金を通して世界を読む

金を通して世界を読む

著者 豊島 逸夫
出版社 日本経済新聞出版社
発行日 2008/12/18
金(カネではなくてキンです、ゴールドです)といえば、豊島逸夫氏、第一人者による金の解説本です。もっとも、「金の本」というよりも、書名の通り、「金を通して世界を読む」 本ですね。
今、金の価格は、上昇しています。実のところ、2001年9月11日のテロ事件くらいから上昇し始めて、2008年の金融危機を経て(あるいは、金融危機ゆえに)、さらに上昇しています。なんと、8年間で4倍以上に騰貴しているのです。
金価格上昇の背景には、何かがある。その何かを考えることは、金に投資する、しない、に関係なく、現在の金融市場全体を理解するのに不可欠なのです。なぜなら、金は人類の歴史とともに古い投資対象だからです。深い文化的・社会的背景をもつ金は、単なる投機の対象ではないのです。ですから、金価格の動きの裏で、世界の何かが動いているのです。これは、その何か、を考える本です。
詳しくは、本を読んでいただけばいのですが、一つだけ重要な論点を挙げれば、金は、ごく最近まで(人類の長い歴史の中では、ほんの昨日程度の話です)、信用システムの基礎に置かれていたという事実、即ち信用システムを「外から」支えてきた資産であるという事実です。
我々が資産と看做すものは、ほぼ全て、そもそも貨幣そのものが、信用に裏付けられた権利証文です。信用システムが壊れると紙屑になります。しかし、金だけは、信用システムの外にあるので、紙屑にならないのです。その金の価値が上昇するということは、どういうことか。深く考えると、怖いことではあるのです。
なお、同じ著者による新しい本「3000円から始める金投資」 (小学館30分でわかるシリーズ 小学館2009年9月29日発行)があります。その名の通り、30分程度で読み切ることのできる便利な本です。お忙しい方は、こちらをどうぞ。
また、2009年の7月16日から年9月 2日へかけて、当サイト上で、「金(金の地金)は、定期収益を生まない単なる価格変動だけの資産ですが、一方で、人類の歴史とともに古い代表的投資対象です。さて、この金は、機関投資家にとって「適格」な投資対象といえるでしょうか。」というアンケートを実施しました。結果をご覧下さい。

この本を紹介した人

森本 紀行

HCアセットマネジメント株式会社代表取締役社長

東京大学文学部哲学科卒業。ファンドマネジャーとして三井生命(現大樹生命)の年金資産運用業務を経験したのち、1990年1月ワイアット(現ウィリス・タワーズワトソン)に入社。日本初の事業として、企業年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。年金資産運用の自由化の中で、新しい投資のアイディアを次々に導入して、業容を拡大する。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資のタレントを発掘して運用委託するという、全く新しいタイプの資産運用事業を始める。