2017年9月19日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.117『株式投資の哲学と戦略』セミナーレポート

HCセミナー
■動画ダイジェスト

株式投資の存在意義

株式であれ、債券であれ、資金の融通は原則として事業性を有するものに限られる。したがって、資金が返済されることのみを考え、事業性の評価を差し置いて融資を行う銀行は否定されるべきである。一方で、融資の対象としては事業性が認められないものの、自己資本としての資金が補完されるのであれば、事業性のあるものとして金融の土台に乗ることが出来る場合がある。その際に用いられるのが株式であり、株式運用は事業性を生み出すためにはどうすれば良いかという創造的な発想から生まれるものである。誰かがとらなければ産業が成立しないようなリスクをとることに株式投資の本質的な意味があり、この点において株式は最初から最後まで創造的な金融として本来の存在意義がある。
株式の運用は基本的に、事業キャッシュフローの源泉 が悪いものに対して成り立つものではない。株式は資本構成の中で弁済順位が最も劣後するため、債券の利息を支払った後の剰余が多くなければ、株式としての価値は生まれない。 ゆえに、あえて優先権が低い投資を行うことの合理性が説明できなければならない。
そして、企業に対する関与も株式投資の存在意義の一つである。会社は放っておいても良くならないため、スチュワードシップ・コードに代表されるように、投資家と共通価値を創造するような対話原則を導入することが求められる。


株式市場を取り巻く環境

株式会社の資本構成が保たれなくなってしまった場合において、自己資本過剰な状態と負債過剰であるケースを考えることができる。自己資本過剰に陥った場合であれば、配当や自己株式の取得により問題を解消することができるが、問題となるのは負債過剰に陥った場合である。株式市場は理論通りに取引構造が成り立っておらず、公開会社が成長性の追求のためではなく、債務超過に陥った場合のように、自己資本を補完する目的で増資を行うことは、株主価値の大幅な希薄化が懸念されるため困難であることが多い。
また、伝統的な融資のフレームワークでも、債務超過に直面した企業に対して、同じ資金特性で資金供給をすることになってしまうため、ソリューションを提供することは難しい。
東芝は強力な事業性を有しているため、資金調達における工夫次第では継続的に融資を付与することが可能である。日本の銀行業界や運用業界には、多大な資金があるにもかかわらず、東芝の債務超過の問題に対して金融的な解決策を出せない理由は、資金量ではなく、金融の質的な観点で資金供給の環境が整っていないからである。
企業買収に関する資金調達においても難点がある。巨額の買収事案で負債調達をすると、のれんの償却に伴って償還時に自己資本が枯渇してしまう。自己資本を補完するために株式を発行しても、株式の希薄化が起きるという将来が確定してしまうため、産業界はみすみす巨大買収を見送り、機会を逃してきたという事実がある。
アメリカでは債務超過のように資金構成に欠陥が発生した場合であっても、メザニン・ファイナンスやプライベート・エクイティによる事業買収といった方法で問題を解決することができる。NYダウが20,000ドルを超えたことの背景には、アメリカの金融システムが全体として株式市場が上昇する方向へ機能しているという事実がある。メザニン、プライベート・エクイティといった、代替的な金融によって得られたメリットを享受しているに過ぎない公開株式ですら、大きなリターンを上げているのであるから、当該株式会社の周辺で、ソリューションの提供という真の努力をした主体が、より大きなリターンをあげるのは当然のことである。公開株式とはこれらの真の努力を行った主体のおこぼれを授かるフリーライダーである。


事業性の評価と投資機会

事業キャッシュフローの創出に、1円の貢献もしていない不稼働資産が、貸借対照表上から消えれば、実質的な変化は何も起こっていないにもかかわらず、会計上の自己資本が急激に悪化することがある。会計的に大きく価値が毀損されるが、実質的な価値に変化が無い状況は絶好の投資機会となりうる。投資機会を見つけるためには、資産が稼働していない状況が一時的なものであるのか、永久的なものであるかという点をアナリストは見極めなければならない。そのためには、会計情報などのオピニオンではなく、キャッシュフローや以下で紹介するカタリストといったファクトに基づく情報で判断される必要がある。どの程度の期間、資産を稼働させるかという観点で決定される減価償却あるいは配当割引によって算出した資産価値といったものはオピニオンである。


バリューとカタリスト(触媒)、売却規律

株式価格を上回る事業価値の差のことをバリューという 。 バリュー投資として運用を行うのであれば、バリューが発生した要因を判断しなければならないが、その要因を見つけたからといって、すぐに投資するという判断には繋がらない。バリューが解消されずにずっと割安なまま放置されることがあるからである。バリューの解消において重要な働きをするのがカタリストである。割安な状態が解消する速度に影響を与える要因を、投資におけるカタリストと呼んでいるが、これを考慮して投資を行うことで、投資の収益率にとって決定的な要素である時間を短縮することができる。
バリュー投資として運用を行うのであれば、通常はバリューが解消された時点で当該銘柄を売却し、銘柄の入れ替えを行い、投資対象を探し続ける必要がある。ここで、割安な状態だからといって、何年も株式を保有し続けることは収益性の低下を招くため、予め最大保有期間を決定しておく必要 がある。株式を購入してから売却する条件を考えるのは間違いであって、通常は株式を購入する時点で1セットの意思決定として売却する条件を決定しておく必要がある。



以上

(文責:岡﨑・大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。






■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. 株式投資は企業の成長が前提ですが、企業が持続的に成長するための必要な要素として、最も重要だと思われるものを一つだけお選びください。

1.技術、ノウハウ、専門性等
2.人材マネジメント
3.ガバナンス
4.顧客志向性
5.社会性(環境配慮、ダイバーシティ等)
6.その他

Q2. 投資家の視点に立ち、また株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、内外株式の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

1.日本株式を減らして外国株式を増やす方向で、調整を行う。
2.日本と外国という区分を廃止して、グローバル株式へ一本化する。結果として、日本株式の実質的組み入れが変動するのは当然。
3.相対的に割安な日本株式を増やし、外国株式を減らす方向で、調整を行う。
4.エマージング市場の株式を増やし、他を減らす方向で、調整を行う。
5.その他

Q3. 投資家の視点に立ち、また日本と外国の株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、アクティブ運用とインデクス運用の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

1.全てインデクス運用。
2.インデクス運用を増やし、アクティブ運用を減らす。
3.アクティブ運用を増やし、インデクス運用を減らす。
4.全てアクティブ運用。

Q4. 株式運用において、「バリュー」と「グロース」というような伝統的なスタイルの区分をすることについて、どのように、お考えになりますか。仮に、運用会社を選ぶ立場(投資家やコンサルタント)に立ったとして、一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1.そもそも、一定の既成概念で運用の手法を分類することは、不可能。
2.一定の運用手法の分類は、技術的にあり得ても、適当でない。運用会社に形式的なスタイルの枠に拘泥した運用を強制させる弊害があるのみで、有害。
3.全く自由な運用というのも、問題がある。合理的な分類方法に基づいて運用会社を選択する必要がある以上、不可欠。ただし、本当にリスク分散等の視点で有益かどうかは、わからない。
4.運用会社の選択にとっても不可欠だし、リスク分散等の視点でも有益。
5.その他

アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。

過去のセミナーレポート

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