2014年7月9日(水)開催 HC資産運用セミナーvol.079「成長資本としての株式への投資が成り立つ条件」セミナーレポート

HCセミナー

■動画ダイジェスト



1.株式投資とは
株式だから投資対象、というのは間違った考え方です。本来、株式という「紙」に投資しているのではなく、株式を発行している企業の事業が生み出す事業キャッシュフローに投資しているのです。株式投資の根源は事業投資です。投資対象としての株式の評価や銘柄選択が成り立つのは、その基礎となる事業の評価や選択が成り立つ限りにおいてです。また、経営者の課題とは企業価値を上昇させることであり、それは資本構成(財務諸表の右側)からの独立を意味しています。

2.事業価値と資本構成価値
CEOである経営者の役割は、事業価値を高めることです。そして、事業価値は資産構成で規定されます。事業価値の改善は、資産構成を変化させ、結果的に資本構成を変化させますが、資本構成からの操作では事業価値の改善はなし得ないのです。また、事業価値を大きく変えることなく、資産構成を変化させることもできます。これが、資産流動化であり、アセットファイナンスです。
順序として次にくるのが、この価値向上のための最適な資本構成管理であり、その役割を担うのがCFOです。債務を増やせば資本効率は上昇しますが、財務不安定性は増します。一方、債務を減らせば資本効率は低下しますが、財務安定性は増します。保守的な株式投資の見地からは、債務比率の高い企業は危険ではないのか、逆に企業の大きな債務負担を正当化する条件とは何か、と考える必要があります。このように、CEOとCFOが企業に存在することで、意思決定の混同を避けることができます。

3.本来の事業投資としての株式投資
株式投資の根源はキャッシュフローを生み出す事業への投資です。投資対象としての株式の評価や銘柄選択が成立するのは、基礎となる事業への評価や選択が成り立つ限りにおいてです。株式は企業の資金調達手段として発行されますが、定期的な利息支払いや満期弁済がないが故に時間に拘束されないという利点があり、企業は成長基盤を築く長期的視点に立った設備投資等ができるのです。よって企業に成長志向がなければ株式による資金調達の必要もなく、株式投資も成り立たないということです。株式の資産区分は最下位です。株主権利は債権者や社債保有者の権利に劣後するため、株式投資は企業経営者に対する信頼が基礎であり、株主を守りたいと考える経営者によってのみ担保されるのです。

4.株主の権利
株主の権利は1)配当を受け取る権利、2)議決権、3)残余財産分配権しかありません。株式を所有することの本来的な意味は、将来にわたる配当を受け取る権利を手に入れることです。株価の上昇があり得るとしたら、それは将来の配当の期待値が上昇することの結果となります。また、内部留保の正当性は事業への再投資効率性に依存します。つまり、内部留保として効率的に再投資できないのであれば、配当に回して配当性向を高めるべきだと思います。

5.株主投資の論理
「株式に投資するか、しないか」ではなく、株式に投資するなら一定の条件が必要だと考えてください。株主は、事業選択、資本構成選択、資本構成改善などから銘柄を選択し、収益源泉を分散させ、経営者とともに事業キャッシュフローの質と量を高める努力を行いますが、その選択において配当性向や、現在価値、清算価値、純資産、資産の運用効率といった指標や割安、成長の観点などの基準を見ていくのです。
良い事業を持つ企業は良い企業です。良い企業は適切な時期に適切な経営革新を行うことで、事業価値が企業価値に現れてくるような変革(キャピタルストラクチャの合理化や不採算事業の整理)や、事業価値を一層高めるような変革を行うはずです。企業の変革を促すような強い主張を持った投資、社会変革の視点に立脚した投資は、企業の自己変革に対する建設的な助言となり、まさに変革の触媒(カタリスト)として機能するのではないでしょうか。

  
(文責:大橋理瑛、白木智雄)

  当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。


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HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1 投資家の視点に立ち、また株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、内外株式の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

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1.日本株式を減らして外国株式を増やす方向で、株式内部の調整を行う
2.日本と外国という区分を廃止して、グローバル株式へ一本化する。結果として、日本株式の実質的組み入れが減るのは当然
3.相対的に割安な日本株式を増やし、外国株式を減らす方向で、株式内部の調整を行う
4.エマージング市場の株式を増やし、他を減らす方向で、株式内部の調整を行う
5.その他

Q2 投資家の視点に立ち、また日本と外国の株式全体の組み入れを維持するという前提のとき、アクティブ運用とインデクス運用の配分について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思わるものを、一つだけお選びください。


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1.全てインデクス運用
2.インデクス運用を増やし、アクティブ運用を減らす
3.アクティブ運用を増やし、インデクス運用を減らす
4.全てアクティブ運用

Q3 株式(日本および外国)に対する年金基金の投資のあり方について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。


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1.期待収益率と許容できるリスクを考えると、原理的に株式投資はなじまないので、投資する必要はない
2.年金基金にとっては、必要不可欠な投資対象であり、組み入れ比率の問題はあるにしても、なくなることはあり得ない
3.状況に依存するものであって、魅力度がないときには投資する必要はない。要は、魅力度に応じて、ゼロも含めて、組み入れを検討すればよい
4.その他
5.無回答