2013/11/13開催 HC資産運用セミナーvol.071「成長資本としての株式への投資が成り立つ条件」セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト



1.株式へ投資するには高い条件が必要
銀行経営において株式を保有することはリスク規制の側面から規制を受けやすく、株式には投資しづらいと言えるでしょう。そもそも自己資本比率規制とは、煎じて言えば銀行が危機的状況に陥っても銀行自身を助けうる資本のことです。
保険理論では保険料を払って保障を得ます。保険の世界には「情報の非対称性」のため、「本業には保険をかけない」という原則があります。ところが、金融危機の最大の原因はモラルハザードが引き起こしたといわれています。銀行は本業である与信行為に保険をかけ、それがCDS、CMBS等の商品として市中に出回わりました。株式のリスクは本業にかける保険と同様に著しく難しいものです。情報開示の必要性が高い割には情報が完全ではなく、全ての情報を入手することは困難です。株式発行者において企業統治が完全に成り立っていない限り、投資は不可能とも言えるかもしれません。
加えて、皆さんは銀行が破綻を防ぐ目的で増資する株式を購入しますか?株価は上昇していますが、引受金融機関は強い倫理観が必要でしょう。また、増資した資本は「成長資本」としてではなく、「処理資本」として使われます。果たして、そのような株式に価値はあるのでしょうか?

2.本来の事業投資としての株式投資
株式投資の根源はキャッシュフローを生み出す事業への投資です。投資対象としての株式の評価や銘柄選択が成り立つのは、基礎となる事業の評価や選択が成り立つ限りにおいてです。株式は企業の資金調達手段として発行されますが、定期的な利息支払いや満期弁済がないが故に、時間に拘束されないという利点があり、企業は成長基盤を築く長期的視点に立った設備投資等ができるのです。よって企業の成長志向がなければ株式による資金調達の必要もなく、株式投資も成り立たないということです。
株式の資産区分は最下位です。株主権利は債権者や社債保有者の権利に劣後します。株式投資は、株主を守りたいと考える経営者によって担保されるのです。その行動の中には「法的整理」もあり得ます。投資価値のない企業を一度リセットし、資本構造を変えて新しく成長に向けたスタートを切るのがアメリカでの考えです。日本は、この発想が遅れており、企業の発展の妨げにもなっています。

3.株主の権利
株主の権利は1)配当を受け取る権利、2)議決権、3)残余財産分配権しかありません。株式を所有することの本来的な意味は、将来にわたる配当を受け取る権利を手に入れることです。株価の上昇があり得るとしたら、それは将来の配当の期待値が上昇することの結果となります。一般に、成熟して将来成長力が相対的に低下した企業では配当性向は上がるはずで、逆に、成長途上で旺盛な資金需要がある企業では内部留保を厚くしたほうがいいでしょう。実際、成長企業では、配当を払わない例も多くあります。このように超長期的に増え続ける配当額を安定的に受け取ることが株式運用の基本となります。

4.株主投資の論理
「株式に投資するか、しないか」ではなく、株式に投資するなら一定の条件が必要だと考えてください。資本構成選択、事業選択、資本構成改善などから株主は銘柄を選択し、収益源泉を分散させ、経営者とともに事業キャッシュフローの質と量を高める努力をしていきます。その際に配当性向や、現在価値、清算価値、純資産、資産の運用効率といった指標や割安、成長の観点からの選択方法があります。
良い事業を持つ企業は良い企業です。良い企業は適切な時期に適切な経営革新を行うことで、事業価値が企業価値に現れてくるような変革(キャピタルストラクチャの合理化や不採算事業の整理)や、事業価値を一層高めるような変革を行うはずです。企業の変革を促すような強い主張を持った投資、社会変革の視点に立脚した投資は、そのような自己変革に対して建設的な助言として機能する、まさに変革の触媒(カタリスト)として機能するのではないでしょうか。

以上

  
(文責: 大橋理瑛、白木智雄)

  当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

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  HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 投資家の視点に立ち、また株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、内外株式の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

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1.日本株式を減らして外国株式を増やす方向で、株式内部の調整を行う
2.日本と外国という区分を廃止して、グローバル株式へ一本化する。結果として、日本株式の実質的組み入れが減るのは当然
3.相対的に割安な日本株式を増やし、外国株式を減らす方向で、株式内部の調整を行う
4.エマージング市場の株式を増やし、他を減らす方向で、株式内部の調整を行う
5.その他

Q2 投資家の視点に立ち、また日本と外国の株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、アクティブ運用とインデクス運用の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1.全てインデクス運用
2.インデクス運用を増やし、アクティブ運用を減らす
3.アクティブ運用を増やし、インデクス運用を減らす
4.全てアクティブ運用

Q3 株式(日本および外国)に対する年金基金の投資のあり方について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1.期待収益率と許容できるリスクを考えると、原理的に株式投資はなじまないので、投資する必要はない
2.年金基金にとっては、必要不可欠な投資対象であり、組み入れ比率の問題はあるにしても、なくなることはあり得ない
3.状況に依存するものであって、魅力度がないときには投資する必要はない。要は、魅力度に応じて、ゼロも含めて、組み入れを検討すればよい
4.その他