フィデューシャリー・デューティー (Fiduciary Duty)

2017/08/09更新
フィデューシャリー・デューティーとは、第一に、専らに顧客のために働くということ、即ち、最高度の忠実義務であり、第二に、専門家としての高度な知見を前提にして最善をつくすこと、即ち、最高度の注意義務である。従来の日本法のもとで考えられてきた忠実義務と注意義務について、適用の範囲を広げ、質の高度化を図る理念である。そして、忠実義務の高度化の方向に、金融機関の利益に対して顧客の利益を絶対的に優先させることが、注意義務の高度化の方向に、表面的な顧客満足を得ることではなく真の顧客の利益に適うことが、それぞれ導かれてくる。しかしながら、日本におけるフィデューシャリー・デューティーは理念にとどまるため、金融庁は、それを規範として具体化する必要があるとの判断のもと、2017年3月「顧客本位の業務運営に関わる原則」として、客観的な規範に再編成した。ただし、この規範は、各金融機関が自己のプリンシプル、即ち経営原則として定めるもの、いわゆるソフト・ローと呼ばれるものであり、金融庁は、「見える化」により、当該金融機関の良し悪しが明確に認識され、市場原理が働くことによって、顧客本位に徹することができない金融機関は淘汰される環境整備を行っているのである。

2017/06/27更新
フィデューシャリー・デューティーとは、2014年9月に金融庁が「金融モニタリング基本方針」で、資産運用関連業務の高度化のための、中核をなす理念として導入したものである。内容は、高度な忠実義務ということに尽きるが、資産運用関連業務に携わるものは、専らに顧客、即ち最終投資家のために働け、という当然の義務を意味する。ただし、この義務は、金融庁によって強制されるものではなく、自主自律的に取り組まれるはずのものであり、自身の自律として描く金融機関の経営原則として、実現しなくてはならない。その内容を整理すれば、合理的報酬・利益相反取引の排除・ベストを尽くす義務の三点に集約できる。



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