2013/4/9開催 「産業金融フォーラム」レポート(1)―基調講演―

HCセミナー


 4月9日(火)帝国ホテルにて開催いたしました、「産業金融フォーラム」のレポート第一弾をお届けいたします。最初のプログラムは、産業革新機構代表取締役社長の能見公一氏による基調講演。産業活力再生特別措置法に基づいて2006年に設置された産業革新機構は、官民出資ファンドとして、日本が持つ産業資源の潜在力を最大限に引き出すこと、次世代を担う産業のプラットフォームを構築し日本経済の持続的発展につなげることを使命に様々な取り組みを進めています。その代表である能見氏より、「産業金融の再構築」というテーマで、基調講演にふさわしい本質的なお話をいただきました。




 成長のための資本供給こそが、金融の社会的機能の本質です。そういった資本こそが正にリスクマネーと言えるでしょう。リスクマネーとは、リスク性資産に対して投入される資金のことです。デフレ環境下にある日本を俯瞰してみれば、約1,500兆円に上る家計金融資産は銀行預金偏重の状態となっており、本邦年金基金等資産運用においても、諸外国が積極的な運用を展開しているにも関らず、安全かつ効率的な運用を実現するという大義名分の下、国債中心のリスクしか許容しておりません。運用パフォーマンスも欧米に劣後しています。こうした中、2つの金融危機を経た本邦リスクマネーは、ベンチャーキャピタルに対する資本供給額に顕著にみられるように、減少の一途を辿っています。

 日本経済は、人材の質、巨額な研究開発投資、金融システムの安定性といういわばヒト、モノ、カネの面でグローバルに戦える武器を備えているにもかかわらず、それをどう使うかという戦略的なリスクマネー供給機能に大きな弱点を抱えています。経済成長のために必要なのは、その現状を打破することです。すなわち、リスクマネーの供給者たる金融機関の行動様式に転換が求められているのです。リスクマネー供給機能強化に向けては、以下の4つがポイントとなるでしょう。

①金融機関の「Behavior」の転換と、そのための行政による金融機関の自助努力や裁量権の促進
②国益を考慮した年金基金等資産運用の多様なリスク性資産への分散投資
③大手企業の資金・企業行動による技術や知的財産の提供
④創業・ベンチャー企業支援に係る政府支援策の有効活用



 産業革新機構では、産業や組織の壁を超えた”オープンイノベーション”を活用し、新たな付加価値を創出する革新性を有する事業に対して、中長期の産業資本を提供しています。基軸となるのは、旺盛なチャレンジ精神を源泉とする実現可能性・独立性・影響度です。また、継続的なリスクマネー供給機能強化のためにノウハウを蓄積し、戦略的な人材の育成にも取り組んでいるところです。日本の産業金融の更なる成長の一助となるべく、リスクマネーの供給を主役である企業の補完的な立場で実現し、金融機関のあるべき行動様式を体現しているのです。

 我々も、まだ完全な手法を確立しているわけではありません。産業革新機構は、2025年解散という期限が決められたファンドでもあります。その限られた時間の中で試行錯誤を積み重ね、リスクマネーのスムーズな民間資本への転換を促していきたいと考えています。

(文責:HCアセットマネジメント株式会社)



※引き続き、パネルディスカッションのレポートも近日中にアップいたします。

◎レポート(2)―パネルディスカッション①―のレポートはこちら