株式会社S.O.W.アセットマネジメント
上林 肇氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱ photographs:佐藤亘
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Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。

Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。
 弊社のファンドの投資対象は不動産ですが、一般的な不動産ファンドと趣を異にしております。一般的な不動産ファンドはオフィスビルや賃貸住宅に投資し、複数多数のテナントに賃貸します。賃料を原資とするインカムゲインとともに不動産価格の上昇に伴うキャピタルゲインを狙うこともあります。それに対して弊社のファンドは、事業会社に対して不動産を介して資金供与することにより賃料という形で安定的なインカムゲイン得ることを投資戦略としております。そのことによって、事業会社の成長を資金調達面でサポートしたいという思いがあります。
 一般的に企業の資金調達は、デットファイナンス、エクイティファイナンスがありますが、それらはバランスシートの右側を使ったファイナンスです。「アセットファイナンス戦略」は、バランスシートの左側でのファイナンスです。
 事業に不可欠な不動産、例えば小売企業にとっての店舗ですが、これは所有をしなくとも賃借することで事業を営むことができます。そこで、いわゆる「セールアンドリースバック取引」という手法で、バランスシートの左側の「資産」を売却し借り戻すことで、企業は売却代金でもって資金調達でき、その後は賃料を払うことになります。企業は調達資金を新たな成長投資に振り向けることも、有利子負債を削減して財務体質を強化することもありますが、いずれも企業の資金調達ニーズとリンクした投資になります。
 投資プロセスのなかで重要だと考えているのはソーシングです。一般的な不動産ファンドは、主に仲介業者を通じて案件情報を入手します。そのなかから良さそうな案件を選ぶ。当たり前ですが、不動産は一つずつしかありませんので、買える人は一人です。良さそうな案件には買手が集中しますので、入札となることも多い。入札になるとどうしても高値になりがちです。このような不動産流通市場での取得をオンマーケットでの取得と呼んでいます。
 それに対して弊社のソーシングの基本は、オフマーケットでの取得、すなわち企業と直接対話をすることです。財務コンサルをきっかけとしてアセットファイナンスの提案に至ったり、弁護士を通じてであったり。最近では、メガ銀行からのご紹介が増えてきました。
 そのようなルートから、それぞれの企業のファイナンスニーズをお伺いして提案をしていきます。
 最初からセールアンドリースバックニーズに辿りつけるわけでもありませんので、出店場所のご紹介であるとか、販路拡大に関するご相談であったりといったことから企業のニーズを掘り下げていきます。そうしたコミュニケーションのなかから、企業があるオーナーから賃借している資産があるが、現オーナーに信用不安を感じているとか、現オーナーが資産の修繕に応じてくれなかったりして困っているといったニーズを聞き出せたりします。そんな場合には現オーナーから弊社ファンドが当該資産を承継することもあります。この場合、セールアンドリースバック取引ではなくオーナーチェンジ取引となります。このようなプロセスに労力と時間がかかります。ただし、弊社ファンドにとっての生命線だと考えて日々愚直に営業しております。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社アセットファイナンス戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社アセットファイナンス戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。
 不動産投資は、リスクが高いという印象があろうかと思います。確かにキャピタルゲインを得られる可能性がある半面、キャピタルロスを被ることもあるので、不動産投資は怖いといった声もよく聞きます。ただ、インカムゲインを継続的に得る資産として、不動産は非常に適したアセットであると考えます。インカムの安定性すなわち賃料収入の安定性を高めるには、不動産投資のなかでも色々な手法が考えられますが、アセットファイナンス戦略においては、当該不動産を利用する企業が、その企業の事業にとって重要不可欠な資産であれば、賃料を払い続けるであろうという観点にたっています。そして賃料が長期安定的に支払われるために、賃貸借契約のなかで、様々な取り決めをします。その取り決めの仕方に弊社のアセットファイナンス戦略のノウハウがあります。
 また、インカムの安定性と同時に重要なのが、ボラティリティの低さです。不動産証券化商品の代表格である上場JREITは、世の中に登場した当初は、株と債権のあいのこの特性を持つミディアムリスク/ミディアムリターンの商品性を期待されましたが、実際は、株式と同じくらいのボラティリティがあり、株との相関も高い傾向があります。アセットファイナンスファンドでは、キャピタルゲインを狙わずにインカムを重視し、ボラティリティを抑えています。この点が、既存の投資家様からご評価をいただいている点です。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。
 以前に証券会社において、不動産証券化のアレンジ業務をしておりました。不動産のセールアンドリースバック取引による証券化が中心でしたが、リスクマネーの取り手が乏しかったため対象企業が自らエクイティ部分を出資し、残りのデット部分をノンリコースローンやCMBSで調達する手法が主流でした。ただ、対象企業にリスクが残ることもあって、「なんちゃって証券化」などと呼ばれていました。その後、オフバランスに関する会計上の指針も厳しくなり、対象企業にリスクを残す手法はとりにくくなり、セールアンドリースバック型の不動産証券化取引はされなくなりました。ただし、依然として企業の不動産証券化ニーズは、根強いものがあります。その目的はバランスシートのスリム化であったり、資金調達手段の多様化であったり、店舗・事業所などの拠点の拡大の加速化であったり様々です。これらの資金調達ニーズを支えるファンドの仕組みが必要とされています。
 セールアンドリースバックニーズを支える投資資金の性格は、キャピタルゲインを追わず安定的なインカムを志向する資金が一番マッチします。投資家の運用ニーズと企業の資金調達ニーズを直接つなぐこと、そこに様々な創意工夫を注いで、投資家、企業相互のWinWinの関係を構築し、それぞれの成長に貢献できることが喜びでもあります。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
 いわずもがなですが、「最優先は投資家に対するロイヤリティ」というところです。
 我々に対する投資家様の期待は、案件発掘の能力、他社と異なる取り組み方法による案件の加工能力、案件のファイナンスアレンジ力、投資期間中の物件の管理運用能力などですが、そのなかでも投資判断は、案件の目利き力に関するプロの専門性を期待されており、期待を裏切ってはならないものです。
 以前にとある案件を進めていて弊社が意思決定すればディールになるという状況でしたが、デューディリジェンスの過程で案件検討開始時と異なる事象が明らかになりました。検討会議で喧々諤々の議論がなされましたが、最終的にその案件は様々な検証の結果、見送ると判断しました。弊社のソーシング手法は、対象企業とのディスカッションを積み上げていく手法で、苦渋の決断になりましたが、投資家へのロイヤリティを最優先するという信念は、弊社メンバーの全員が共通して持っている強い思いです。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。
 弊社ファンドの肝は、「対象企業のクレジット」と「対象資産の価値」だと考えております。そのため、投資の段階で、対象企業の財務分析をしてクレジットの妥当性を判断し、対象資産が対象企業にとって重要不可欠である旨を事業者とのコミュニケーションによって確認をします。通常の不動産取引の商慣習では、対象企業の財務状況や当該施設の売上・利益などをコミュニケーションを通じて把握することはレアケースですが、弊社ではファイナンス目的であることをお話してそれらの把握に努めております。
 また、取得時に把握した財務状況や施設の業績については、取得後も定期的にモニタリングさせていただいております。そのことによって、企業クレジットや対象資産の状況に異変があれば、それを早期に把握し、早めに対応することが可能となります。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。
責任ある投資 - 資金の流れで未来を変える  水口剛(著)

 責任投資について体系的にまとまっています。欧米のSRIの歴史的変遷やESG投資などの解説をふまえつつ、「責任ある投資」のあるべき姿について書かれています。
 と同時にプルーデントマンルールやスチュワードシップコードなど運用者としての責任の原則論については、投資判断の心構えを自分のなかに作るにあたっての再確認となりました。
サブタイトルの「資金の流れで未来を変える」の部分については、兵器産業に資金が向かえば、結果的に人類に損失を与える可能性が生じますし、環境に配慮した事業に資金が向かうことで、永続的な地球を未来に残すことにつながるという点などを諸外国の歴史・事例を紹介しながら論じられています。
 これらの取り組みは巨大な資金量を持つ投資家が長期的に実践することで、有意義となるテーマであり、弊社のビジネスに置き換えたときには、資金量やファンド期間などに照らして、限界があるのですが、「資金の向かい先によって、未来が作られている」という側面はどのような場面にも当てはまるということを常に意識しながら、投資活動を考えたいと思うよいきっかけとなりました。
 弊社のビジョンは、「未来創造型の成長資金需要と安定的な資金運用ニーズを直接つなぐ投資銀行」です。このなかの「未来創造型」という言葉に、このような思いを込めております。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。
日本経済新聞、日経不動産マーケット情報、日経MJ、商業施設新聞、プロパティマネジメント、ARES不動産証券化ジャーナル







インタビューは以上になります。



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