2012/4/11開催 HC資産運用セミナーvol.052セミナーレポート

HCセミナー
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

今回のセミナーには、総勢37名の方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。

《 セミナーのまとめ 》

機関投資家の資産運用の特色
企業年金や保険会社などの機関投資家は、長期債務に対応している資産を運用しています。機関投資家の資産運用において、債務との適合を意識するならば、債券を中心とした資産構成における金利変動への対応が基本課題になることは間違いありません。

機関投資家の債務費用を上回る投資収益機会は必ず存在する
もしも、そのような機会が存在しないならば、債務負担をすることの経済的合理性自体がなくなってしまいます。ただし、金利の構造的な変化や、比較的短い期間での一時的変動によっては、資産と債務に不整合(長期構造的あるいは短期的)の生じる可能性は、常にあります。

債務費用は、期間と、それに対応した金利で規定される
債務費用と同じ期間と金利で、債券を中心にした投資収益機会が存在するはずです。というよりも、そのような投資の機会を前提にして、債務費用(金利費用と管理費用の合計)が見積もられているべきです。ただし、そのような投資機会があっても、費用と収益が一致するだけならば、付加価値を生み得ない以上、経済的には無意味です。

資産運用の目的は債務費用を上回ること
資産運用の付加価値は、最低限、金利と管理関連の費用を吸収できるものであることが期待され、それを更に上回ることが望ましいとされているはずです。資産運用の目的は、債務費用をいくらかでも上回ることです。一方、最低限、債務費用を達成することは、目的である以前に、制約条件だろうと思われます。

債務費用を上回るための方法
債務費用を上回るためには、債務構造が与件である以上、債務構造と異なる特性を資産側にもつ必要があります。異なる特性とは、金利の領域での期間のずれ等にかかわるものか、金利とは異なる性格のものか、どちらかですが、当然に、金利の世界から離れるほど、資産と債務のずれが大きくなると思われます。

資産と債務との構造の差の限界
資産運用の付加価値を大きくしようとすれば、債務構造との差を大きくしなければならず、乖離から生じる損失確率を大きくしてしまいます。その損失可能性に対する自己資本の厚み(資産額が債務額を超過している部分)が十分にない限り、通常の機関投資家の運用の場合、過大な付加価値を追求することは一般的ではありません。従って、債券を中心にした運用の中で、機関投資家の課題は実現されなければなりません。

債券を中心にした運用の中での付加価値源泉の厳選と分散
債券という区分の中でも、金利以外の多様な収益源泉へ分散することが可能です。更に、債権等に枠を拡大させれば、より効率的な運用が可能になる可能性があります。ただし源泉の分散と同時に、源泉の源泉が重要です。

なぜ、ニッチか
金利という大きな支配的要素があるからです。債券的な投資対象は、常に、金利が最大の要素であって、そこに他の異なる収益源泉を含めるにしても、一つの投資対象における源泉拡大には大きな限界があります。ですから、一つの投資対象に小さな収益機会(ニッチな機会)を見つけ、その小さな機会を多数集積するしかないのです。

ニッチなもの
ニッチな領域を構成するものは多様であり得ます。信用、知名度(認知度)、流動性(売買可能性とその費用の小ささ)、構造(資産担保証券など)、内包オプション、リスク移転(債券という器に様々なリスクを移転してくる仕組み)などなどです。大切なことは、どの一つにも、大きな傾斜をかけずに、常に多様なものに分散しておくことです。

債務構造が変動する可能性
投資環境の変化は、債務の構造そのものを、程度の差こそあれ何がしかは、変化させます。投資側の損失が債務側の変動を誘発することで、累積的に膨らむ可能性も完全には否定できないでしょう。

債務構造を変動させ得る可能性
企業年金の給付減額のように、究極の奥の手としては、本来は変え得ない債務構造を変えてしまうことも、資産運用の状況に極端な「事情変更」でもあれば、必要なのかもしれません。


次回、2012年 HC資産運用セミナー第5回は『金融の社会的機能と資産運用~産業の発展を金融的に支援するという投資の原点への回帰~』です。

なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。