株式会社エス・オー・ダブリュー
代表取締役 阿部亨 氏インタビュー

interviewer:橋本 あかね(HCアセットマネジメント㈱ 常務取締役 運用部長) photographs:佐藤 亘
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阿部様がお持ちの投資哲学と運用の特色についてお聞かせください。

阿部様がお持ちの投資哲学と運用の特色についてお聞かせください。

 投資哲学として、私は、投資対象そのもの及び投資対象の価値を左右する「人」の両方をしっかり見て投資をしたいと考えております。特に、投資対象の価値を左右する方々と、プライベートな関係を構築し、その投資対象の事をしっかりと良く知ると、魅力的な投資機会が、まだまだ多く存在していると思っております。
 これは、有価証券報告書や格付レポートなど、「紙」や「画面」を見て投資する手法とはスタンスが異なります。我々は、市場関係者などがリスクがある、と考えているものの中に、実態掌握をしっかり行うと魅力的な投資機会があると考えており、その投資価値を上げるサポートを行い、しっかりとリスクのモニタリングを行うという信念を持ちながら、投資家にリターンを提供していきたい、と考えております。従って、繰り返しになりますが、投資対象の価値を左右する方々と、プライベートな関係を構築することが非常に大事だと考えております。
 また、投資は企業金融の正常な流れに立脚しているべきで、投資家あるいは事業者、どちらの利益に傾きすぎていても長続きはしない、とも考えております。Win-Winの関係を築くことが重要であり、その機会を双方に提供することが、持続的で双方に利益のある投資となりうる、ということです。

 このような考え方になったのは、私が銀行出身だからかもしれません。銀行は投資機会情報の宝庫でした。大変魅力的な事業者は数多く存在します。そして、銀行も預金者からお金を預かって運用するマネージャーであり、元本をお返しすることが大事です。
我々も、リスクを取る代わりに「適切な」リターンを頂く、そしてしっかりと、かつての銀行のようにモニタリングもさせて頂く。そしてリスク調整後のリターンを極大化していき、確実に元本を守りたい、と考えています。

 そのため、運用の特色としては、長期投資、インカムゲイン重視のスタンスを採り、余計なリスクを抱えないためにもレバレッジを掛けない、あるいは極力抑える一方、市場参加者のリスク認識と、良く知ることで判る真のリスクとのギャップを狙うことで超過収益を上げていきたいと考えております。

何故今アセットファイナンスに投資機会があるのか教えてください。

何故今アセットファイナンスに投資機会があるのか教えてください。
 環境要因としては、銀行に対する資本規制の問題が大きいと考えます。銀行は、国債、地方債、優良企業貸出、住宅ローン以外、積極的に取り組むことが困難となってきています。90年代末頃から貸出額が減少傾向にあることの背景として、様々な要因が重なり合っているからだとは思いますが、この資本規制が関わっていることは間違いないでしょう。また、企業サイドとしても、様々な経営指標によって評価されたり、あるいは時価会計の導入という大きな流れの中で存立する上で、自己資本や借入でアセットを膨らませることは、あまり誉められた経営とは言えなくなっています。更には、銀行に対する資本規制が、企業が借入でアセットを増やすことのリスクを増幅させている面もあります。
 より本質的には、間接金融と直接金融(株式、社債等の発行)は、企業にとって非常に大事な資金調達手段ですが、その二つだけでは不備があり、資金調達が多様化されることが日本企業を支えることになると考えています。アセットファイナンスは決して新しい資金調達手法ではありませんが、このような環境においてはニーズがある、それゆえに投資家にとっての投資機会がある、と考えています。

前職から運用の仕事に携わろうと思われたきっかけについてお聞かせください。

前職から運用の仕事に携わろうと思われたきっかけについてお聞かせください。

 先ほども申し上げたとおり、前職は銀行員だったのですが、事業者を応援する仕事はとてもやりがいがありました。ところが、97,8年頃から始まった日本の金融危機において、良い企業であっても、貸出を思うように行えなくなり、間接金融の限界を目の当たりにしました。
 その後、銀行を飛び出し、SOWという会社を作ったわけですが、自分で経営し、自社の増資を行ったり、企業のファイナンシャルアドバイザリー業務を受託する中で、直接金融の限界も大きく感じました。
 また、SOWでは不動産のアセットマネジメント業務を受託させて頂いておりますが、銀行もファンドも、お金をお預りしている「マネージャー」としての機能が求められている中、その『モラルの問題』が、徐々に顕在化してきているのではないでしょうか。運用の仕事に携わる以上、しっかりとした、モラルを持つべきであり、業界全体がそうでなくてはならない、という問題意識を強く感じております。
 そんな中、我々、SOWというチームは、知識・スキル・経験、そしてモラル(企業文化)はどうか? と。運用会社に相応しいのか? と。ずっと自問自答を繰り返し、創業から10年かかって、ようやくファイナンスと不動産の経験者を融合させた良いチームになってきたと思います。
 今の、我々だからこそ出来る、強みを発揮できる事業領域こそ、間接金融と直接金融の不備を補う、アセットファイナンスという投資機会の創出であり、投資家・事業者双方の選択肢を増やすことが出来ると感じております。そして、本当に愚直に、マネージャーとして一流のモラルを持ち続けることを追求したいと考えてます。

ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。

ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
 信念として、社会的に意義のある投資を実行したいと考えております。投資対象として短期的に儲かる、という一点のみでは投資しません。やはり投資対象の人となりを見て、信頼に足る、意義を感じられる、応援したくなる、Win-Winの関係を築くことの出来る投資対象に絞りたいと思います。
 当然のことながら、自分のお金でも投資できると思う案件しか取り上げません。
 もう一点重要な事は、何故その投資を実行したのか?、誰に問われたとしても、説明に窮する投資は、実行しないということです。先ほどもモラルという点につきお話をさせて頂きましたが、我々は、ベンチャー企業ですから、譲れないものは譲らないというプライドで経営ができる自由があります。ファンドの理念に照らし、自分の信念に照らし、正しいと思える投資を実行していきたいと思っております。
 一方で、担当者は、投資対象にのめり込みがちです。行き過ぎると投資対象にばかり有利になることがあります。その点の牽制が十分に働くような仕組みづくりはもちろん心掛けております。
 蛇足ですが、事業者にとって、投資を実行しないことこそ、結果として事業者のためになる、というケースも非常に多いと感じております。

どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

 どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

 企業金融において、資金使途は大きく分けて2つあります。一つはP/L上の販管費、特に人件費に象徴される費用と、もう一つはB/Sの左側部分=アセットに向かうもの。人に投資することの重要性は、理解しております。しかしながら、これは費消されてしまうもの。増加運転資金や研究開発資金というようなものですね。その返済原資は、まさに事業収益ということです。
 一方で、アセットに向かう資金は、アセットを全てきちんと管理し、適切に時価をコントロールしていれば、必ず返ってくる、と考えています。アセットそのものが資産保全であり、それゆえに投資価格そのものが大変重要です。さらに、アセットから生み出されるキャッシュフローがしっかりしていれば、期中償還がきちんと行われるし、それこそが流動性がある資産だと考えます。これらのことにこだわって、お客様の資産保全を図りたいと思います。
 その意味で、自分でアセットをコントロール出来ない環境に自らを置くこと、即ち、レバレッジを掛けることには慎重でありたいと考えております。
 そして、我々は、様々なアセットの流動性や、アセットから生み出されるキャッシュフローの安定性を、契約書等でコントロールする、その出口を確保するプロ集団になることを目指し続けるということを申し添えたいと思います。

投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。

投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。
 最近、読んだ本の中では、『バーゼル敗戦 銀行規制をめぐる闘い』(日本経済新聞出版社/大田康夫著)という本が、印象に残っております。やはり、どんな投資が良いのか? これからの経済・金融環境はどうなるのか? という大きなテーマを考える際、今後起こるであろう銀行の資本規制の問題は、その方向性を規定する大きな材料になると考えております。

主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

 月並みですが、日本経済新聞です。日経電子版も重宝しています。その他、ダイヤモンド等の週刊誌、プレジデント等の月刊誌です。弊社ならではの情報としては、商業施設新聞、日経MJ等の流通情報誌や、日経不動産マーケット情報や月刊プロパティといった不動産情報誌・webサイトもあります。
 余談ですが、実は隠れ四季報マニアです。今は控えていますが、個人株式投資家でもあります。これまでの投資歴としては結構勝たせてもらっています(笑)。

インタビュー後記

インタビュー後記
サブプライムをきっかけとした世界的な銀行の資本規制強化で、ファイナンスの仕組みは大きく変わろうとしています。
銀行に代わるメインバンクが必要となった今、アセットファイナンスという手法が具体化してきました。
社会的必然性の高い調達ニーズに応える手段。国内投資家の選択肢が広がりました。
活用状況や今後の進化から目が離せません。





インタビューは以上になります。


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