2015年6月16日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.090『債券と株式の基礎理論』セミナーレポート

HCセミナー

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 投資の基本として、投資対象とは資産そのものが収益を内包していて、持っていれば自然にキャッシュを回収するものですから、キャッシュを生まないものは投資対象とはなりません。将来のキャッシュフローが確実~不確実なものまでありますが、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いたものが資産価値となり、それ以上でも以下でもありません。
 
 年金は保険料が入ってきてから払い出されるまで平均20-30年、人口動態は推移しますし、社会が高齢化しているので短期化しています。将来の(払い出される)年金価値を100として、年金が給付されるまでを仮に20年、5%複利で運用されると計算すると、現在価値は37.7となります。その5%は割引率といわれますが、2%に引き下げると現在価値は67.3まで倍近く積み増さなければなりません。現在の日本の低金利状況を考慮すれば2%にも満たないですから現在価値は高くなり、多くの金額を準備する必要に迫られます。
 
 日本のようにゼロ金利が続いたら破綻は避けられないでしょう。例えば銀行の収益性を示す指標である総資金利鞘は年々ゼロに近い水準まで低下しています。マイナスになるということは調達コストを運用利回りで賄えていないことを意味しますので、適正な運用利回りが出せない現在の金利環境は限界を迎えています。金融費用が低ければ良いものではありません。ミクロな銀行間の金利競争で融資能力が落ちることはマクロ的な観点ではマイナスが大きいのです。アベノミクスで適正な水準まで金利を引き上げるのは当然ともいえます。

 債券運用とは、100円を利息(クーポン) △%で○年後にもらう等価交換する取引です。元本や利息を回収することがリターンになるわけですが、割引率が変化するということは機会利益・損失が生じるので、金利が変化すると債券価格も変動します。デュレーションとは、現在価値を加重平均した回収期間で、マコーレー・デュレーションとも言われています。債券価格の金利感動度は、デュレーションが長いほど大きいのですが、1%の金利変動に対する価格変動率は、デュレーションを「1+割引率」で除した値に近似します。これを修正デュレーションと呼んでおり、債券運用ではよく利用されています。ただし、±1%金利が変動したときの価格の変化幅がプラスとマイナスで異なり、債券価格と利回りの関係をグラフ化すると形状が下に凸型になっているその凸度をコンベクシティといい、コンベクシティまで管理すると精度が高くなります。本来、10%の金利水準が1%変化しても影響は軽微なのですが、現在の日本のように金利が著しく低い状況下で、金利が1%でも変動すると大きく影響してきます。

 ただし金利の予測は難しいですから、金利に連動しない安定キャッシュフローを得ることがポイントになります。資産担保証券ではトランチといって資産構成上に優先劣後構造を設ける高度なノウハウが必要ですが、商業不動産を担保に証券化した米国のCMBSは興味深い投資対象といえるでしょう。

 現在日本国債の金利は歴史的にも低く、国債に信用リスクはないのかという議論になりますが、国自体が黒字であり、実質的には国内投資家で発行分は消化されていることからリスクは顕在化していませんし、銀行からはリスクが無いものとみなされています。しかし、実際の価値を反映しているわけではないので、ユーロ円債等、海外起債をすると金利の適正化が起こる可能性はあります。

 債券運用において利息と償還金の支払いの確実性の程度を信用リスクと呼び、発行体によって信用損失の尺度を見込むため、その損失分が利回りに反映されます。発行体の信用リスクは客観的な機関から格付けを付与されており、通例ではBB以下に格付けされたものは投資不適格とされ金利が跳ね上がるのです。

 コーポレートガバナンスコードとは、株主の為だけでなく、日本経済再興の為に設計されたものであり、中長期的な企業価値上昇にも繋がって、結果として個人所得増大をもたらすのです。適正な金利は借り手側にとって早く返済させるインセンティブになるので、借り換えを促すような改革・経営ガバナンスが必要になります。スチュワードシップコードを機能させるためには、株主としてフィデューシャリー・デューティを遵守することが肝要になります。

 株式の価値は投資家に帰属する純利益の現在価値で、過去の収支を変数に用いて将来予測するアーニングモデルで予想します。会計的な概念のキャッシュフローの予測精度が高い場合、割引率が低いため、株価のボラティリティは低くなります。従いまして、ブランド価値を確立して市場占有率が高く、安定した事業基盤を有する企業の株価は概ね高くなります。一方で半導体産業のようにキャッシュフローの予測精度が低い業界の企業価値は、相対的に低く見積もられてしまいます。債券と同じで、リスクが高ければ現在価値が低く、経営改革が長引くほどキャッシュフローは後ろ倒しになるので、企業価値が低くなります。場当たり的にリストラで利益を出しても意味がなく、例え3期連続赤字でも、次期から安定的に利益を計上することこそが重要です。スチュワードシップコードでは、企業が長期的視点に立った企業価値向上をもって株価上昇をもたらすべく、投資家と企業家との対話がなされなければならないのです。



以上

(文責:峯岸)

  当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。





■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1債務コストを上回る付加価値を実現するためには、どのような資産構成を目指すべきだと思われますか。最も重要だと思われるものを一つだけお選びください。

<クリックで拡大>
1.債券を中心とした運用のなかで、金利リスクの多様化を図ること。
2.債券を中心とした運用のなかで、金利リスク以外のリスク(流動性、信用、為替変動、保険等の特殊リスクなど)の多様化を図ること。
3.株式、不動産など、債券以外の投資対象を組み入れること。
4.その他
5.無回答

Q2日本の株式への投資について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1.構造改革や企業統治改革など、個別企業の対応力に差がでてくるので、アクティブ運用が活躍する可能性が大きい。
2.日本と外国という区分を廃止して、グローバル株式のアクティブ運用へ一本化する。
結果として、世界に通じる日本企業だけが投資対象になれば、それで十分。
3.企業統治改革の視点から、大株主としての地位に基づき、経営者との対話を重視するような運用に投資の妙味がでてくる。
4.海外投資家もカバーできないような中小型株には、割安に放置された銘柄が多数存在し、魅力がある。
5.アクティブ運用に魅力がない。投資するならば、インデクス、もしくは、スマートベータしかない。
6.そもそも、日本株に投資する必要を感じない。
7.その他
8.無回答

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