見える化

2018/02/28更新

金融庁が2017年3月30日に確定公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」の第三原則は「利益相反の適切な管理」と題されたものである。金融庁の森長官はある講演で、企業年金の資産運用における利益相反のおそれについて言及しているが、現時点で原則へ積極的にコンプライ、即ち採択して自己を律する規範とする企業は、ガバナンス面で一流企業であることを証明できる。仮にそれが有名大企業で、大きな社会的反響を呼ぶとしたら、逆に他の企業はガバナンス面で二流であることを証明することになり、対応を促されることになる。金融庁は、こうした社会の監視が働いて自浄作用が進むことを「見える化」と呼んでいて、行政課題の実現手法に位置付けている。おそらくは、企業の自主的な対応についての単なる楽観的な期待を超えて、「見える化」による外圧を働かせる意図もあるであろう。どちらにしても、企業の対応いかんにかかわらず、金融機関は、当然のこととして、原則にコンプライするわけだから、企業年金における利益相反の可能性は、排除される方向に急速に動いていくと考えられる。

2016/12/01更新

金融庁が公表した2016事務年度の金融行政方針のなかで、最大の眼目は「見える化」である。顧客が、自らのニーズや課題解決に応えてくれる金融機関を主体的に選択できるように、顧客から金融機関の行動や取組みが良く見えるよう環境整備を行い、「見える化」を通じて、金融機関の取組みが顧客から正当に評価され、より良い取組みを行う金融機関が顧客から選択されていくメカニズムの実現を目指すものである。これは、規制によるものではない。革新と創造は、各金融機関が顧客の視点でベストを尽くすことによってのみ、起き得るのであり、真に顧客の利益を保護するためには、各金融機関は、顧客の視点にたち、創意工夫のベストを尽くし、かつ、ベストを尽くしていることを顧客に訴えていく必要がある。そうすることで、ベストを競う質の高い競争環境を整備していく、これが、当年度の重点課題である。

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