合理的に反映しているはずだ。
4.潜在的な信用リスクは、利回りに反映しておらず、投資対象として魅力がない。
5.その他

Q2 サブプライムローンから作られる資産担保証券の最上位格付(AAA)のトランチの価値について、どのように、お考えでしょうか。一番近いものを、ひとつだけ、お選びください。


<クリックで拡大>
1.価値のないものからは価値のあるものは生まれ得ず、格付は欺瞞であり、投資できない。
2.サブプライムも全く価値がないわけではなく、その価値のある部分だけを切り出して作られた証券なのだから、格付を 信じて投資してよい。
3.格付を客観的に検証する方法がないのだから、そもそも、投資対象として検討し得ない。
4.現債権に遡って精査し実質的価値を検証するのが運用会社の仕事であるので、そのような仕事ができる限りにおいて、 投資可能。
5.その他
6.無回答 

Q3 東京電力福島第一原子力発電所の事故直後において、東京電力社債を保有していたとして、ご自身ならば、どのような投資判断をしたでしょうか。一番近いものを、ひとつだけ、お選びください。


<クリックで拡大>
1.値段のいかんにかかわらず、即時に売却する。
2.即時に売却すれば、極端に低い価格となるのは自明だから、売却を前提とするも、しばらくは、様子をみる。
3.法律上、東京電力の破綻はあり得ないと信じて、保有し続ける。
4.破綻の可能性はあるにしても、先取特権をもつ特殊な債券なので、売却損の確定を急ぐよりも、保有し続ける。
5.その他






セミナーレポートは以上になります。