2015年4月14日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.088『年金資産運用の原点:歴史と実践』セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト


当社セミナーも8年目に入り、一番人気のあったセミナーと二番目のものを一緒にして、今回のセミナーとしました。
 
【年金資産運用の歴史】

 バブルと言われた1989年当時、日米金融摩擦を背景に金融開放の槍玉に上がっていたのが「保険」と「年金の運用」でした。米国ではエリサ法の施行とともに機関投資家向け資産運用は根本的に変わりましたが、わが国では改正年金保険法が1990年に施行されたにも関わらず、アメリカの期待に反して劇的な変化は起こりませんでした。年金運用は変わる、フィデューシャリーの時代が来ると当時言われたものが、空白の25年を経て、やっと「もっぱらに」加入員・受益者の為にというフィデューシャリー・デューティーが問われる時代となりました。
 1960年代から厚生年金基金は単なる資産運用の受け皿ではなく、長期信用銀行と信託銀行ならびに生保に次ぐ第四の長期産業資本の担い手として、位置付けられていました。その後、欧米ではサッチャー/レーガンの時代に金融は新たな時代に入りましたが、わが国は金融自由化の流れに乗り遅れる形となり、1985年の外銀信託9行への営業認可を受けて、外資系金融機関の年金への参入が認められ、1990年には運用業務と給付業務の分離により投資顧問業者への年金運用の委託が可能となりましたが、規制改革によっても大きな変化にはつながりませんでした。
 その後、金融危機の1年間で、大きな変化がもたらされることになりました。1997年4月の日産生命の破たん処理を前に、運用規制を残したままで金融危機に直面すれば、規制自体が批判されることを恐れた当時の大蔵省は、1997年3月に銀行局長通達を廃止しました。これにより、適格年金を含めたすべての年金が規制の適用除外となり、年金運用の自由化が実現されました。
 幸いなことに、金融危機は、日本産業界の危機ではありませんでした。産業界と銀行界の立場が入れ替わり、政府が規制を放棄したことにより、信用力のない信託・生保が、母体企業・基金主導で排除されることになりました。
 当時、信託銀行には「3つのリスク」が存在しました。まず、信託法上、登記しないと第三者に対抗できないことが規定されているにも関わらず、信託契約書上は登記省略が明記されていました。また、自行為替ならびに銀行勘定貸と言う、信託勘定と信託の銀行勘定間の取引が無制限に行われていました。こういったことを真っ向から指摘することを通じて、変化がもたらされました。いろいろな人の一つ一つの努力が現在の基盤を築いていることをご認識ください。フィデューシャリーの立場の人は、常にベスト・プラクティスを目指さなければなりません。

 
【年金資産運用の実践】

 2002年の年金局長通知では、「忠実義務違反のおそれ」に関して、親密な会社との取引は「おそれのおそれ」、しかし、(親密先であると言う)それ以外に理由がない場合や他に条件が良い先がある場合は「おそれ」に該当するとしていますが、推計/推定を入れない限り利益相反の立証は不可能で、この様な実効性のないものではなく、形式的に利益相反のおそれ、可能性があることを要件としないと通知として意味がありません。
 現状、基金の理事は基金に対して、運用機関は基金に対して、それぞれ責任を負うとされていて、「連帯責任」が規定されていません。運用会社はフィデューシャリーであり、運用会社と基金は連帯して(加入員・受益者に対して)責任を負う形でなければなりません。
 また、「フィデューシャリー・デューティー」と言う言葉を使わなければならないことには理由があります。「忠実義務」では緩すぎて、訴訟の対象とはなりません。「コーポレート・ガバナンス・コード」を定めて受け入れたら、守らなければなりませんし、制定しない場合は、その理由を説明しなければなりません。
 適当に売ったり買ったりしていても、金商法違反に問われることはありませんが、違反がないことだけではフィデューシャリー・デューティーを果たしていることにはなりません。運用機関が自ら、もっぱらに受託者の為に行動する規範を示すことが必要となります。また、会計法人のトップが会計士でない、或いは病院の院長が医師でなくては、フィデューシャリー・デューティーを果たせません。
 メガバンクの運用業務統合に際して、フィデューシャリー・デューティーを念頭に置き、高い独立性をめざしと言った表現が使われている様ですが、これでは、独立性もなく、フィデューシャリー・デューティーを果たせていないことを自ら認めている様なものです。
 運用は「投資家」から始まります。投資家が誰に運用させるかを決めるのであって、運用会社が運用商品を売るなどと言うことは運用ではありません。投資家が持っていないスキルを外部に求め、「投資家」と「運用会社」が連帯して事に当たることがいうことがフィデューシャリー・デューティーと言うことになります。投資家は運用会社と連携して投資機会を発掘する必要がありますし、運用会社を育ててくれるのは投資家と言うことでもあります。
 お金の運用は継続されなければなりません。金融コングロマリット構想の下で、大手金融グループがたくさんの運用会社を買収し、その多くが消えて行きました。買収に際しては、次世代を担う人たちが新たに運用会社を立ち上げました。こういったことは繰り返されていますが、最近では買収者が経営に口を出さず、独立性が維持されるケースが目立っています。日本でも、そういう循環が生まれるとよいと考えています。
 お客様の資金が、起業家に伴って一緒に動くことが望ましく、年金基金それぞれが、起業家/ブティックに投資したことを誇りに思って頂きたい。

 
【Q&A】

Q: 年金にとって、日本国債に投資している意味があるのか? 金利上昇が来るとすれば、日本国債をどうしたらよいか?
A:予測をしないことがフィデューシャリー・デューティーですが、投資分析は運用に当たります。資本を食わない国債は、金融機関には投資価値がありますが、資本コストを考える必要のない年金にとっては、投資価値がありません。銀行が持てない資産にこそ、投資価値があると考えます。



以上

(文責:佐藤)

  当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。





■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 日本の産業の明るい未来にとって、確定給付企業年金は、どのような位置づけにすべきとお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

<クリックで拡大>
1.日本産業の国際競争力は、製品・サービスの質の高さに依存する。その質を維持するためには、雇用の質が重要となることから、安定雇用の柱として、改めて、確定給付企業年金は戦略的に重要なものとして再認知されるべき。
2.確かに、安定雇用は重要だが、確定給付企業年金は、企業の財務的不確実性を大きくしてしまうので、確定拠出等への移行を通じた相対的縮小は、不可避。
3.グローバル競争に勝ち抜くためには、確定給付企業年金は、日本企業の人事制度として、不要である。
4.その他
5.無回答

Q2 今、確定給付企業年金の資産運用のあり方を見直すとしたら、考慮すべき外的要因として、次のどれが重要だとお考えでしょうか。一番重要と思われるものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1.積立水準、成熟度の高まりと給付額の増加など、制度に内在する課題
2.雇用や人件費など、人事政策についての母体企業の経営判断
3.国際会計基準や退職給付会計など、財務政策についての母体企業の経営判断
4.投資環境の変化
5.その他
6.無回答        

Q3 本来のあり方として、運用会社を選定するための決め手とすべきなのは、どの要素でしょうか。決定的に重要な要素とお考えのものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1.過去の運用実績
2.運用戦略の合理性や、それを支える組織人材の質
3.窓口となる担当者
4.運用会社の知名度(規模、歴史等)
5.コンサルタント等の推薦
6.口コミ等の評判
7.その他
8.無回答   

Q4 現実には、運用会社を選定するための決め手となっているのは、どの要素だとお感じでしょうか。決定的要素と見られるものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1.過去の運用実績
2.運用戦略の合理性や、それを支える組織人材の質
3.窓口となる担当者
4.運用会社の知名度(規模、歴史等)
5.コンサルタント等の推薦
6.口コミ等の評判
7.その他

Q5 一定の評価期間を経過した後で、運用成績が悪いという事実がある場合、運用方法・組織・人材に基本的変化が見られないときは、どのような対応をとるべきだとお考えですか。一番近いものを、一つだけお選びください。

20150414HC
クリックで拡大

1.実績は実績なので、解約もしくは減額をする。
2.何もせずに様子をみる。
3.運用が一貫している以上、将来への回復が見込めるので、むしろ積極的に増額する。
4.その他
5.無回答


Q6 一定の評価期間を経過した後で、運用成績が悪いという事実がある場合、運用方法・組織・人材などについて、積極的な改善の努力をしているとみられるときは、どのような対応をとるべきだとお考えですか。一番近いものを、一つだけお選びください。

20150414HC
クリックで拡大

1.実績は実績なので、解約もしくは減額をする。
2.何もせずに様子をみる。
3.運用が一貫している以上、将来への回復が見込めるので、むしろ積極的に増額する。
4.その他
5.無回答

過去のセミナーレポート

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