2010/08/11開催 HC資産運用セミナーvol.032 セミナーレポート

HCセミナー
※当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

今回のセミナーには、総勢41名の方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。


《 セミナーのまとめ 》

資産とは、キャッシュフローを生むもの
資産は、利息配当金、元本償還金、賃料収入などのキャッシュフローを生むものです。キャッシュフローを生まないものは、資産ではありません。おそらくは、金(金の地金)だけが、キャッシュフローを生まない、例外的資産です。

リターン(戻ること)とは、投資資金の回収のこと
投資額以上のキャッシュフローを回収するから、リターンなのです。

資産はキャッシュフローを受け取る法律上の権利
例えば、不動産自体が投資対象なのではなくて、不動産が生み出す賃料収入が投資対象なのです。不動産の所有は、賃料収入を受け取る権利についての、法律上の対抗要件にすぎません。ですから、土地(上に何もない更地)は、投資対象ではないことになります。同様に、債券は、利息と元本償還金を受け取る権利、株式は、配当と清算時の残余財産を受け取る権利です。

キャピタルストラクチャ(資本構成)
キャピタルストラクチャというのは、キャッシュフローを受け取る権利の優先劣後関係のことです。資産の名称は、キャピタルストラクチャ上の地位を表示します。債権と呼ばれるものは最上位(優先)、株式とよばれるものは最下位(劣後)です。

資産の価値は、キャッシュフローの現在価値
どんな資産でも、一定の仮定の下で、将来キャッシュフローの現在価値としての資産の価値を計算できます。

価値と価格
資産は、将来キャッシュフローの現在価値としての資産価値(理論価値)の近辺で、取引(売買)されるはずです。その限りで、理論価値と取引価格は連動するはずです。もしも、市場が完全に効率的ならば、投資対象の価値と価格は、常に一致するはずです。

市場の効率性(価値と価格が一致する条件)
効率的な価格とは、多数の取引参加者が各自の異なる思惑で売買する結果として生じる取引価格です。価格の妥当性(つまり価値との一致性)は、取引参加者が多数であること、取引量が非常に多いこと、多数のものが相互に全く独立な自己の判断で売買すること、などの条件に依存します。

価値と価格の乖離(時価の妥当性が疑われる場合)
多様な投資対象の取引において、いつも、妥当な市場価格が実現するとは限りません。 個別性が高くて発行量の小さい銘柄が膨大に存在し、一つの銘柄の取引件数が少なく、かつ、売買当事者間の相対取引による場合には、価格の妥当性は保証されず、価値と価格は、乖離する場合があります。乖離は、しばしば、大きく、かつ長期にわたります。

キャッシュフローを稼ぎ出す力が上昇すれば、価値(=価格)は上昇する
企業の本来的な収益力が改善し、結果として配当が増えるならば、株価は上昇するでしょう。ビルを改修しテナント政策に工夫をこらせば、賃料収入は増え、ビル価格は上昇するでしょう。価格の上昇は、価値の上昇の結果であり、価値の上昇は、キャッシュフローを稼ぎ出す力の上昇の結果です。

本質的なキャッシュフローの変動を伴わない価値(=価格)変動
将来キャッシュフローが不変でも、現在価値に引きなおすための仮定が変われば、資産の理論価値は変動し、価格も変動するでしょう。しかし、将来キャッシュフローが変わらない以上、何も本質的な変動はない、ともいえます。例えば債券。金利が低下すれば、価格は上昇するでしょう。しかし、キャッシュフローは少しも変化しません。

より確からしいものに基づく判断
将来キャッシュフローそのもの、その現在価値としての価値、その価値とは異なり得る価格、これらのどれが、より確からしいでしょうか。もともと、財務分析の基本は、キャッシュフローの現在価値分析でした。しかし、一方では、価格に基礎をおく資本市場理論も普及しています。

資産運用の課題は、資産の持つ本来的なキャッシュフローを稼ぎ出す力を高めること
キャッシュフローを稼ぎ出す力が増せば、結果として、価値(=価格)は上昇します。資産運用とは、資産の配分を工夫し、また各資産の中での収益性改善努力を通じて、資産から生まれるキャッシュフローの期待収入額を増やすことです。これが、投資の基本です。基本中の基本です。(10月13日の月例セミナ「キャッシュフローの創出力を高める努力としての資産運用」のテーマです)


次回、2010年 第9回HC資産運用セミナーは『日本の年金資産運用の歴史』です。
是非とも皆様のご参加をお待ちしております。

なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。