帯広信用金庫「地域シンクタンク機能の強化と創業支援融資」

第3回 金融最前線コンテンツ「地域と成長」

帯広信用金庫・地域振興部・執行役員・部長・秋元和夫氏インタビュー

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photographs : 佐藤 亘

(HC)シンクタンク機能を信金の現業として、まさに部としてやられているのが素晴らしいですね。

(HC)シンクタンク機能を信金の現業として、まさに部としてやられているのが素晴らしいですね。
帯広信用金庫・地域振興部・執行役員・部長  秋元和夫氏/photo:佐藤 亘
(秋元部長)
「地域において『シンクタンクが必要である』という声にどう応えていくか、どういう組織立てにしていくか、というのを今まさに検討しているところです。先日もその視察のため、栃木県のあしぎん総合研究所、長崎県のながさき地域政策研究所、千葉県のちばぎん総合研究所等を訪ねてきました。色々とお話をうかがうなかで、地域でシンクタンクを独立した組織として運営していくには、人口や経済が相当規模ないと難しい。例えば、栃木県の200万人・長崎県の150万人・千葉県の600万人の人口でいうと、長崎県の150万人が一つの最低ラインになるのではないかと感じました。十勝の人口はたかだか35万人に過ぎません。この地域が、そういった組織を独自に持とうとしたら、独立採算を維持するのは難しく、行政なり企業なりで支えながらやっていかなければなりません。ただ、地域のシンクタンクという性格上、多くの地域の人々のニーズに応える必要があり、特定の企業にぶら下がっていては、そのニーズを満たすことはできません。このため、なおさら地域と広い関わりを持つ金融機関というものが大きな可能性を持つ組織として浮かび上がってきています。いずれにしろ、地域にシンクタンクが必要であるとしても、どんな機能を期待したシンクタンクかは十分議論されてはいません。地域の声としては、『なんとなく頼りになる存在が無いから、シンクタンクがほしい』ということになっているような気がしていますが、改めて地域の課題を考え、方向性を定めていかなければならないと思っています。」

(HC)その課題とは?

(HC)その課題とは?
(秋元部長)
「まず、どこの地域も直面している課題ではありますが、一つ目は、人口減少と少子高齢化という日本の抱える構造的な問題への対応です。二つ目として、自立した地域経済の確立を目指した、雇用創出のための厚みと広がりのある産業の振興、交流人口拡大に向けた経済と観光の振興が挙げられます。具体的には、高付加価値化によるコモデティからプロダクツ、サービスへの転換・展開、販路の開拓と拡大、地域色ある新たな視点からの産業クラスターづくりなどが挙げられます。三つ目は、十勝管内の機関・団体の連携強化、あるいは十勝管外との広域連携です。これは、産学官・農商工と金融の連携を推進するうえでも、また恵まれた地域資源の価値の再評価と活用、地域内での資金の循環と促進、域外からの資金の流入促進を図るうえでも大変重要です。」

(HC)
それを前提とした帯広信金の役割というものについては、どのようにお考えでしょうか?

(秋元部長)
「まずは、地域のために、短期的な採算のみにとらわれず、中長期的な地域経済・産業の振興を志向するということでしょうか。協同組織金融機関だからこそ、実現可能なことだと思います。また、地域経済を振興する観点から、取引先・非取引先を問わず、助言・支援をおこなうことで、長期的な視点からの果実を享受できると思っています。」

(HC)情報の受発信という面においてはどのようにお考えでしょうか。

(HC)情報の受発信という面においてはどのようにお考えでしょうか。
「昨年4月の立ち上げの際、まずは足元を見直そうということで、次の3つのことから取り組みはじめました。それは、情報の受信と発信、そしてリエゾン・コーディネータ機能の発揮です。まず、情報の受信についてですが、ここに行けば地域の情報がすべてわかるという機関を目指しており、地域資源の発掘・再評価を行うほか、地域の景気、産業動向、地域の行政・経済団体や中小企業の直面する課題などを調査しています。そうした課題解決やマーケティングに資するセミナー・商談会の開催、補助金等の支援制度など、様々な情報を収集した後、それらを整理・分析し、営業店と共有するほか、HPや季刊誌などを通じて幅広く地域に還元しています。一方、情報の発信については、地域のニーズに応じた助言・提言を行う機会は多いですし、売れるものづくりのためのセミナーや講演を通じて積極的に啓発活動等も行っています。」

(HC)リエゾン・コーディネータ機能の発揮とは具体的に?

(HC)リエゾン・コーディネータ機能の発揮とは具体的に?
「具体的な例を挙げますと、まず、十勝の地域資源を活かした製商品の開発や高付加価値化に向けて、帯広畜産大学との共同研究に本年度より新たなミッションを与えました。というのは、これまで帯広畜産大学とは地域の産業構造等について共同研究に取り組み、地域の産業振興につながる提言を行ってきましたが、より地域に身近な課題について、研究成果が目に見えるものを行うことも重要ではないかと考え、本年度は地域や事業者が抱える課題のうち、営業店が共同研究を希望するものを広く募集してみました。そして13件のテーマ案の応募があり、それらのうちで地域資源を活かした産業振興に資するものとして『更別すももの里』のすももを利用した十勝オリジナルパンの開発と商品化・事業化に関する研究に取り組むこととしました。また、理事長からもご紹介しましたように、東武百貨店の北海道物産展をバイヤーとして日本一に育て上げた内田勝規氏を、独立後アドバイザーに招聘したり、各種展示会やビジネスマッチング・商談会(アジア最大の食と飲料の国際展示会FOODEX JAPAN / 三島信用金庫との業務提携にもとづいた静岡県東部のビジネスマッチング・商談会 / 道内地銀の北洋銀行が長年続けてきたインフォメーションバザール等 )への出展支援や個別商談会の開催なども行っています。

(HC)
ビジネスマッチングや商談において成功のポイントは何だとお考えでしょうか?

(秋元部長)
「事業者が継続的に出展することによって、累積的に効果が上がるということだと思います。その理由の一つとして、バイヤーとのコミュニケーションが進んで改善を重ねるのが可能になるということが挙げられます。例えば、バイヤーから、『昨年はこの商品のここが不満だと伝えたけど、今年はそこをちゃんと改善しましたね、契約させてもらいましょう。』などということもあり得るのです。二つ目は、他の出展者の商品や売り方などに実際に触れることができるという点です。他の地域について、そこを訪れることなく優れた資源に関する情報を収集したり、理解を深めたりできますし、売り方や製品開発の手法を学ぶことができる。また、そこで出展者同士のコラボ商品が生まれることもあります。FOODEX JAPANにおいては、支援前の2008年の成約数は1社あたり1件という結果でしたが、支援を開始した2009年は1社あたり2件、翌2010年は1社あたり3件に達し、事業者が出展を継続し進化を遂げたことにより、成約件数という果実も大きなものとなってきています。この間、ビジネスマッチングや商談会の支援を継続して気づいたことは、地方にとって首都圏は大切なマーケットですが、地方と地方の連携・連動も大切だということです。地方同士が互いに地域資源の価値を認め合い、適正な価格で取引をするということも可能となるのではないかと考えています。今後とも色々な地域と色々な形で交流を進めていきたいと考えています。」

(HC)とかち酒文化再現プロジェクトという面白いプロジェクトが始まったそうですが。

(HC)とかち酒文化再現プロジェクトという面白いプロジェクトが始まったそうですが。
「十勝で失われた日本酒文化を再現することで、新たな産業の創出と幅広い関連産業の振興を図り、地域経済の元気を取り戻すことを狙いとしたプロジェクトです。地域経済の現状および将来に危機感をもつ当地の農商工や産学官のトップの方々が、当金庫の呼びかけに応えて、これに協力していくことを表明して動き出したというところです。いまのところは2012年の1月にみんなで新酒で乾杯できたらいいなと考えています。」

(HC)最後に、創業支援融資の成功例である、チーズ工房・十勝野フロマージュさんへの経営支援においてはどのように関わっているのでしょうか。

(秋元部長)
「農商工連携、循環型農業の実践者、地域産品の高付加価値化を狙った起業の象徴的な成功事例としてしっかりと見守っていきたいと考えています。開業後10年を経過して、マスコミ等から注目されるブランド力を形成し、管内チーズ工房としては大規模工房のひとつとなりました。ものづくり職人としての製造技術には信頼感があり、後継者問題等に格別不安はなく、しっかりとしたビジネスモデルも出来上がっており、残る課題は売上伸長だと考えています。一般に、当地の事業者は需要があるのに生産能力拡大に慎重になり過ぎる嫌いがあります。そうした中で、需要動向の拡大を見越して、それに見合った量産体制を整えたのが同社であり、地域経済振興部としては、今後の事業計画の策定支援・新製品開発に関する専門家によるアドバイス、ビジネスマッチング・商談会への出展支援など、同社の課題解決にむけた助言・協力・支援をできる限り行って、同社を後押ししていきたいと考えています。」


(帯広信用金庫 地域振興部 執行役員 部長 秋元和夫氏インタビュー以上)