2012/2/8開催 HC資産運用セミナーvol.050 セミナーレポート

HCセミナー
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

今回のセミナーには、総勢44名の方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。

《 セミナーのまとめ 》

本源的収益
資産を所有することには、本源的収益が付随しています。そもそも、債券・貸付金・預金等の金利、株式の配当、不動産の賃料などのように、利息配当金収入の期待値を内包しないようなものは、投資対象という意味での資産ではあり得ません。

本源的価値
資産の本源的価値とは、その資産が内包する本源的収益が将来に亘って実現していくと仮定したときに、将来期待収益を適正な金利で現在価値に割り引いたものの総計です。以下、端的に価値といえば、原則として、本源的価値を指します。

市場価格
資産が市場で取引される限り、その現実の取引価格として、資産には市場価格が付きます。市場価格は、本源的価値と無関係には形成され得ないと想定される一方で、常に本源的価値と一致しているとも限りません。

効率市場仮説
多数の独立した参加者によって形成される市場において、小さな取引費用で多数の連続的な取引が行われているのであれば、市場価格と本源的価値は概ね一致した状態が維持されるであろう、というのが効率市場仮説です。つまり、市場参加者の評価の集積としての市場価格は本源的価値を反映する、あるいは逆に、本源的価値とは市場参加者の評価の集積としての市場価格にほかならない、とする仮説です。

市場の効率性と適正価
市場の効率性とは、本源的価値と市場価格の一致した状態をいいます。効率市場における市場価格を適正価格といいます。適正価格は、適正に価値を反映しています。

本源的価値と市場価格が一致しない現実の市場
効率市場仮説が成り立つ条件は、実は、かなり厳しいものです。現実には、参加者の偏在による需給の一時的な不均衡や、大きな取引費用などにより、本源的価値(適正価格)と市場価格が乖離する状況が発生します。

枠組みとしての効率市場仮説と現実の市場
市場の効率性が常に実現しているわけではないとしても、そのことで効率市場仮説の有効性が否定されるものでもありません。本源的価値と市場価格との不一致が頻繁に生起するとしても、それは、一時的(ただし、その期間は長くなり得る)な現象であり、市場価格には本源的価値に向かって動いていく力が働いている、と想定することは、十分に現実を反映しており、経験的にも信じるに足るものです。

投資の世界の特殊な用語としてのバリュー
一般用語としてのバリューは、valueであり、価値のことです。しかし、投資の世界では、バリューは価値そのものではなくて、本源的価値が市場価格を上回る部分のことをいいます。そのような特別な意味をこめて、敢えて片仮名でバリューと呼ばれます。バリューに対応する日本語は「割安」です。

バリュー投資
仮に適正価格で資産を取得しても、いいかえればバリューのない(割安でない、と同時に割高でもない)状態で投資したとしても、投資収益はあります。それが本源的収益です。バリュー投資とは、適正価格を下回る価格で投資をして、価格が適正価格(本源的価値)に向かって上昇する過程で、本源的収益を上回る追加的収益を挙げようとする試みです。

バリュー判断の誤り
価格の下落は、バリューではありません。原則としては、価格の下落の裏に価値の低下を見るべきだからです。バリューは、価値の低下に起因しない価格の下落、純粋に市場要因による価格の下落です。価値の毀損に起因しない価格の下落を見極めること、ここにバリュー投資の基本があります。

価値の毀損に起因しない価格下落の原因
一般論として、そのようなバリューの原因をあげることはできません。全て、個別の事情によるのです。その事情にかかわる見極めが、バリュー運用の基本です。敢えて、例を挙げれば、需給均衡の崩壊による市場の機能不全、即時に影響を判断できないような「出来事」の発生などです。

保守的運用としてのバリュー投資
バリュー投資は、本来は、価格が価値に対して割高になることまでを、想定するものではないのです。割安なとき、即ち、バリューのあるときにのみ投資し、バリューが解消(価格が適正価格まで上昇)してしまえば、配分をなくすか、本来の基本配分へ戻す、というのが基本です。

保守的運用とマージン・オブ・セイフティ
マージン・オブ・セイフティとは、margin of safetyであり、安全性の厚みのことです。価格が価値を下回る部分、即ち、バリュー部分が、価格の下落に対する緩衝材(安全性の厚み)の役割を演じるという意味でも、バリュー投資は、保守的な投資といえます。

バリューの解消
バリューは自律的に解消する、と仮定するのが効率市場仮説です。しかし、投資の収益率にとって決定的な要素は、時間です。投資家は、自律的なバリュー解消を待つだけでなく、バリュー解消の時間を短くするような要因を求める、積極的にバリュー解消を促進させる努力をする、あるいは、すべきだ、と考えられています。

カタリスト
カタリストは、catalystであり、化学でいう触媒です。価格が価値に向かって動いていく、その価格の上昇(あるいは相対的上昇)を化学反応に喩えた上で、その反応速度に影響する働きをするもの、を意味しています。

「万年割安」とバリュートラップ
「万年割安」ということがあり得るのです。バリューがあるには違いないが、そのバリューが解消するまでの時間が読めない、つまり、カタリストが働かない状況があり得ます。このように、バリューのままで放置されることを、バリュートラップ(value trap バリューの「罠」)といいます。解消しないバリューは、出口が来ないという意味で、まさに、罠であるわけです。

バリュー解消の道筋とカタリスト
バリューが生まれる原因を徹底的に考えることから、バリュー解消の道筋が見えてきます。要は、バリューになった原因を逆転させれば、バリューは解消するであろうと考えるのが、一番素直だからです。バリューになった原因を逆転させるきっかけがカタリストです。

グロースについて
価値自体の上昇をグロース(growth 成長)といいます。グロースを追求する運用は、バリュー運用と対をなすものです。しかし、バリューもグロースも、運用者の評価する価値が価格よりも高いことを前提とした運用であることは、同じです。違いは、価値評価における、バリューの保守主義、グロースの積極主義、この差だけです。

絶対バリューと相対バリュー
価値と価格の差は、価格下落過程でも、相対的下落率の問題として解消し得ます。これが、バリューの相対評価です。それに対して、絶対的バリュー戦略の第一は、株価の絶対的上昇によって価値と価格の差が解消することを想定するものです。第二の戦略は、相対バリューを前提に、空売りを行うものです。

利回り重視の投資戦略
バリューのままで何がいけないのか。これは、一考に値する問題です。バリューなものは利回りが高い場合が多いでしょう。高利回りを安定的に享受できるなら、それで十分なのではないか。バリューの解消、即ち価格の上昇は、あくまでも結果的に発生することが期待されるものであって、そのことが目的ではないともいえます。


次回、2012年 HC資産運用セミナー第3回は『クレジット投資の魅力
~信用供与メカニズムの構造問題と投資機会~
』です。

なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。