2014/12/1開催 年金資産運用実践講座第2回・セミナーレポート

HCセミナー




第1部「企業経営の中の企業年金の資産運用」

企業年金を管理する企業自身はトラストとしての責任を負い、企業の自己信託ということになります。9月11日、金融庁から金融モニタリング基本方針が発表され、フィデューシャリー・デューティーについて言及されました。トラストは一種の関係性でありますが、これにはフィデューシャリー・デューティーが課されます。1つは自己取引の禁止。もう1つは「専ら受益者の為」になされるものでなければならないというものです。高度経済成長期、企業は猛烈な資金不足であり、長短分離政策の下、企業年金制度は「専らに国策の為」に利用されました。さらに企業は社内預金、財形貯蓄制度という名目で従業員から借入をしておりました。

この従業員からの借入と同等のものには、給与後払いの性格を持つ退職金制度もあり、熟練による雇用の質の確保と長期勤続奨励を基に、人事制度上重要な役割を果たしていました。税制上、退職金の一部を一時金で支払う代わりに年金化し、外部拠出することを条件に掛金の損金参入が認められたことも、年金制度導入の後押しとなりました。
自動車製造のオートメーション化以前、米国のGMやフォードの製品の品質は熟練工の技術により支えられていたため、年金制度を含む手厚い待遇により、雇用の質=製品の質を確保していました。

金融庁でいう「好循環」、経済産業省でいう「インベストメント・チェーン」は、企業から掛金を受け取った企業年金が、運用機関を通じた産業界への資金供給源となり、国内産業を発展させようというものです。自分たちの年金は、国内株式、国内債券、国内企業の貸付等に向いておらず、日本の産業界に十分に供給されているとは言えません。例えば国内の年金資産が、海外のエネルギーファンドを通じて、米国のエネルギー発展に大きく貢献していたりします。

第2部「伝統的ALMに代わる長期の視点」

統合的リスク管理の視点についてですが、例えば某大手商社はプライベートエクイティを一切やりません。商社自体がプライベートエクイティであるとして、リスクの集中が起きてしまうと考えて一切やっておりません。年金運用の問題をより広くして企業経営の中に沈めれば、一貫したポリシーの基における、継続的な運用が可能になるでしょう。それには、企業自身のリスク管理の考えを取り入れる必要があります。

年金の大半の掛金は、初期段階では、将来の給付原資として責任準備金に組み入れられます。これが定常状態になりますと、掛金はすべて現在の給付にあたり、責任準備金の運用収益も合わせて均衡します。今の日本はこの定常状態に近いと言えます。昭和40年~50年代は、掛金の使い途がなく、ただ単に組み入れられていました。現在と資金性格は違い、当時の運用は比較的積極的なものでよかったでしょう。

ALMから答えは出ません。経営計画は大きな賭け、固有の賭けです。賭けをする前に合理的に妥当性を検証するでしょう。検証せずに経営行動はしないでしょう。経営行動は決断をする前に検証すると思いますが、検証から経営行動は生まれません。同様に、ALMから資産運用方針が出るわけはありません。資産運用方針を立てれば、ALM的な検証はするでしょう。答えが先になければ、ALMはしてもしょうがないです。

リスク管理手法の1つにVaR、Value at Riskがあります。このVaRは、例えば株価上昇過程にはリスクを過小評価し、たった1つの大きな下落がリスクを過大評価します。一旦リスクが過大評価されると、とれるリスク量が激減し、手放すべきとしてさらに下落していきます。リーマンショック時には、全員が同じリスク管理手法を使ったことにより、一斉に同じ行動がとられました。結局国家介入以外に救いようがないということで対応がとられました。

統合的リスク管理の元、年金基金は金融機関にできない運用ができるはずです。金融機関が同じリスク管理手法により売った時に、年金基金がそれを買うということができるはずです。だからシステムが安定するでしょう。それが「好循環」となります。

以上

(文責:広川 聡)

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