2018年3月13日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.123『資産運用の歴史と実践』セミナーレポート

HCセミナー
■動画ダイジェスト



 金融とは産業を支援するものである、というのが従来成り立っていた関係でしょう。しかし近年の米国では、買収ファンドが主要株主として名を連ねることが珍しくありません。まさに、金融が産業を支配している格好です。その背景として、年金制度や投資信託を用いた個人貯蓄からの巨額の資金が、絶え間なく資本市場に流れ続けているのです。例えば、時価総額が膨れ上がった巨大製薬企業が創薬ベンチャーを次々と買収していくように、そこには産業金融の仕組みが出来上がっています。ただし、それを「資産運用」と呼ぶかは別の話ですが。

 昭和の時代には、日本には国民の貯蓄を金融機関に集積し、銀行融資あるいは保険会社の融資を通じて産業界に資金を還流させる仕組みが機能していました。しかしその後、世界の金融が変革を遂げる中、日本はこの仕組みが完成されていたが故に壊すことが困難となり、世界の潮流から取り残されることとなります。森信親金融庁長官の改革は、おそらくは最後の機会として、日本の金融を金融仲介機能から資本市場機能へ転換しうるものです。

 金融と、ガバナンスの問題とは、密接に結び付いています。米国においては、コーポレートガバナンス改革という言葉自体、理解されないのではないでしょうか。なぜなら、米国では、ガバナンスの悪い企業には金融がつかないからです。ところが、日本では、金融をつけて企業を存続させた後にガバナンスを改善しようなどと言う訳です。日米の金融格差の一端がここにあるのも頷けます。

 2013年金融安定理事会より公表され、2015年の金融行政方針で捕捉された、リスクアペタイトフレームワーク。リスクテイクの対象(意図的に取るリスク)とリスクマネージの対象(管理すべきリスク)とを明確にすることが求められています。アクティブ運用とインデックス運用を例に挙げましょう。アクティブ運用が意図的にとるリスクは、個別銘柄のリスクです。そして、管理するリスクは、市場リスクです。一方で、インデックス運用では、市場リスクは、意図的にとるリスクです。そして、管理するリスクは個別銘柄のリスクです。この二つの運用が、本質的に異なるというのは明らかでしょう。しかし、これらのリスク対象が混同されていることは、珍しくありません。リスクテイクの対象を間違えれば、運用会社にとっては致命傷となりますが、リスクテイク対象を一貫することは、大変困難なことでもあります。一般化できないものでありますから、リスクカルチャーとして、個人の経験に委ねられます。

近年、金融と実業の統合が進んでいます。資金を融通することだけが金融ではなくなってきています。銀行は預金を取り扱うため、規制によって自由が利きませんから、その中核となりうるのは、我々、資産運用業界なのです。


以上

(文責:杉本・大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。




■セミナーで実施したアンケートの集計結果



Q1. 日本の産業の明るい未来にとって、確定給付企業年金は、どのような位置づけにすべきとお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

1. 日本産業の国際競争力は、製品・サービスの質の高さに依存する。その質を維持するためには、雇用の質が重要となることから、安定雇用の柱として、改めて、確定給付企業年金は戦略的に重要なものとして再認知されるべき。
2. 確かに、安定雇用は重要だが、確定給付企業年金は、企業の財務的不確実性を大きくしてしまうので、確定拠出等への移行を通じた相対的縮小は、不可避。
3. グローバル競争に勝ち抜くためには、確定給付企業年金は、日本企業の人事制度として、不要である。
4. その他


Q2. 金融庁は、資本市場の機能強化を目的として、コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、フィデューシャリー・デューティーの施策を用いて改革を推進してきました。4年目となるいま、資本市場への参加者として、現時点での達成度はどの程度であると思われますか。


1. すでに達成された
2. 7割程度達成している
3. 5割以下の達成度
4. まったく進んでいない