2011/12/14開催 HC資産運用セミナーvol.048 セミナーレポート

HCセミナー
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

今回のセミナーには、総勢39名の方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。

《 セミナーのまとめ 》

論理と賭け
合理的な意思決定は合理的推論の結果です。資産運用における運用者の責任というのは、このような合理性に立脚した投資判断を行うことと考えられています。しかし、投資判断が不確実な将来に関する判断である以上、合理性を超えた賭けの要素は、必ず残ります。

賭けと信念
賭けの決断については、合理的推論によるわけにはいかないのです。完全な自由意志のもとでの決断においては、自由であることの厳しさが露呈します。自分自身だけが支えです。その支えが信念です。信念の形成は、練磨された科学的手法の実践、長年の経験、修行としかいいようがない訓練を経てのみ、可能なのです。ここに、専門家の職業倫理の厳しさがあります。

説明責任と結果責任
信念の根拠は説明できません。説明できないから、決断なのです。専門家としての知見と経験を総動員しても残る不確実性については、専門家としての誇りを賭けて、決断するしかないのです。説明が問題なのではなくて、結果が問題なのです。業者である運用者は、結果責任を負い得ない。ここは変えようがない。だからこそ、説明責任の内容に関して、業者には厳しい職業倫理が課されるべきなのです。

真のリスク(損失の可能性)管理能力と説明責任
リスク管理とは、管理できるリスクを管理することが最終的な目的ではなくて、管理できないリスクの所在を明らかにすることが最終的な目的だったはずです。説明責任とは、管理できるリスクの説明にではなく、管理できないリスクの説明にあるのです。つまり、説明できない賭けの要素に対する運用者としての信念の表明こそが、説明責任の対象なのです。

職業倫理(プロフェッショナリズム)
運用会社においては、運用の技術的な巧拙以前に、運用の腕前の良し悪しの判断以前に、運用組織の中にプロフェッショナル倫理が貫徹していることが、最低限の要件となるのです。

運用手法の社会的必要性
運用会社が自己の運用手法として選択したものが、論理的に収益を生むべき、社会的必然性に裏打ちされたものであること、これが重要です。金融の社会的機能に対して忠実であって、社会的な必要性に裏打ちされている限り、収益の確実性は高くなります

適正な利潤
運用手法は、資本市場の構造に照らし、適正な利益を追求する戦略でなければなりません。収益率の高さではなく、その「質」、即ち、確実性と反復継続性が、問題なのです。決して、他人の損失の下に利益をあげる戦略であってはならない。そのような収益に持続可能性はあり得ません。

職人的な経験知
自己の投資手法を実践できるだけの、知識と経験の裏打ち、および市場での優位な地位が、運用者の経歴上、明らかでなければなりません。

つきと技術
運用者は、資産の本源的価値の変動と、市場要因による価格変動とを明確に区別できなくてはなりません。価値より低い価格での投資、投資対象の価値の上昇は、投資の技術に属するのでしょう。しかし、単なる価格の上昇は、多くの場合、つきにすぎないのかもしれません。

確信度の高さ
資産価値についての、自己の確立した評価基準をもたねばなりません。自己の定義する価値と、市場がつける価格との差に賭けることが資産運用の本質である以上、自己の価値観への信念が、確信度が、不可欠なのです。信念は、徹底した調査と経験からしか生まれません。同時に、顧客からの変わらぬ支持、顧客との信頼関係も重要です。

リスク(損失の可能性)の管理可能性についての認識
確信の反面として、リスクの管理可能性の判断について、厳格でなければなりません。確信度は、思い込みであってはならず、判断の偏向を排除できる、徹底した論理性と社会常識に裏打ちされない限り、危険なものとなります。社会常識、社会の必要性からの逸脱こそが、リスクであるとの、健全なる精神をもたねばならないのです。

倫理規範の組織的客観化
純粋に投資家の利益のためだけに行動する倫理規範は、組織的条件に客観化されて始めて意味をもちます。運用会社の所有構造、世代交代と事業の継承、投資家の利益との共通化(運用報酬体系と役職員報酬体系)、適切な規模、運用戦略に相応しい効率的組織、など重要な論点が多く、運用会社の評価の一番難しいところです。

経済的条件
簡単に解約しない友好的な顧客基盤と、顧客を選べるだけの名声は、不可欠です。確信度も、顧客の支持があって、はじめて貫けるものです。

難しい解約
運用会社を選ぶことで、運用が終わるのではなく、運用が始まるのです。運用委託後のモニタリングの方法が重要です。実際、採用よりも、はるかに難しいのが解約です。解約の条件は、難しい問題ですが、倫理規範と確信度を貫ける組織的条件の崩壊、確信度の揺らぎなどは、おそらくは、絶対的な解約事由です。

過去の実績
実績は、測定期間や測定の基準を変えると、実績自体が動いてしまいます。しかも、過去の実績の再現性については、なんら具体的な保証があるわけではありません。実績で選ぶのではなく、実績で確認するしかありません。

過去の実績の再現性
過去の実績の再現性についての保証を求めるならば、それは、プロフェッショナルを活かす組織的条件以外にはあり得ません。

委託の実務
選択は重要ですが、選択して委託するという、実行の技術的問題も、同じく重要です。ファンドの利用など、効率的な工夫が必要です。


次回、2012年 HC資産運用セミナー第一回は『成長資本としての株式への投資が成り立つ条件』です。

なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。