シンプレクス・アセット・マネジメント株式会社
株式会社シンプレクス・フィナンシャル・ホールディングス
水嶋 浩雅氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱ photographs:佐藤亘
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Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。

Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。
 最終的に水は高いところから低いところに流れるように、経済現象や資本市場も途中経過は色々な事があっても、長い時間をかけて、必ず理屈に沿った効率的な方向に向かっていくと、私たちは考えております。
 我々はそのような基本認識のもと、個別企業の調査を徹底的に行い、非効率性が残る投資対象を絞り込み、投資をした後、その対象がミスプライスを解消するスピードを、経営者と対話することによって加速させるといったことを繰り返し行っております。一般的に日本の資本市場はまだまだ非効率な状態が随所にみられると思っておりますが、自分たちが係わることで、効率化に向けてそれを加速させるのだという強い信念を持って運用しております。
 具体的な投資プロセスについては、弊社バリューアップファンドを例に説明をさせていただきます。
 ファンドの組入銘柄数は30~40銘柄ですが、実際にはキャッシュフローと資産分析に基づいて発掘した割安銘柄300銘柄程度のユニバースを、4人のアナリストが常時モニタリングしています。
 このユニバースのうち約150銘柄程度は、私やポートフォリオ・マネージャーが定期的に経営者とコンタクトを取りながら定点観測を地道に行っており、こうした経営者インタビューを続けるなかで、実際にポートフォリオに組み入れるかどうかを総合的に判断していきます。
 投資をした30~40銘柄については、企業価値を向上させるべく様々なアイデアをイメージし、経営者と定期的に対話を行っていくことになります。経営者の方と我々投資家が同じ視線で企業価値について話をし、価値観を共有することによって、投資家と経営者の信頼関係を構築していくことがバリューアップファンド運用の重要なポイントになります。
 ファンド運用上もう一つのポイントになるのは、組み入れる際のトレーディングノウハウです。このファンドが投資対象としている銘柄は、市場出来高が必ずしも高くない為、マーケットを通じて買おうとすると、自らの買いで株価を押し上げてしまい、当初想定していた株価よりも高くなってしまうケースがあるのです。したがって、ブロックトレードなどを利用して、出来るだけ株価を押し上げないように投資する工夫をしております。
 また投資対象となる企業に、集中投資をすることから、ファンドの運用規模をコントロールすることにはかなり神経を使っております。現状の市場環境では1000億円程度までは運用できると思っておりますが、それを超えそうになった時は、新規募集を停止するようにしております(現在は新規募集停止中)。我々シンプレクスは、パフォーマンスを向上させる自信のあるストラテジーのファンドを組成することはもちろんですが、そのストラテジーがワークする、運用可能金額を常に意識して運用するというのが、我々のスタンスです。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ日本株バリュー戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ日本株バリュー戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。
 日本には上場会社が約3500社もあります。
しかしながら、アナリストが常にチェックしている上場会社はセルサイド、バイサイド合計しても1000社にも満たないのが、日本株市場の現状です。つまり上場会社のうち3分の2以上が、アンダーリサーチの状態なのです。この状態こそが「日本市場は宝の山」と私が言っている大きな根拠になります。比較的サイズの小さい会社は流動性の観点から、大手運用会社の運用対象にならず、まともなリサーチもされていないことから、優良会社であっても会社の持つ実力に比して超割安に放置されていることが数多く見受けられます。
また、日本には東京証券取引所の他に、名古屋、福岡、札幌といった数多くの地方取引所があります。加えて、東証だけでも、1部、2部、ジャスダック、マザーズ、プロマーケットと細かく市場が分かれている(地方市場にも各々セクションがある)せいで、投資家にしてみると同じ基準で上場会社を比較するのには難しいのが日本の実態であり、この環境こそが割安株をつくりだすことに貢献しております。
その他に、かなりの親子上場の会社が依然としてあるなど、日本の特殊性や独特なマーケットや環境が、考えられないディープバリューの状態を創りだしていると思っております。
先にお話しさせていただいたように、水は高いところから低いところに流れる。異常な状態は仮に時間がかかっても理屈にあったフェアーな状態に向かっていくと我々は思っております。
日本市場は先進国市場の中でも、バリュー戦略がワークするもっとも魅力的な市場だと考えております。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。
 私は、もともと日興證券でキャリアを積んだ人間です。日興での最後の役職は株式本部長でしたから、そのままでいれば日本の大手証券会社の論理で資本市場を考えて終わっていたのだろうと思います。 しかし、当時の私は、エクイティビジネスの責任者という立場から、海外の機関投資家や同業者とのやり取りをしていく事が多かったせいか、我々が常識と思っていても外国の人から見ると特殊に見えることが数多くあるのではないかと考えるようになっておりました。
 例えば、日本では銀行系、生損保系、証券系などの金融機関のグループがあって、傘下にアセットマネジメント会社があるというのが一般的です。そのため、日本のアセットマネジメント会社は一般的に、金融機関の販売網を活かすような商品、マスに売りやすい商品を組成することが大きな役目となっています。ところが、海外では、どこかの金融機関の系列会社としてアセットマネジメント会社があるという姿は案外少ないのです。逆にグローバルにビジネスを展開するアセットマネジメント会社が独立系として存在しているという例は数多くあります。彼らは、良い商品を創り、その商品を本当に理解する顧客に投資してもらうというシンプルな考え方で運営をしております。
 そんな日本の特殊性を感じていたとき、ソロモン・ブラザーズの債券・株式アービトラージグループが独立してヘッジファンドを立ち上げるという話を聞き、私は当時の日興證券の経営者に、新しい形の独立系アセットマネージャーを会社として応援しないかというプランを描き、実現させ設立した会社が、現在のシンプレクス・アセット・マネジメントです。
 シンプレクスを設立するお手伝いを終えた私は、その後日興証券を退職し、シティグループというグローバルプラットフォームの中で、日本株責任者として7年間働いておりました。
 一方で日系・外資系と会社は変わりましたが、証券会社の株式責任者という立場で、資本市場を見ていくうちに、セルサイドの論理ではなく投資家の視線で、日本の市場を変えていきたいとの想いが年々強くなり、永年働いていた証券会社を退職する決断をしました。
 退職後、以前設立のお手伝いをしたシンプレクスを、MBO(Management Buyout、経営陣買収)し、そのプラットフォーム上で、プロダクト第一主義のスタンスをとり、投資家の利益を常に考えて運営していく、アジアをベースにした独立系アセットマネジメントを日本に創る夢を実現したいと思ったことが、この業界に入った一番の理由です。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
 パフォーマンスを上げることに対して強い執念を持って運用しておりますが、同時に思い込みだけで投資先を見ていないか、見方が間違っていないかのレビューを定期的に行うようにしております。投資後も投資先のマネジメントと定期的に対話をすることにより、細かな変化を見逃さないように心がけております。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。
 弊社は、投資家の資産保全や、透明性の確保にはかなりの神経を使っております。
運用資産の保全を図るためには、厳格なコンプライアンス体制や高度なリスク管理体制という信頼できるプラットフォームを継続的に維持していくことが一義的には最重要だと考えております。
 また外部からのチェック機能を有効に利用しております。弊社の総てのプロダクトは原則として監査法人の監査を受けております。また、以前より会社の透明性を担保することを目的として会社監査を定期的に受けておりましたが、更に厳格にその透明性担保するため、今年1月には、弊社持株会社の東京証券取引所TOKYO PRO Marketへの上場を果たしております。 2013年6月には、米国保証業務基準(SSAE16)に準拠した「受託業務に係る内部統制の保証報告書」を取得し、毎年更新しております。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。
「賢明なる投資家」ベンジャミン・グレアム著。

 この本は、バリュー投資家で有名なウォーレン・バフェットが師と仰ぐベンジャミン・グレアムが60年以上前に書いた、バリュー投資の世界では古典的な本です。
 株式投資するとき、その企業の将来の利益を予測したり、将来のマーケットを予測して投資するのではなく、過去の実績、現在の財務状況を徹底的に調査し、その中から割安銘柄を選ぶという典型的なバリュー投資のフレームワークを解説しています。
 かなり古い本なのですが、バリュー投資の原則的なことを解説しているので現在のマーケットでも十分参考になり、私にとっては、バイブル的な本であると思っております。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。
 毎日チェックするとなると日経新聞ですが、FT、CNN、CNBCなどの海外メディアのものを意識して観ることで、思考的に国内バイアスがかかるのを防ぎたいと思っております。






インタビューは以上になります。



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