切手でもうける本

切手でもうける本

著者 米原徹夫
出版社 切手経済社
発行日 1964/11/1
 内容は、たわいのないものです。ポイントは、内容よりも、1964年という発行年にあります。いわずとしれた、東京オリンピックの年なのです。実は、1964年のオリンピックから、1972年の沖縄返還のころまで、記念切手の価格の上昇を当て込んだ、切手ブームというか、切手バブル、切手投機がありました。それを背景に、この『切手でもうける本』が、発行されたのです。そして、沖縄返還の後、バブルははじけました。要は、本土復帰により、琉球政府郵政庁が発行してきた沖縄切手が発行されなくなり、希少性がでるということを材料にした投機資金の流入が、まさに、沖縄切手バブルを生んだということです。
 実に興味深いのが、沖縄切手買いを仕掛けた投機筋の一つが、『切手でもうける本』の出版元である切手経済社だったことです。この会社、バブルのはじけた1973年6月に破綻したのだそうです。

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この本を紹介した人

森本 紀行

HCアセットマネジメント株式会社代表取締役社長

東京大学文学部哲学科卒業。ファンドマネジャーとして三井生命(現大樹生命)の年金資産運用業務を経験したのち、1990年1月ワイアット(現ウィリス・タワーズワトソン)に入社。日本初の事業として、企業年金基金等の機関投資家向け投資コンサルティング事業を立ち上げる。年金資産運用の自由化の中で、新しい投資のアイディアを次々に導入して、業容を拡大する。2002年11月、HCアセットマネジメントを設立、全世界の投資のタレントを発掘して運用委託するという、全く新しいタイプの資産運用事業を始める。