2011/7/13開催 HC資産運用セミナーvol.043 セミナーレポート

HCセミナー
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。

今回のセミナーには、総勢44名の方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。

《 セミナーのまとめ 》

資産の売却による資金調達としてのアセットファイナンス
資金調達の一つの重要な方法に、資産の売却があります。単純な資産の売却ではなく、必要な資産の売却です。必要な資産を売るから、金融の一つの方法論として、意味をもつのです。このような資金調達方法の総称が、アセットファイナンス(asset finance)です。

資産担保金融との連続性
資産を担保にした金融と、資産の売却・譲渡・移転による金融との間には、経済的・法律的な視点での実質的同等性が、認められてきました。リース契約がそうでしょうし、譲渡担保の問題は、歴史的に古い議論です。

伝統的金融の限界
資本規制強化の中で、銀行融資は制約が多くなってきています。また、社債や株式の発行など、資本市場に依存することにも限界があります。企業にとって、調達元や方法の多様化は、重要な経営課題です。

伝統的な金融手法の革新
担保融資に代表される伝統的金融手法に対して、その枠に収めにくい資金需要に対応するように、アセットファイナンスは発展してきました。伝統的金融手法の限界が、アセットファイナンスの利用を促進しているともいえます。

売却(真正)後の利用・使用関係
アセットファイナンスは、本来的に企業経営に必要な資産を売却することで、資金調達する方法です。必要だから、売却しても、賃料・使用料を支払って、使い続ける場合が多い。そのような特殊な売却だから、よく「流動化」という専門用語が使われます。しかし、売却は真正でなければなりません。

実物資産の創出
アセットファイナンスの結果、実物資産(リアルアセットreal asset)が創出されます。オフィスビルや住宅などの一般的不動産の他、流動化の対象になるものの例としては、物流施設、運輸施設、輸送用機器、エネルギー関連施設などがあります。

キャッシュフローを生むがゆえの「適格な投資対象」
実物資産は、賃料・使用料等のキャッシュフローを伴っています。逆に、キャッシュフローを伴ったものだけが、適格な投資対象としての実物資産になります。キャッシュフローは、不動産などの企業の一般的業務用資産を外部化するときは、より安定しやすくなります。

事業リスクの外部化
キャッシュフローの安定性は、一般目的に裏付けられる場合だけでなく、特殊目的の資産でも、そこに強い社会的需要がある限り、安定します。その限りにおいて、事業リスクの外部化も含み得ます。例えば、資源在庫等の動産の流動化、超長期保有が必要な在庫(時間リスク)の外部化(森林資源など)、ホテル(いわゆるリミテッドサービスホテル)、介護付き住宅、流通施設等の特定目的不動産などです。

インフラストラクチャ
インフラストラクチャは、まさに、公共セクタのアセットファイナンスから生まれる資産です。

不動産へ投資しているのではなく、賃料収入を生む仕組みに投資している
不動産投資とはいっても、価格上昇期待だけの更地の保有は、投機的でこそあれ、適格性のある投資とはいえません。一方、商業ビル等の賃料収入を目的とした不動産投資は、りっぱな適格性ある投資です。

定期キャッシュフローを生む仕組み
不動産賃料に限らず、通行料、使用料、定期売却代金など、定期・安定的なキャッシュフロー創出の仕組みを、いかに考案するかが、実物資産投資の基本になります。森林資源も、紙パルプや建材の製造業者が安定的に買取る限りにおいてのみ、投資対象になります。

実物資産そのものではなくて、キャッシュフローを生む仕組み(買取り契約)が投資対象
定期キャッシュフローを生む仕組みは、契約によって構成されます。実物資産投資の理論的な対象は、実物資産そのものではなくて、契約です。リスクは契約に関するリスクです。実物資産の所有は、契約上の地位の対抗要件です。

レバレッジによる財務リスク
キャッシュフローを生む限り、収益性を高めるために、レバレッジ(借入)をつけることもできます。しかし、そのことが、財務リスクを発生させることに、注意がいります。

投資対象としての実物資産への融資
レバレッジの提供自体も、投資対象です。不動産を例にとれば、不動産そのもの(エクイティ100%)だけでなく、不動産向け債権、その債権の流動化であるCMBS、ファンドのエクイティなど、全て投資対象です。資産選択というのは、不動産に係る資本構成(キャピタルストラクチャ)選択のことです。

「金」の特殊性
投資対象としての金(金地金です)は、極めて特殊な投資対象です。キャッシュフローを生まない、純粋な価格変動だけの資産だからです。一方で、人類の歴史とともに古い投資対象でもあります。もしも、金が適格な投資対象だとすると、資本市場の中ではヘッジし得ない、資本市場の基底そのものが潜在的に持つリスクに対する、究極のヘッジ資産であると構成するしかないのではないか、と考えられます。


次回、2011年 第8回HC資産運用セミナーは『キャッシュフローを生む力としての資産価値』です。
是非とも皆様のご参加をお待ちしております。

なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。