2016年2月16日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.098『企業経営と年金ALM』セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト


 金融庁が重点施策としてフィデューシャリー・デューティーの徹底を掲げ、当社を始め数社が宣言した後しばらくブランクがあったが、この度、みずほフィナンシャルグループが宣言を行った。巨大金融機関がグループとして宣言したことは画期的であり、これを機に一気に浸透するだろう。フィデューシャリー・デユーティーはガバナンス改革の要諦である。年金に限れば、次のような連鎖が考えられる。まず、企業年金のガバナンス改革が冒頭になくてはならない。このことは、当然に投資運用業者のガバナンス改革を進める。それにより、資本市場における圧倒的投資家として、被投資先のガバナンス改革を導く。高度なガバナンスをもった企業はより高度な年金管理を志すという「好循環」が生まれるのである。フィデューシャリー・デューティーは第三のパーツとして導入されたが、この一連の施策の第一段階として、まず企業年金と投資運用業者のガバナンス改革を促進するべく、日本版スチュワードシップ・コードが、次段階として、企業のガバナンス改革を促すべく、コーポレートガバナンス・コードが導入された。投資運用業者の運用高度化と企業の資金調達の高度化が相俟って市場が活性化するのである。フィデューシャリー=プロフェッショナル=インデペンデントということである。フィデューシャリー・デューティーのもとでは、投資運用業者は運用の質のみで選ばれなくてはならない。規定するのはプロフェッショナルであり、プロの能力によってのみ会社は成立する。米国で独立系投資顧問会社がどんどん出来た背景である。大切な要件は、ベストプラクティスの追及で法令順守ではない。日本の忠実義務はプアーである。ベストを尽くさない逸失利益は罪にならないのである。だが、フィデューシャリー・デューティーとは一番良い投資運用業者を選ぶ義務である。

 企業年金資産を積み立てる意味は、第一に経済的な資産運用の付加価値の視点、第二に会計上の債務額定義の視点、第三に法律的権利保全の視点の三つから考察される。企業年金は受益者と株主の両方に対して責任を負っている。第一の経済的な視点は、資産運用高度化による付加価値によって年金費用を削減し、受益者の利益を守りながら、株主の利益を守るというものである。第二の会計上の債務額定義の視点では、年金債務と年金資産を相殺させることで、事実上の債務の弁済を実現することである。ここで問題となるのが、資産債務総合管理(ALM)による資産管理体制だ。英国のマッチング運用のように、退職給付上の資産と負債が連動するようにしてしまうことである。会計上の理由で、取れるリスクすら取らず、運用機会を放棄することは、結果的に株主の利益をそこなうのではないか。これは、金融機関特に生保や地銀でみられるような、資産の過半を国債等の無リスク資産で固め、自己資本を稼働させないのと同じである。運用能力を高度化させれば、適正なリスク管理の下で、運用の付加価値を追求できるはずであり、冒頭に話した「好循環」の狙いでもある。第三の法律的視点では、受益者の権利保全のために資産を管理する。ここでは、完全積立(特に非継続)の視点も重要である。

 またALMはシミュレーションであって、答えを出すためのものではない。ALMとは、企業の経営計画の中からもたらされた運用のビジョンから運用計画が策定され、その計画においての収益追求の方法が許容できるリスクの中で行われているかを検証するためのものである。常にそれは、シミュレーションによって、最悪シナリオでも耐えられるか試され続けなければならない。何年かに一度やって運用方針が作られることはありえないのである。

 年金基金と企業経営者の関係においては、特殊な財政基準や専門用語を経営者が理解しないのは当然であり、専門用語ではなく、経営の言語で説明しなければならない。経営と言語を一致させ、経営のスタンスと一致させることをもって年金の持続可能性を高めると確信している。よって資産運用において、経営とリスク管理には差異はなく、また金融機関の証券運用と年金の運用との間には、本質的な差は全く無いと考えている。



以上

(文責:杉本、大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。






■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1確定給付と確定拠出、どちらが従業員の利益のためでしょうか。敢えて一方を選ぶとしたら、どちらでしょうか。

<クリックで拡大>
1.確定給付
2.確定拠出

Q2確定給付と確定拠出、どちらが企業の利益のためでしょうか。敢えて一方を選ぶとしたら、どちらでしょうか。


<クリックで拡大>
1.確定給付
2.確定拠出

Q3確定給付において、規約型と基金型、受益者の利益保護の視点、企業責任の明確化、資産運用の意思決定等の管理運営の利便性など、総合的に勘案したとき、どちらが優れているでしょうか。敢えて一方を選ぶとしたら、どちらでしょうか。


<クリックで拡大>
1.規約型
2.基金型

Q4企業年金の資産運用の目的として、最も重視すべきことは、どれでしょうか。いずれも重要な論点であるにしても、敢えて一つだけを選ぶとしたら、どれでしょうか。


<クリックで拡大>
1.受益者の利益のために資産を保全すること
2.企業会計上の影響を最小化すること
3.資産運用の付加価値により、年金退職金費用を削減すること

Q5企業年金の資産運用において、前提にされている世界経済の展望や諸仮定は、企業経営において前提にされているものと、どのような関係にあるべきでしょうか。


<クリックで拡大>
1.基本的に同じであるべき
2.全く無関係に独立に設定されるべき
3.リスク分散の見地から基本的に反対の方向にあるべき

過去のセミナーレポート

過去に開催した弊社主催セミナーのダイジェスト・配布資料・セミナー内で行ったアンケートの集計結果についてご覧いただけます。