Orbis世界株式戦略 公開ミーティング要旨

日時: 9月29日(火) 17:00 - 18:30
場所: HC 5階会議室
マネジャ: Craig Bodenstab氏(トレーディング部門および機関投資家・富裕層顧客対応部門の統括責任者)
      日出間 悠氏(アナリスト)
HC: 前田、柳井

[会社情報]
・ Orbisは南アフリカ出身のAllan Greyによって1989年に設立された世界株式特化の独立系運用会社。
・ Allan Greyは資産運用ビジネスを南アフリカに根付かせるためにハーバード大学へ留学してMBAを取得、その後Fidelityを経て1974年に南アフリカにAllan Grey Limitedを設立した。Orbisの運用哲学はAllan Grey社より引き継がれたものである。
・ 役職員は254名、投資プロフェッショナルは58名で、6カ国に拠点を構える。日本での拠点設立も将来の視野に入れている。
・ 顧客は財団・大学基金・年金が60-70%と中心で、30%は富裕層。2009年8月末現在運用総額は$19.4bn。役職員の自己資金も運用しており、どの顧客の資金よりも役職員による投資額のほうが大きい。
・ ここ数年顧客対応の限界からすべての戦略について新規投資家の受け入れを停止していたが、顧客担当や事務の体制を充実させ2008年10月に日本株式戦略のみをオープンした。他の戦略も体制の余裕をみて随時オープンしていく予定。

[世界株式戦略情報]
・ 世界株式ファンドは1990年から運用している。
・ 運用哲学は極めてシンプルで「本源的価値よりも安い株価で投資して、本源的価値に達した時点で売却する」というもの。ベンチマークや市場における平均予測値には一切とらわれない。
・ リスクとは資産が減少することであり、ベンチマークから乖離することではないとOrbisでは定義している。
・ 本源的価値からの下方乖離幅を”Margin of Safety(安全マージン)”と呼んでおり、投資の際に最も重視する指標。我々の認識が正しければいつか株価はこの水準に戻るはずと考える。本源的価値とこの乖離幅を常にモニターし、より魅力的な投資機会があれば機動的に乗り換えていくこともある。また、乖離幅が縮小に向かうためのトリガーと乖離幅が拡大し続けるリスク要因となるものをあらかじめ想定し、常時モニターする。
・ 多くの市場参加者は株価3000円の企業に対して適正価格は3100円だの2900円だのと議論しているが、我々は適正価格6000円だという主張を平気で貫く。適正価格の算出にこれだけ差が出るのは、我々が事業の本源的価値を5年以上先の予想に基づいて算出する一方、多くの市場参加者はわずか四半期先しか見ていないからである。
・ PEが買収するときのような方法で企業の本源的価値を算定しており、業況が良いときだけもしくは悪いときだけの結果に基づいて判断しない。流動性のある上場株式に投資しているが、PEの投資手法に近いと考えている。

[Q&A]
Q1:前回のミーティング時(2009年2月)からのポートフォリオの主なアップデートを教えてください。
A1:現在のポートフォリオは大きく以下の4つに分類することができる。1:高度な技術力により寡占状態にある優良企業(例:割安になったテクノロジー企業)、2:いわゆるバリュー銘柄(例:日本株式)、3:GARP(例:日本を除くアジア企業)、4:シクリカル銘柄(例:半導体、天然ガス)。このうち、上記1・3・4の配分を引き上げ、2の配分を引き下げた。しかしながら、依然として日本株オーバーウェイトである。

Q2: 通貨マネジメントについて教えてください。
A2: 株式および市場の見通しが3-5年の期間を想定しているのに対し、通貨の見通しは15-20年と長期間に渡る。Orbisでは2名の通貨アナリストが、購買力平価(以下PPP)とマクロ見通しにより通貨配分を決定する。PPPを中心に適正価値を判断し、実際の価格との乖離が50%程度割安と判断したときに積極的な通貨配分を行う。50%の割安水準は通貨ではしばしば生じうる。PPPの推定は、株式の本源的価値の推定と同様、手法によりかなりバラつきがある。例えばドル円のある時点のPPPは、OECDとOrbisの推定値ではかなりの乖離があった。通貨マネジメントがパフォーマンスに及ぼす影響は5%程度であり、ボトムアップによる銘柄選択が超過収益の主な源泉である。

Q3:ディープバリュー株投資とジャンク株投資は区別が難しいのでは。
A3:その通り。大切な点は2つある。①短期ではなく5年後その会社がどうなっているか想像すること②そのために過去、厳しい時期においてその会社がどう行動したかを詳しく調べること。ただし、Orbisはバリューやグロースといったスタイルにとらわれるのではなく、あくまでも成長性のある企業が何らかのイベントで割安になったときに購入する逆張りである。

以上


留意事項
弊社の投資先、もしくは投資候補として注目度の高いマネジャに関する公開ミーティングを通じたご理解を今後の資産運用にお役立ていただくこと、および弊社へのご理解を深めていただくことによる投資一任契約の締結の勧誘を目的としており、特定の金融商品の募集・勧誘を行うものではありません。

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